2018年6月18日掲載
「ハイパーコンバージドインフラ(HCI)」という言葉をここ数年、よく耳にするようになりました。HCIとはいったい何なのか、今さら聞けなくなりつつありますが、実際にはまだそれほど普及しておらず、検討中の企業が多いようです。
そこで3回にわたって、仮想化の歴史、HCIとは何か、そしてHCIの用途について解説していきます。今回はHCIに先だって登場したコンバージドインフラ(CI)とHCIについて説明します。
ITコンサルタントの美咲いずみは、東京都港区にあるスマイルソフトに定期的に訪問し、社長の神谷隆介のITに関する相談に乗っている。
今回の相談は、スマイルソフトが主力製品をクラウド化するに当たってHCIの導入を検討しているので、それがどういうものか説明してほしいというものだった。
神谷の知識レベルを確認すると、HCIは仮想化のための仕組みということだけは知っているということだったので、いずみはまず仮想化の歴史について説明したのだった。
「ところで、仮想化が普及したそもそもの理由は何だったのでしょう?」
と神谷が尋ねる。
「私は大きく3つあったと考えています」
1つめは、旧バージョンのOSで稼働していたアプリケーションを稼働させたいというニーズだ。
前回述べたように、当初はWindows 95用に開発したアプリケーションを稼働させたくて、仮想化ソフトを導入した企業が多かったのだった。
2つめは、運用コストの削減だ。
物理サーバーが多くなると、それらすべてのメンテナンスが必要となる。セキュリティーパッチの適合やバックアップをすべての物理サーバーに対して行うことになる。
また大企業であれば、数十台から数百台のサーバーを所有するケースがある。資産管理台帳のメンテナンスだけでも大変だし、保守のコストもかかってくる。
仮想化によって物理サーバーの台数を削減できれば、電気代やスペース代なども含めた運用コストも大きく削減できる。
サーバーの追加も、リソースに余裕があればゲストOSを増やすだけで済む。
3つめはエコロジー対応だ。
物理サーバーの台数を削減できれば、CO2排出量も削減できる。
「さて企業システムで仮想化を実現する場合には、ストレージ群をネットワーク化し、それを複数の物理サーバーで共有するのが一般的でした。現在でもこの方式が主流です。
しかしこの方式は、導入が大変というデメリットがありました」
ストレージのネットワークをSAN(Storage Area Network)という。SANは高性能を実現するために、LANとは別の媒体(ファイバーチャネルなど)で構成されるため、導入や設定が面倒である。また物理サーバーとは別にストレージを購入することになるので、資産管理や運用保守の手間が別途発生することになる。
そこで登場したのが、サーバー、ネットワーク、ストレージ、仮想化関連ソフトウェアを1つの筐体に統合したコンバージドインフラ(Converged Infrastructure、以下CI)だ。日本では「垂直統合システム」とも呼ばれる。
ユーザー企業から見ると、1つの製品としてサポートを受けられ、導入期間も短縮できるというメリットがある。
「なるほど。しかし、これにもデメリットがあるので『ハイパー』が出てきた、ということですよね」と神谷。
「ご明察です。CIの場合、ワークロード(コンピュータにかかる負荷)をある程度見越してから導入する必要がありました。リソースが足りなくなった場合に追加するのが困難だからです。なので、数年先にどのぐらいのリソース使用量が必要かを計算する必要がありました。
そのデメリットを補ったのが、ハイパーコンバージドインフラ(以下、HCI)なんです」
CIは物理的にコンポーネントをまとめているが、HCIはソフトウェアでコンポーネント間の接続を定義している。そのため、リソースを拡大したければ必要に応じてストレージなどを同じ筐体内に追加すればよい。ワークロードの増減に対して柔軟に対応できるのである。
またHCIでは、コンバージドインフラの4つの構成要素以外にもバックアップ、データ重複排除、圧縮などのコンポーネントが含まれていることが多いので、運用管理の労力も削減できる。
従来の仮想化インフラとCIおよびHCI
まとめ
いずみの目
HCIは導入も運用も楽なのですが、技術的なハードルが高いと思っているユーザー企業や、初期導入コストが高いので導入をためらっている企業がまだ多いようです。
もし検討が進まないようであれば、専門家の意見を聞くのがよいでしょう。
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