2019年4月15日掲載
「デジタライゼーション」。日本語に訳せば「デジタル化」ですが、IT化とはそもそもデジタル化のことです。それが今になってなぜ強く言われるようになったのでしょうか。また実際にはどのようなもので、どう取り組んだらいいのでしょうか。今回から3回にわたって、これらを解説していきます。1回目の今回は、デジタルトランスフォーメーションとデジタライゼーションの関係を中心に解説します。
YMC電子工業(以下YMC)は、埼玉県にある従業員約280人のEMS(Electronics Manufacturing Service)企業だ。同社の顧問ITコンサルタントである美咲いずみは、毎週月曜日のシステム部の部内会議に同席し、そのあと通常は山田昭CIOとのコンサルティング・セッションの時間を持っている。
今回いずみは、そのセッションの時間に部内勉強会の講師を依頼された。テーマは「デジタライゼーション」だ。
山田CIOが言うには、YMCの今年度からの中期計画の目玉の1つがデジタライゼーションなのだそうだ。もちろん情報システム部門への期待は大きいのだが、スタッフはみな忙しく、デジタライゼーションについての知識や認識が曖昧なのだという。
「おはようございます。今日は山田CIOからのご依頼で、『デジタライゼーションとは?』というテーマで勉強会の講師を務めさせていただきます。講師と言いましても、私が一方的にお話ししても退屈でしょうから、みなさんと議論しながら考えていきましょう」といずみ。
「ところで、デジタライゼーションは日本語にすれば『デジタル化』ということになりますが、そもそも情報システムって、デジタルデータを扱うものですよね? なぜ今頃になって『デジタル化』なんでしょうか? 真鍋課長、いかがですか?」
「いや。実は私も、なぜいまさら『デジタル』なんてことを言い出すのか、ちょっと疑問だったんです」と、真鍋課長が首をかしげる。
そこに木村美佐子主任が手を挙げる。「それは、デジタルトランスフォーメーションと関係があるんじゃないかしら?」
デジタルトランスフォーメーション(以下DX)とは、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したと言われている、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面で良い方向に変化させる」という概念だ。「デジタル変革」ともいう。
企業活動として捉えると、「ITをフル活用して、ビジネスモデルやビジネスプロセスを変革すること」を意味する。
「ITをフル活用するためには、今までアナログ、例えば紙や手作業で済ませていた業務もできるだけデジタル化しないといけない。なので、デジタライゼーションが強調されるんだと思うの」と木村。
いずみが答える。「木村さんのおっしゃるとおりで、DXとデジタライゼーションは密接な関係があります。本来DXが目標・目的であり、デジタライゼーションが手段ということですね。ただ実際には厳密に区別されておらず、両方を包括した意味合いで、DXという人もいればデジタライゼーションという人もいるのが実際のところです」
「でも、そもそもIT化自体がデジタル化で、20世紀の中頃からずっと続いてきたことでしょう?なぜ今になってという疑問は残ります」と運用担当の宮下が改めて尋ねる。
一番の若手である樋口優子がそれに答える。「モバイルの浸透で、改めてデジタライゼーションということが強く言われるようになったのではないでしょうか。スマホって基本的にはデジタルデータをやり取りするものですよね?私たちがデジタルデータのやり取りに慣れたことで、新しいビジネスが生まれてきた。それが、デジタライゼーションがブームになった理由なのでは?」
「私も同意見です」といずみ。
「なぜなら、スマホとインターネットを前提としたビジネスで、既存のビジネスを『破壊』したデジタルディスラプターと呼ばれる新興企業が登場してから、デジタライゼーションという言葉が強く言われはじめたからです」
ただし……、といずみが補足する。
「実は、以前からIT化によって進められてきた『デジタル化』は『デジタイゼーション(Digitization)』と呼ばれるもので、デジタライゼーションはビジネス変革に関係する『デジタル化』を指します。日本語ではどちらも『デジタル化』なので、混同されやすいのです」
勉強会は、始まったばかりだ。
まとめ
いずみの目
デジタライゼーションにより「デジタル変革(DX)」を目ざすというと、なにやら冷たい感じを受けるかもしれません。しかし、元々DXとは「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面で良い方向に変化させる」という概念ですから、人が幸せにならなければ達成されたことになりません。そのためには、お客さまももちろん、現場で働く人たちの喜びも大切ではないでしょうか。
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