2018年8月20日掲載
中小企業がIT導入をする際に、少しでも費用を抑えたいと考えるのは当然のことだと思います。導入費用を抑える方法としては、IT導入補助金を交付してもらうのが有力な方法です。しかし補助金についてよく分からないという方も多いのではないでしょうか。
そこで3回にわたって、IT導入補助金を交付してもらうための基礎的な知識について解説します。
今回は補助金と助成金の違いについてです。
ITコンサルタントの美咲いずみは、東京都港区にあるスマイルソフトの顧問コンサルタントとして同社を定期的に訪問している。
ウォーターフロントを一望できる会議室が相談の場だ。
挨拶を済ませたとたん、スマイルソフトの社長・神谷隆介が、
「早速ですが、値引きしないで、実質的に費用を下げる方法はないでしょうか?」
と尋ねてきた。
突然の質問にいずみは目を丸くし、
「もう少し詳しく状況を説明していただけないでしょうか?」
と返事する。
神谷は頭をかきながら、説明を始めた。
「弊社の主力商品のCRMツール『KIZUNA』(仮称)のクラウド版の発売を開始したところ、おかげさまでかなりの引き合いをいただいています。ただ中小企業を中心に、もう少し安くしろというお客さまが多いと営業から報告があったんです…」
設定価格は、神谷に言わせればリーズナブルだ。だが、
「機能やサポート内容を見て『KIZUNA』を気に入ってくださるお客さまが多いのですが、KIZUNAのクラウド参入を快く思わない競合会社が思い切ったキャンペーン価格を打ち出してきたんですよ」
「なるほど。新規参入商品がシェアを獲得する前に潰そうという作戦ですね」といずみ。
神谷は黙ってうなずいた。
いずみが質問する。
「価格競争にはしたくないんですね?」
「はい。競合に体力があるので、おそらくこちらが先に資金不足になるでしょう」
「もしするとしたら、いくらぐらい値引きできればいいのでしょうか?」
「そうですね。ユーザー数にもよりますが、年間利用料で30万円~50万円といったところでしょうか」
「で、あればぴったりの対応策があります。導入企業にIT導入補助金を申請してもらうんです」
「補助金ですか?」
「はい」
神谷は腕組みをして、少しの間考えこんだ。
「ちょっと結びつきが見えてきません。そもそも私はその辺は明るくなくて、実は補助金と助成金の違いも知らないんです」
「神谷社長は、今まで補助金も助成金も申請したことがなかったのですか?」
「はい。何だかそういうものに頼るより、自力でなんとかしたいと考えてきたので…」
いずみは、以前中小企業専門の経営コンサルタント・亀田金太郎の事務所で働いていたので、中小企業の社長と数多く出会ってきた。こういう考えの社長はほかにもいたし、補助金や助成金について知らない社長も多かった。
「社長のお考えは尊重したいと思いますが、補助金や助成金を申請することは何ら恥ずかしいことではありません。むしろ中小企業の経営者には、もっと活用してほしいと私は思っています」
ところで、補助金と助成金の違いは何だろうか?
まず共通点を説明する。どちらも国や公共団体が事業者に対して給付する返済不要のお金である。また、支給されるのは半年から1年先になるのも共通している。なので、これらの支給を期待した資金繰りはするべきではない。
違いは、助成金は一定の条件を満たせば給付されるが、補助金の場合は採択されるので、必ずしも給付されるとは限らないことだ。また助成金の管轄は厚生労働省で、財源は雇用保険料だが、補助金はその都度法律によって決められるところも違う。
なお、「補助金」や「助成金」という言葉はもっと広い意味で使われることがある。ここでは、「企業や個人事業主に対する事業支援のお金として制度的に決められている用語」として説明した。
まとめ
いずみの目
次回以降に詳しく書きますが、IT導入補助金の申請にはITベンダーやメーカーのサポートが必須になります。
今回を読んで急いで利用したいと思った方は、IT導入補助金を前提とした導入提案を行っているITベンダーにすぐにお問い合わせすることをお勧めします。
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