2018年7月12日掲載
「ハイパーコンバージドインフラ(HCI)」という言葉をここ数年、よく耳にするようになりました。HCIとはいったい何なのか、今さら聞けなくなりつつありますが、実際にはまだそれほど普及しておらず、検討中の企業が多いようです。
そこで3回にわたって、仮想化の歴史、HCIとは何か、そしてHCIの用途について解説していきます。今回はHCIの用途および将来性についてです。
ITコンサルタントの美咲いずみは、東京都港区にあるスマイルソフトに定期的に訪問し、社長の神谷隆介のITに関する相談に乗っている。
今回の相談は、スマイルソフトが主力製品をクラウド化するに当たってHCIの導入を検討しているので、それがどういうものか説明してほしいというものだった。
神谷の知識レベルを確認すると、HCIは仮想化のための仕組みということだけは知っているということだったので、いずみはまず仮想化の歴史を説明し、その後CI(コンバージドインフラ)とHCIについて説明したのだった。
「HCIは拡張性が非常に高く、運用管理も楽という話ですが、ソフトウェアで制御しているわけですよね? だとしたら性能面でのネックがあるのでは?」と神谷が疑問を口にした。
「もっともな疑問です。そもそも従来の仮想化インフラでSAN(Storage Area Network)が利用されていたのは、ストレージI/Oの性能を確保したかったからです。HCI自体、多くのハードベンダーがしのぎを削っている世界ですので、ハードもソフトも年々性能向上が進んでいます。
ですがI/Oに関して言えば、できるだけ高スペックのマシンを選択するほうがベターだと考えます。その分、価格は高くなりますが…」
HCIを導入する場合には、費用対効果をしっかり評価することが肝心だと言える。
「HCIの活用事例としては、どのようなものが多いのでしょうか?」
「よく聞くのは、デスクトップ仮想化(VDI=Virtual Desktop Infrastructure)の実現です。HCIの柔軟な拡張性は、この用途にとてもよく向いています」
VDIとは、サーバー上に生成したデスクトップ環境を端末からキーボードやマウスで操作できるようにし、プログラムの実行とデータ処理はサーバー側で行う方式である。
システム運用面では、データがサーバー側にあるためセキュリティーレベルが高く、OSやアプリケーションおよびデータのバックアップも楽になる。
ユーザー側から見ると、端末のハードウェア障害時の影響を受けず、端末の性能に関わらず高い性能を享受でき、また端末や場所に関係なく自分の環境を呼び出せるといったメリットがある。
「ただし、既に仮想化環境を構築している企業が再構築のために、あるいはこれから仮想化環境を構築しようと考えている企業がHCIを検討していることも多いようです」
2017年にIT情報メディア「TechTargetジャパン」と「キーマンズネット」の会員に対して行った調査によると、HCIの導入を検討している企業の用途として、既存環境の再構築が約6割、新規構築が約4割だと言う。
「インフラを選定するに当たっては、将来性がないものを選択するとインフラ更改時に抜本的な再投資が必要になることがあります。HCIの将来性はどうなのでしょうか」と神谷。
「そうですね。さまざまな見方があるので断言はできませんが、HCIには将来性があると思っています。
というのは、仮想化自体が物理的なサーバーをソフトウェアで置き換えたものですし、ネットワークについてもハードウェアで制御していた部分をソフトウェア化する流れがあります。
こういったハードウェアを可能な限りソフトウェアで置き換えていくという流れがあると思うんです。VDIもその1つですね。なぜソフトウェア化するかと言うと、物理的な場所に依存せずに、設定一つで柔軟に構成できるからです。そのためディザスタリカバリ(災害時の事業継続)も簡単にできますし、プライベートクラウドとパブリッククラウドを組み合わせたハイブリッドクラウドの運用も楽になります。HCIはこういったニーズに向くので、今後普及していくと私は考えています」
「なるほど。では、まずは小規模で始めるとして、弊社のインフラ担当者には前向きに導入を検討するように指示しましょう」
と神谷は締めくくった。
まとめ
いずみの目
運用管理の簡易化はもちろん、セキュリティー向上のためにVDIを導入する企業が増えています。VDI導入を考えている企業は、比較的簡単にVDIを構築できるHCIを選択肢の一つに加えてもいいのではないでしょうか。
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