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株式会社 日立システムズ

第20回 進化する運用管理ツール(3)~運用管理ツール、仮想化・クラウド対応

2016年2月16日掲載

オープン系システム運用管理ツールのこの4、5年の進化は急速で、現時点で一から学ぼうとすると全体像がつかめずに混乱してしまう怖れがあります。そこで、3回にわたって、運用管理ツールの全体像および最適な選択のポイントを考えています。最終回の今回は、「仮想化・クラウド対応」というキーワードを中心に見ていきましょう。

第20回 進化する運用管理ツール(3)~運用管理ツール、仮想化・クラウド対応

ハイブリッドクラウドの実現には不可欠な機能

埼玉県にある従業員約280人のEMS(Electronics Manufacturing Service)企業、YMC電子工業(仮名、以下YMC)。同社の顧問ITコンサルタントである美咲いずみ(仮名)は、週はじめのシステム部門の定例ミーティングに参加した後、同社の山田昭(仮名)CIO兼システム部長の相談を受けるという形態のコンサルティングをしている。

今回は、定例ミーティングの途中で人為ミスによる重大インシデントが発生した。このところ人為ミスが多いので、これは仕組みやルールに問題があるかもしれないと、運用担当の宮下(仮名)を入れた3人での、ミーティング後のコンサルティング・セッションとなったのである。

ここまでのセッションを簡単に振り返ると、まず1990年代からの運用管理ツールの歴史を大きく10年単位でまとめることで、運用管理ツールの全体像を把握した。その後、2010年代の大きな進化として「運用自動化」がテーマとなった。

「それでは、2010年代のもう1つの大きな進化である『仮想化・クラウド対応』について考えていきたいと思います」

2回目の休憩が終わり、いずみは早速こう切り出した。

「以前ハイブリッドクラウドの話をしましたが、ハイブリッドクラウドを実現しようと思うと、この『仮想化・クラウド対応』の機能なしでは難しいと思います」

ハイブリッドクラウドとは、プライベートクラウドとパブリッククラウドを併用し、その間で自由自在に仮想サーバーを行き来させるというものだ。例えば、プライベートクラウドには平均的なリソース消費に合わせて環境を用意し、ピーク時にはパブリッククラウドで不足リソースを補うというような運用が可能になる(第17回参照)。

「確かに、クラウド間で自由に仮想サーバーを行き来させるなんて、ツールの助けがないと難しいだろうね」と山田が言うと、宮下も大きくうなずいた。

仮想化・クラウド化を進めても運用コストが下がらなかった

「このような機能が実装された背景には、仮想化やクラウド化を推進しても、運用のランニングコストがあまり減らなかったという事情がありました」といずみは続ける。

「そうだね。物理サーバーの台数が減って、資産管理は多少楽になったけれど、仮想サーバーの数は多くて大変だし、物理サーバーが本当に最高の効率で稼働しているかというと、遊んでいるCPUがあったりもする。ピーク時を考えて、多少ゆとりを持たせる必要はあると思うが、たぶん『多少』では済んでいないような気がするね」と山田。過去のリソース使用実績を振り返っての感想だ。

「そもそも、大型汎用機の時代からそうだったと聞いていますが、システムの応答速度の向上と、リソースの利用率(スループット)の向上は相反する課題なんです。これを今まで以上に解消するような機能が実装されるようになり、運用のランニングコスト削減が実現できるようになりました」

「具体的には、どんな機能なんですか?」と宮下。

「例えば、物理サーバーがマルチCPUの場合、1つのCPUに1つの仮想サーバーを割り当てるというのが一番分かりやすいですよね?」

「はい。YMCでもそうしています」

「しかし、ある仮想サーバーがずっと稼働しているかというとそんなことはなく、それだと最高効率ではないわけです。そこで、1つの物理CPUに複数の仮想サーバーを割り当てるというようなことが行われるようになりました」

「そうなると、性能管理やリソース利用率の管理が難しくなりますね」

「はい。なので、その性能管理やリソース管理の機能を強化した運用管理ツールが登場してきたのです」

統計やシミュレーション機能が充実

「もうちょっと具体的に」と山田が要望する。

「はい。例えば、応答時間とスループットに関するレポートを両方作成してくれるような機能があります。管理者はそれを見比べて、トラブルにつながるような性能低下を早期に発見することができます」

「なるほど。ほかには?」

「仮想サーバーごとにリソース利用率のデータを蓄積する機能もあります。蓄積されたデータをグラフ化する機能もあり、そのグラフを見ればリソース利用率が一定以上になりそうなタイミングが分かるので、それに備えて仮想サーバーを別の物理サーバーに移すというような対策をとることができます」

