2019年1月21日掲載
ここ数年「RPA」という言葉が急速に普及し、導入事例も飛躍的に増えています。そのため関連情報も急速に増えており、全体像がつかみにくくなりつつあります。そこで、前回から3回にわたって、RPAの全体像を解説しています。
今回は、RPAの適用事例を見ていきます。
ITコンサルタントの美咲いずみは、東京都港区にあるスマイルソフトの顧問コンサルタントとして同社を定期的に訪問している。
スマイルソフトの社長・神谷隆介の今回の相談は、クラウド版KIZUNA(スマイルソフトの主力CRMソフト)の販売が好調だが、そのため運用業務が大変になっていて、抜本的に見直したいということだった。
定型的な業務に時間を取られているということなので、いずみはRPA(Robotic Process Automation)の導入を提案し、RPAとは何かを一通り説明したのだった。
「弊社の運用業務にRPAを導入する検討をさっそく進めていきたいと思います。それと同時に導入サービス事業も検討してみたくなりました。どういう業種で使われているのでしょうか?」と神谷。事業としても関心を持ったようだ。
「はい。すでにあらゆる業種で活用されています」
いずみは、カバンからクリアフォルダーを取り出して、資料を探した。
「こちらの表をご覧ください」
業種 | 適用内容 |
---|---|
金融・信用金庫 | ローン審査時に行われる社内・外の複数の与信管理システムを参照する業務を自動化 |
金融・リース | 官公庁や自治体がWeb上に掲載している入札情報を巡回して、最新情報をチェックし、入札情報をまとめてレポートするシステムを開発 |
製造 | 製品在庫引き当てデータの自動チェックや、生産計画調整後の生産計画システムへの入力データの自動生成を実現し、1日がかりだった作業を数時間に短縮 |
流通・商社 | 営業支援システムを検索して、重要案件のフォロー状況をチェックして、フォローがない場合には営業担当者にメールを送るロボットを構築 |
製造販売・アパレル | 各店舗の棚卸業務の一部を代行し、店長の負荷を大きく軽減 |
旅行 | 競合会社のWebサイトを巡回するロボットを構築し、自社商品の価格設定の判断材料に |
「アイデア次第でさまざまなことができるんですね」と神谷は感心する。
「私見ですが」と断りながら、いずみは持論を披露する。
「最近、攻めのITとか攻めの経営ということがよく言われます。RPAの面白いところは、守りにも攻めにも活用できることではないでしょうか」
そもそもRPAの導入で、定例業務の工数削減と人的ミスの防止が実現できるわけだから、コストダウンという守りにつながるのは言うまでもない。
あるいは、品質管理やプロジェクト管理で、今まで煩雑すぎて人手でしか実施できなかった業務の自動化が可能になれば、品質やプロジェクト成功率の向上につながる。これらも守りのための活用と言える。
そのほかにも、購買システムにRPAでアクセスし、消耗品データの異常値をリストアップして傾向を把握するようにする。それによって異常に備えて多めに発注していたのを適正化できれば、コストダウンという守りにつながる。
一方、定例業務の工数削減ができた分、営業が新規開拓や顧客フォローに注力したり、経理が経営戦略の立案に掛けたりする時間が増えるならば、これは攻めにつながると言っていいだろう。
さらに業種別の事例に出てきたように、競合会社や入札の情報収集などに活用することは、直接攻めにつながる活用だと言える。
「『働き方改革』というと、時短といった『守り』の面が強調されることが多いのですが、時短が実現できても、売り上げが落ちては意味がありません。攻守ともに活用できるRPAは、『働き方改革』の切り札と言えるのではないでしょうか」と神谷が言う。
「さすがです! 私もまったく同意です」といずみは顔を輝かせた。
まとめ
日立システムズは、システムのコンサルティングから構築、導入、運用、そして保守まで、ITライフサイクルの全領域をカバーした真のワンストップサービスを提供します。