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株式会社 日立システムズ

第30回 ビジネスを拓くロボティクス(1)~パーソナルロボット

2017年1月16日掲載

従来のロボット工学より広い概念である「ロボティクス」という言葉が注目を集めています。ここ数年で急激に製品やサービスが充実したため、全体像が見えにくくなっている方も多いのではないでしょうか。そこで今回から3回にわたって、ロボティクスの有望な3分野について解説しながら、全体像を描いていきます。

第30回 ビジネスを拓くロボティクス(1)~パーソナルロボット

「ロボティクス」について知りたいとの要望

ITコンサルタントの美咲いずみ(仮名)は、東京都港区にあるスマイルソフト(仮名)の神谷隆介(仮名)社長から、月1回の頻度で、経営のためのIT活用の相談を受けている。スマイルソフトは、中堅企業向けのCRM(顧客管理システム)パッケージソフトKIZUNA(仮称)の開発・販売で急成長した、IPO(Initial Public Offering) 準備中の新進企業だ。

相談したいテーマは神谷社長から事前に送ることになっている。今回は「ロボティクスとビジネスへの応用」という少し抽象的なものだった。ロボティクスとは、従来のロボット製造に重点を置いたロボット工学だけにとらわれず、産業以外への応用面などを含めたロボット全般に関する科学研究を総称したものである。背景にはロボットの応用範囲が急激に広がってきたことがある。

現在有望な3分野

スマイルソフトの明るい清潔なオフィス。フリーアドレスの思い思いの場所で働く社員たちからよく見えるガラス張りの打ち合わせコーナーで、いずみは神谷社長と向き合っている。
「ロボティクスがテーマとは、新しいビジネスを考えておられるのですか?」といずみが切り出す。
「いや、まだそこまでは。先日今乗っているクルマの査定をしてもらおうと中古車販売店に行ったときに、Pepper (ソフトバンクのPepper for Biz (法人向けモデル) 以下Pepper)が接客してくれたんですよね」

「あのヒューマノイド(人型ロボット)の?」

「そう。名前やアンケート項目などを聞いてくれて、その後スタッフが対応してくれるという流れなんだけど、スタッフの手が空くまで待たされなかったことと、Pepperの応対自体がなかなか楽しくてね。それまでロボットにはあまり興味がなかったのだけど、急にいろいろ知りたくなって、それで美咲さんに詳しく話を聞こうと思ったんです」

「御社のビジネスにどう活用できるかが知りたいのでしょうか?」

「正直、当社のようなソフトハウスにロボティクスが関係するのかどうかもよく分からないんです。ただそんなに遠くない将来に関係してくるのではないかという直感もあるんですね。だから、今のうちに基本的なことを勉強しておきたいなと思ったんですよ」

「なるほど。私もロボティクスにそれほど詳しいわけではないのですが、現在有望な分野が3つあると、いろいろな方からうかがっています。その程度でよろしければ」

「ちなみに、その3分野とは何ですか?」

「いま話に出てきたPepperのようなパーソナルロボット(コミュニケーション型ロボットとも言う)、ドローン、それとパワーアシストスーツ(装着型ロボットとも言う)です」
「どれも興味があります。順番に教えてください」

パーソナルロボットの登場

「では、パーソナルロボットのお話をしたいと思います。その前に、産業用ロボットはご存知ですよね?」

「ええ。当社のクライアントには製造業も多数おられますので、実際に工場見学をさせていただいたことが何度もあり、産業用ロボットの実物を拝見しています。KIZUNA にはオプションで製造計画との連動機能があるのですが、こういう機能も実際に工場で何が行われているかを知らないと、使い勝手の悪いものになってしまいますから」

「従来の産業用ロボットは、溶接・ピッキング・組み立てなど、定型的な作業を人間よりも早く正確に行うものでした」

「それが変わってきているのですね?」

「はい。内閣総理大臣が主宰し、経済産業省が庶務を担当した『ロボット革命実現会議』という会議がありました。2014年から15年にかけて6回にわたって開催されたものです。この会議の成果物が『ロボット新戦略』です。その中に『ロボットの変化』がまとめてありますので、それをさらに要約してみます」

いずみの「要約」を箇条書きすると以下のようになる。

1. 自律化:単なる作業ロボットから自ら学習し行動するロボットへ

  • センサー技術や情報処理能力の向上など従来技術の進展
  • 人工知能技術(画像・音声認識、機械学習)の飛躍的な発展

2. 情報端末化:さまざまなデータを自ら蓄積・活用することにより付加価値の源泉に

  • パソコンや携帯電話に代わるものとして
  • 日常生活の隅々にまで普及する可能性
    ・日常のコミュニケーションなどにも拡大
    ・家事などの生活支援や安全・安心の提供などにも貢献

3. ネットワーク化:単体として個別に機能するものから相互に連携するものへ

  • ロボットがさまざまなシステムの一部として機能
  • IoT(Internet of Things)社会の到来に伴い増加する重要性

「これら3つの要件を満たすロボットとして注目されているのがパーソナルロボットです。2014年に発売されたPepperを皮切りに、2016年にはさまざまな製品が出揃いました。この状況を見て2016年を『パーソナルロボット元年』という人もいるぐらいです」

さらに、経済産業省産業機械課が2013年7月に発表した「2012年 ロボット産業の市場動向 」によれば、主にパーソナルロボットが担う「サービス分野」の市場規模は2015年には3,733億円に上り、それが5年後の2020年には2.7倍の1兆241億円、2035年には2015年の13.3倍に当たる4兆9,568億円になるもと予想されている。

「すごいですね。要するに長期的に見ても超有望分野ということですね」と神谷社長が少し驚きの交じった声で言う。

どのようなパーソナルロボットがあるのか?

