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株式会社 日立システムズ

第69回 「ニューノーマル」を見据えたBCPにおける課題と解決策(1)~BCPの概念が変わった?

2021年2月15日掲載

コロナショックにより、BCP(事業継続計画)を見直す企業が増えています。過去にもリーマンショックや東日本大震災のあとにBCPを策定する企業が一気に増えたことがありましたが、今回のBCPは以前のケースとは大きな違いがあるようです。いったいどういう違いがあるのか、何に留意して計画を見直せばいいのか…、3回にわたって解説していきます。

第69回 「ニューノーマル」を見据えたBCPにおける課題と解決策(1)~BCPの概念が変わった?

BCPを見直したい

YMC電子工業(以下YMC)は、埼玉県にある従業員約280人のEMS(Electronics Manufacturing Service)企業だ。同社の顧問ITコンサルタントである美咲いずみは、毎週月曜日のシステム部の部内会議に同席し、そのあと山田昭CIOとのコンサルティング・セッションの時間を持っている。

新型コロナウイルス感染症の流行で、YMCのシステム部もテレワーク環境の整備などで大忙しだった。システム関連については一旦落ち着きを取り戻した今、山田CIOはBCPの見直しに着手したいと言う。

「BCPへの取り組み」小史

BCPとは、Business Continuity Planの頭文字を取った言葉で、日本語に訳すと「事業継続計画」となる。BCPという概念は古くからあり、元々は2000年問題(※)で社会インフラが停止した際の対応計画だったという。

※西暦を4桁ではなく2桁(例:1987年→87年)で取り扱うプログラムが、昔はかなりあった。そのようなプログラムの影響で、2000年1月1日以降に日時の大小比較がおかしくなることでシステムに障害が発生し、特に社会インフラが停止することが懸念され、これを「2000年問題」と言う。出典:Wikipediaより抜粋

日本では2006年に、中小企業庁が『中小企業BCP策定運用指針』の初版を公開している。その後、この指針に基づいてBCPを策定した企業の一覧から毎年の策定企業数の推移をプロットしたのが下のグラフである。


中小企業庁の「中小企業BCP策定運用指針」に基づいて、BCPを策定した企業の数
(https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/contents/bcpgl_case.htmlに基づいて、2020年12月22日に作成)

データ数が少ないので断定できないが、リーマンショック、東日本大震災、コロナショックなど、大きな経済後退や災害・災厄があるとBCP策定の関心が高まる傾向にある(東日本大震災に関しては計画策定までにタイムラグがあるが、これをきっかけにBCPブームが起こったのは記憶に新しい)。

ただ今回のコロナショックによるBCP策定ブームは、これまでとはどうも様相が異なるようだ。

事業継続を脅かす数々のリスク

事業継続を脅かすリスクは数多くある。日本の場合は、今後発生が予想されている南海トラフ地震や首都直下地震などの大地震や、毎年来る台風が挙げられる。また地球温暖化による気象災害の激烈化に伴い、大雨による河川氾濫がいつ起こってもおかしくない状況になっている。

こうした自然災害の他に、人為災害も大いに懸念される。例えば、情報システムへのサイバー攻撃は大きなリスクだ。また日本国内ではそれほど恐れなくてもいいかもしれないが、海外拠点においてはテロも大きなリスクだ。

だが、今回のコロナショック、すなわち新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは、これらのリスクとは影響の面で大きな違いがある。

実際に起きて分かったパンデミックと他のリスクとの違い

山田CIOから「BCPを見直したいのだが…」と打診されたいずみは、「最初にお伺いしていいですか?」と聞き返す。

「山田さんのご担当は情報システム稼働に関する範囲なのでしょうか、それとも文字通り『事業』の継続なのでしょうか」

「私はCIOだから、これまでだったら『情報システム』と即答できたのだが、今回はどう言ったらいいか難しくて、それも含めての相談なんだ」

山田CIOが言うには、従来なら例えば、災害時の連絡体制やバックアップシステムへの切り替え方法、データセンターの設備の確認方法などを取り決めれば良いだけだった。これは大地震でも台風でもサイバー攻撃でも、災害が発生するエリアが限定的で発生期間も短期だったからだ。

ところが、今回のコロナショックはこれらとはまったく違う。世界同時発生であり、既に1年近い期間が経過しているのに終わりが見えない。さまざまな影響を考慮に入れると、最低でも数年は余波が続くと考えられる。その結果、人々の生活様式や仕事のスタイルまでまったく変わってしまったし、元に戻らない部分も多いと考えられる。

これは消費の仕方も大きく変わるということであり、流通業を見ているとコロナショックによる変化に対応できているかどうかで、既に勝ち組と負け組が分かれている。YMCのようなBtoBの製造業でも最終ユーザーは一般消費者なので、やはり大きな影響を受けることになる。

つまり、これまでのBCPは大きな災害に直面したとき、業務を継続する計画を策定するものだったのである。「事業継続計画」と言いながら、実際には「業務継続計画」だったのだ。

ところが今回のコロナショックにおいては、本当の意味で「事業」の継続について考えなければならなくなった。これは世界規模の災厄が実際に起こって、初めて多くの人が気づいたと言えるだろう。

まとめ

  • BCPの概念自体は古くからあるが、日本ではリーマンショック、東日本大震災、そして今回のコロナショックなど大きな経済後退や災害・災厄があると、策定する企業が増える傾向にある
  • 事業継続を脅かすリスクはさまざまあるが、今回のコロナショックのような世界同時発生で長期にわたる災厄とその他のリスクでは様相が異なる
  • 従来のBCPの実態は「業務継続計画」だったが、コロナショックによって本当の意味での「事業継続計画」の策定が求められている

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  • * この物語は、筆者の見解をもとに構成されています。
    日立システムズの公式見解を示すものではありません。
  • * 文章中に記載された社名および製品名は各社の商標または登録商標です。

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