2019年7月19日掲載
複数のクラウドを組み合わせて利用するマルチクラウドが主流になりつつあります。マルチクラウドは従来のクラウドとはどう違うのか、なぜ普及しているのか、そして導入に際してどのような課題があり、どうすれば解決できるのかについて、クラウドについておさらいしながら3回にわたって解説していきます。
YMC電子工業(以下YMC)は、埼玉県にある従業員約280人のEMS(Electronics Manufacturing Service)企業だ。同社の顧問ITコンサルタントである美咲いずみは、毎週月曜日のシステム部の部内会議に同席し、そのあと山田昭CIOとのコンサルティング・セッションの時間を持っている。
今回の山田CIOからの依頼は、YMCのIT基盤を見直したいので、クラウドの最新動向を教えてほしい、具体的には最近よく聞く「マルチクラウド」について詳しく話してほしいいということだった。
「マルチクラウドについて説明する前に、クラウドについてざっくりおさらいさせてもらっていいでしょうか?」といずみ。山田が同意する。
まずクラウドの定義をすると、「インターネットなどのコンピューターネットワークを経由して、ITリソースをサービスの形で利用する形態」となる。要するに、できるだけIT資産を所有せずに、クラウド事業者が提供するものを使わせてもらい、使った分だけ料金を支払うサービスだ。
「クラウド」という言葉が出てきたので、自社所有のITリソースを表す言葉が必要になった。それが「オンプレミス」だ。
クラウドは、ITリソースを他社と共有するかしないかで大きく2つに分かれる。他社とリソースを共有する形態をパブリッククラウド、専有環境を構築する形態をプライベートクラウドという。
また、どのレイヤー(層)までを利用するかによって、IaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service)の3つに分けられる。
IaaSは、サーバー、ストレージ、ネットワークなど基本的にハードウェア(とそれを制御するソフト)だけを利用するもの、PaaSはさらにアプリケーションを開発できる環境までを利用するもの、SaaSはアプリケーションソフトを利用するものである。
「さてマルチクラウドとは、その名のとおり、複数のクラウドを組み合わせて利用する形態を言います」といずみ。
山田がすかさず質問する。
「ハイブリッドクラウドという形態があるでしょう。それとどう違うのかな?」
「いい質問をいただきました。ハイブリッドクラウドは、プライベートクラウドとパブリッククラウドを組み合わせて連携させるものです」
たとえばキャンペーンなどで急に大量のITリソースが必要になる場合に、プライベートクラウドで不足するリソースを一時的にパブリッククラウドで補うことがある。このようにプライベートクラウドとパブリッククラウドを連携して利用する形態をハイブリッドクラウドという。
「マルチクラウドは、複数のクラウドを適材適所で使い分ける利用形態と考えてください」といずみが言う。
ハイブリッドクラウドはパブリックとプライベートの混合(ハイブリッド)という意味、マルチクラウドは複数のクラウドという意味。だからハイブリッドクラウドもマルチクラウドの一種と考えられるが、一般的には複数のパブリッククラウドを含む形態をマルチクラウドと呼ぶことが多い。
まとめ
いずみの目
複数のクラウド事業者と接続するには、ネットワーク環境の設計と運用が重要です。レスポンスが悪ければ、利用者満足度が大きく低下するからです。また当然ですが、セキュリティの確保も重要です。こうした不可欠の対応も含め、マルククラウドに適したネットワーク環境をパッケージ化したサービスも誕生しています。
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