「今世の中に製品として出回っている主なパーソナルロボットを教えてください」と神谷社長が尋ねる。

「まずはPepperですね。これはよくご存知ですよね? ほかには……」

いずみによれば、Pepper以外では以下の製品が有名だという。

  • Palmi 富士ソフト 自律型、成長型のコミュニケーションロボット
  • Robi デアゴスティーニ・ジャパン 歌って踊る、一緒に遊べるロボット
  • RoBoHoN シャープ モバイル型のロボット電話
  • PLEN.D プレンプロジェクト 組み立てながらロボットの仕組みが学べるスマホで操作できるロボット
  • Tapia MJI 感情表現が得意な生活サポートロボット
  • EMIEW3 日立製作所 車輪の採用により人と同じ速さで歩ける、接客が得意なロボット

このうちEMIEW3は、空港などの公共スペースや商業施設などにおいてサポートが必要な顧客のもとに自ら移動し、接客や案内を行うことを目的に開発されたという。そのようなサービスを実現するために、2016年9月から12月にかけて羽田空港国内線第2旅客ターミナルで実証実験 を行った。

Pepperの活用事例

「ビジネスでの活用事例にはどのようなものがあるのですか?」と神谷社長が尋ねた。

「これらの中でビジネスへの活用事例が多いのは、すでに1,700社を超える企業が導入しているPepperです。その活用事例を業界別にいくつか紹介しましょう」

以下に、いずみの挙げた事例を箇条書きでまとめる。

  • 小売業:ロフト
    ビューティーアドバイザーとして、スタッフの代わりに接客対応し業務を効率化
  • 医療・介護:エフアンドエフ
    調剤薬局の一部店舗にPepperを設置したところ、来客数が昨年比で20%増加
  • メーカー:ネスレ日本
    コーヒーマシンの販売促進にPepperを活用、売り上げが15%アップ
  • 金融:みずほ
    顧客に適した金融商品をPepperが案内、窓口誘致や成約に貢献、体感待ち時間も削減
  • サービス:オークランド観光開発
    Pepper設置で顧客動線を変更、食事スペース利用者数が全店平均の107%に向上
  • 不動産:リクルートテクノロジー
    スーモカウンターにPepperを設置したところ、店頭で足を止める人が数倍に増加、取得したログデータを店舗施策に活用
  • 運輸:京浜急行電鉄
    店頭への呼び込み業務に活用、1日5組の新規顧客獲得に貢献
  • 飲食:はなと
    Pepper設置で、集客数・売り上げともに昨年比110%以上増加、Pepperが取得したデータを経営の見える化に活用

パーソナルロボットの活用に必要なこと

「さまざまな事例があるんですね。これらはPepperを設置したら、あとはPepperが勝手に学習してやってくれるんでしょうか?」

「さすがにそう簡単にはいきません。サービス内容に特化したアプリケーションソフトの開発・導入が必要なのです」

「ほう。そうなると『システム導入』とほぼ同じプロセスが必要ということですね?」

「ご明察です。まず業務シナリオやコンテンツなどを考える企画のフェーズ、ここでは専門のコンサルタントを入れるのがお勧めです。以下、ロボットの選定や調達のフェーズ、アプリケーション開発のフェーズ、導入・設置・操作教育のフェーズ、運用のフェーズと続きます。運用時には故障や問い合わせに対応するヘルプデスクやサポートセンターも必要となります」

「まさに『システム導入』ですね。これらをワンストップでやってくれる会社があると便利ですね」

「はい。既に大手システムインテグレーターがコンサル・開発・運用のワンストップサービスを開始しています」

「なるほど。当社のようなIT企業だと、アプリケーション開発やサポートサービスで関わることがあり得るということですね。いずれにせよ、自社で使ってみてからかな」

神谷社長の頭の中では、早くも次のビジネスプランが湧きだし始めているようだ。

まとめ

  • 将来有望なロボットの分野としては、パーソナルロボット(コミュニケーション型ロボット)、ドローン、およびパワーアシストスーツ(装着型ロボット)の3つ
  • ロボット革命実現会議がまとめた「ロボット新戦略」によれば、ロボットの新しい潮流には自律化、情報端末化、およびネットワーク化の3つがある
  • ロボットのサービス分野の市場規模は、2035年に2015年の13.3倍になると予想されており、この分野は長いスパンで見ても有望と考えられている
  • 2016年時点で著名なパーソナルロボットには、Pepper、 Palmi、Robi、RoBoHoN、 PLEN.D、Tapia、EMIEW3などがある
  • Pepperは2016年時点で1,700社を超える導入事例があり、業種も小売業、医療・介護、製造、金融、サービス、不動産、運輸、飲食など多岐にわたる
  • パーソナルロボットの導入には、企画、選定・調達、アプリケーション開発、導入・設置・操作教育、運用といった従来のシステム導入と同様のプロセスが必要になる

いずみの目

パーソナルロボットの分野はとても身近で面白く、他にも紹介したいことがたくさんあるのですが、全体像をお話しすることに注力しました。なお今後のロボットの進化や市場動向などを詳しく知りたい方には、「ロボット新戦略の取組状況について※ 」や「2012年 ロボット産業の市場動向 」を一読することをお勧めします。

※執筆当初は「ロボット新戦略」へリンクしていましたが、2019年1月誘導先を変更。

  • * この物語は、筆者の見解をもとに構成されています。
    日立システムズの公式見解を示すものではありません。
  • * 文章中に記載された社名および製品名は各社の商標または登録商標です。

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