「シミュレーションもできると助かりますが」と宮下が言うと「そういう製品もあります。物理サーバーごとのリソース利用状況を一覧表示して、余裕のあるサーバー検出することを可能にしたうえで、そこに仮想サーバーを移動するとリソース利用状況がどのように変化するかを示してくれます」

「便利になっているんだなあ」と山田は驚いた様子だ。

プライベートクラウドとパブリッククラウドを同じコンソールで

「しかし、それだけではプライベートクラウドとパブリッククラウドの間で仮想サーバーを行き来させるのは難しいですよね?」と宮下が疑問を口にした。

「おっしゃるとおりです。以前はパブリッククラウドの監視は、クラウドベンダーが提供するコンソールを利用して行っていました。しかし、運用管理ツールがパブリッククラウド用のコンソールを提供するようになったおかげで、同じコンソールでパブリッククラウドもプライベートクラウドも見られるようになったのです」

「そうすると運用管理者からは、パブリッククラウドもプライベートクラウドも区別なく管理できるようになるということですね」

「はい。当初は監視だけでしたが、現在では仮想サーバーの作成・削除などの構成変更も同じコンソールで行える製品が出てきています」

「なるほど。そういう製品があれば、ハイブリッドクラウドにも挑戦しようかという気持ちになるね」

ツール検討の手順

「よし。運用管理ツールを見直すことにしよう。宮下君、よろしくお願いします」と山田が役割を振ると、「はい。早速着手します。美咲さん。検討の手順を教えてください」と宮下が言う。

「大前提としては、1つのツールですべてを行おうとしないことです。アプリケーションによっては稼働監視だけで良いというものも多く、それに対して高価な商用ツールを割り当てるのはコストがかさむことになります。ですので、先ほど申し上げたように(前回参照)、アプリケーションのレベル分けを行うことが先決です」

「なるほど。監視だけで良いのであれば、無償ツールでも良いということですね」

「はい。最近のOSS(オープンソース)の無償ツールは機能も完成度もすばらしいのですが、自己責任で使うことが求められるので、ミッションクリティカルなシステムで使用するのはやはりためらわれるところです。OSSに習熟したベンダーにアウトソーシングするのであれば別ですが」

「分かりました。次は何を考えれば良いですか?」

「アプリケーションをレベル分けすると、大多数のアプリケーションに求められる運用管理機能が見えてきます。そのカバー範囲の広い運用管理ツールをメインのツールにすることです。ミッションクリティカルなシステムについては、これは別物と考えるべきですね。またメインのツールでカバーしきれない部分は、ほかのできるだけ単機能な製品で補うようにします」

「あとは?」

「運用管理ツールだけではありませんが、実際に使ってみないと分からないことが多いですよね? 特に操作性はカタログを見ても分かりません。操作性の悪い運用管理ツールは、トラブルの元ですから、できるだけ使いやすいものが良いわけです。なので、実際に試してみることをお薦めします。商用ツールでもトライアル期間があれば必ず活用し、仮になくてもベンダーに依頼して実際に操作させてもらうことです」

「分かりました。何だかやる気が出てきました」

宮下の顔も声もすっかり明るくなり、いずみは心底ホッとしたのだった。

アプリケーションのレベル分けをしないとコスト高に

まとめ

  • 仮想化環境やクラウドの応答速度の向上とリソースの利用率(スループット)の向上は相反する課題だが、その課題を今まで以上に解消する運用管理ツールが出てきている
  • プライベートクラウドとパブリッククラウドの両方を同一のコンソールで監視、操作できる運用管理ツールが出てきている
  • 運用管理ツールを検討する際には、まずアプリケーションのレベル分けをして、多くのアプリケーションが求める機能をカバーする製品をメインツールとする
  • メインツールでカバーできないものは、別のツールや手作業などで補う
  • 運用管理ツールを導入する前には、実際に使ってみることが大切である

いずみの目

グローバル化の進展に伴い中小企業でも海外現地法人や出張所を持つ会社が増えてきました。そのためのICTの運用は、運用管理ツールだけでは解決できないノウハウが必要になるかもしれません。専門家に相談するほうが、結局安上がりで早くできるということも多いようです。

  • * この物語は、筆者の見解をもとに構成されています。
    日立システムズの公式見解を示すものではありません。
  • * 文章中に記載された社名および製品名は各社の商標または登録商標です。

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