2019年9月13日掲載
複数のクラウドを組み合わせて利用するマルチクラウドが主流になりつつあります。
マルチクラウドは従来のクラウドとはどう違うのか、なぜ普及しているのか、そして導入に際してどのような課題があり、どうすれば解決できるのかについて、クラウドについておさらいしながら3回にわたって解説しています。
YMC電子工業(以下YMC)は、埼玉県にある従業員約280人のEMS(Electronics Manufacturing Service)企業だ。顧問ITコンサルタントである美咲いずみは、同社の山田昭CIOからの依頼で、「マルチクラウド」についてレクチャーすることになった。
いずみはクラウドについて簡単におさらいしたあと、マルチクラウドとは「複数のパブリッククラウドを適材適所で使い分ける利用形態」だと説明した。
さらにマルチクラウドが普及しつつあることと、その背景について、クラウドごとに得意分野があること、シャドークラウドを解決するとおのずとマルチクラウドになること、フェイルオーバーや負荷分散など運用上のニーズがあることを挙げた。
「YMCでもマルチクラウド化を基本方針としてITインフラを見直していこうと思うのだけど、その際にはどんな課題があるのだろう?」と山田CIOが尋ねる。
いずみが答える。
「大きく4点ありますね」
いずみが言う4点の課題とは、
1) ITインフラ全体の見直し
2) 運用管理の煩雑化
3) ネットワーク設計・管理
4) セキュリティ対応
である。
1)に関しては、複数のパブリッククラウドと自社のプライベートクラウドやオンプレミスを組み合わせて、適切な費用対効果を探る必要がある。多岐にわたる深い知識とノウハウが必要となるが、それらを持つ人材はなかなかいない。
2)に関しては、さまざまな提供内容、提供形態の組み合わせになるため、当然ながら運用も複雑になる。単体のクラウドサービスを複数利用するのであれば、さほど難しくもないが、フェイルオーバーやワークロード分散などクラウド同士を自動的に連携させるとなると、とたんにハードルが高くなる。
3)に関しては、複数のクラウドを利用することで、それぞれのレスポンスを一定に保つことが難しくなる。また接続回線も増えるので、回線利用料はもちろん管理コストも膨らむ。
4)に関しては、接続先が増える分、セキュリティリスクも高まることになる。またシャドークラウド対策として、社内からどのクラウドが利用されているかをモニタリングできる機能が必要になる。
「どれも重たい課題だね」と山田が溜め息をつく。
「はい。どの課題の解決も結局は、スキルとノウハウのある人材が必要になります」
主に必要となるのは以下のような人材だ。しかもそれぞれが、常に最新の知識とスキルを身に付けておくことが求められる。
「これだけの人材をすべて十分な数だけ揃えるのは、YMCには不可能だね」。山田は頭を抱えた。
「逆に言えば、社内にそのような人材を抱えるのがいいかということです。というのは、クラウド自体が『持たざる経営』のためのツールだったはずだからです」といずみ。
「なるほど。そうなると、社外の人材を活用することになるね。YMC側は社外の人材とコミュニケーションできるだけの知識を身に付け、マルチクラウドを導入する目的や方針を明確にし、要所要所でしっかりした意思決定をすることに集中する。そういうことでいいだろうか」
「はい。ご明察です! 詳細な進め方や体制の作り方は私もご協力して今から作っていくことになりますが、基本的な考え方としてはそれでいいかと思います」
山田の顔が少し明るくなった。
まとめ
いずみの目
マルチクラウドの導入は時代の流れだと言えます。そして、そのメリットを最大限に享受するためには専門家との連携が必要だと考えます。
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