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株式会社 日立システムズ

第9回 基幹系システムの海外展開(1)~システム部門の課題

2015年1月20日掲載

大手製造業のグローバル展開は、円安になった2014年になっても留まる様子はありません。大手の進出に合わせて海外展開する中小製造業もかなり増えました。しかし、海外展開はスピードが命なので準備期間が短い、また少ない日本人スタッフで多くの現地スタッフと仕事をするということになります。このように大きな課題がいくつもある海外展開において、システム部門が知っておくべきポイントとは何でしょうか?

* 本文中の登場人物・企業名はすべて架空のものです。

第9回 基幹系システムの海外展開(1)~システム部門の課題

準備期間は6カ月

「美咲さん。実は大変なことになっていてね」

YMC電子工業(仮名、以下YMC)の山田昭(仮名)CIOは、システム部の部内会議の後、コンサルティング・セッションの冒頭で顧問ITコンサルタントである美咲いずみに、こう切り出した。

YMCは、埼玉県にある従業員約280人のEMS(Electronics Manufacturing Service)企業である。同社のシステム部は、パートナー企業の社員も含めて4名体制。企業規模からすれば妥当な人数かもしれないが、大所帯とはいえず、みな忙しく働いていて、仕事を増やす余裕はない。

いずみが続きを促すと、「部員たちには方針を決めてから伝えるつもりでいるのだが……」と前置きして、山田は事情を話し始めた。

「今度タイに大きな工場を作ることになったのだが、それが急なことで6カ月しか準備期間がないんだ。もちろん、基幹系のITシステムも、それまでに準備しておかないといけない」

山田の話によれば、以前から得意先のヤマソー自工グループ(仮名)からタイでの部品調達の短期化を迫られていたらしい。そこへさらに、別の得意先である安達電気グループ(仮名)もタイに大工場を建設することが決まった。そこで、YMCもタイミングを合わせてタイに工場を作ることに決めたのだという。

システム部門の検討ポイントは3点

「なるほど。大変ですが、無理ではありません」といずみは答える。

「私もそう思う。他社もそのぐらいのスピード感で動いているからね。ただ、海外展開は初めての経験だから、勘所が掴めないでいるんだ」と山田CIO。

「実は私も海外展開に伴うITシステムの構築に関しては経験がないのですが、システム部門が検討する勘所、ポイントとしては大きく3つあると思います」

いずみは、ホワイトボードに大きな文字で3つのポイントを書き上げた。

  1. 体制
  2. IT
  3. 社会インフラ

「ふむ。それぞれ詳しく説明してくれますか?」

いずみは大きく頷くと、少しぬるくなったコーヒーで喉を湿らせた。

1.体制の問題

「まず体制の問題ですが、かなりの大企業でも現地の日本人スタッフは少人数で、ほとんどは現地採用します。御社も例外ではないはずです」

「うん。せいぜい3、4名の日本人スタッフで、80人ぐらいの現地スタッフを採用する予定になっている」

「ですから、ITシステムは現地語あるいは英語対応になります。これが1つ」

「うん、当然だね。それから?」

「本社でも山田さんを含めて5名の体制でシステムの面倒を見ていますから、現地にシステム部門を置くことはできないのでは? 実現できて、日本人スタッフのどなたかにシスアドをお願いするくらいでしょうか」

シスアドとはシステムアドミニストレーターの略で、PCやOA機器、さらに表計算ソフトなど基本的なアプリケーションに詳しく、PCのインストールやネットワーク周辺を含めた設定作業、さらにアプリケーションソフトの使い方を初心者に指導できるレベルの能力を持つ人をいう。ユーザー部門とシステム部門のインターフェースとなる人材である。

「まさに、その通りなんだ。でも、ここまでは大前提だろうな。海外に展開するからといって、潤沢な体制を準備できるわけではないから」

2.ITの問題

「続けて、情報システムだけでなくネットワークも含めたITの問題です」

「我々が一番、頭を悩ますところだね」

「はい。御社も6カ月の準備期間ということでしたが、海外展開はスピードが命なので、一般的にいってもシステム構築に時間をかけられません」

「うん」

山田の眉間に深いしわが刻まれた。

「そのうえ、基幹系システムですとその短期間で、通貨・税制・商習慣などの違いに対応しないといけません」

「その通り。頭の痛いところだよ」

「さらに、現地にシステム部門が置けないとなると、システム運用ではリモート監視が必要になります。また通常業務でも、当然ながら本社との間でメールのやりとりやグループウェアの利用などもあるでしょう。速くて安いネットワークが必要となります」

「そうだね。ネットワークの問題も大きいね」

3.社会インフラの問題

「もう1つ。これは忘れがちなのですが、社会インフラの問題があります。海外にも日本と変わらない社会インフラが存在すると思っていて、現地に行ってびっくりしたという話をよく聞きます」

「たとえば?」

「タイですと、まず電源は日本と同等の安定供給はありません。空調の二重化のようなITセンターに必須の設備もあまり期待できません。電気だけでなく、上下水道なども同じです。こういった点を前提に考えないといけないのです

「そうか。確かに現段階ではそこまで考えていなかったよ」

検討テーマは多岐に渡る

 いずみは一息ついてから、さらに続けた。

「いま挙げたのは大きな課題ですが、検討するべきテーマは多岐に渡ります」

「どんなテーマがあるのかな?」

「そうですね。何らかの形でITが関係しそうなものだけですが、今挙げた以外にもマーケティング、現地拠点設立、税務、人材雇用、貿易業務、テレビ会議、セキュリティ、ヘルプデスク、eラーニング、CMS(Webコンテンツ管理)などが考えられますね」

「全てを6カ月で準備というわけにはいかないかもしれないが、課題を全部洗い出し優先順位をつけて、導入のためのロードマップを作らないといけないね」

「その通りです」

「大変なことになってきたな。システム部門のメンバーも手一杯だし、人を雇う余裕もないし」

「そうですね。コンサルティングができる会社に相談して、一時的にスタッフを出してもらうのもいいかもしれません」

「どんなコンサルティング会社がいいのかね?」

「コンサルティング会社でもシステムインテグレーターでも構いませんが、まずは言うまでもなくITに強いこと。それから複数のベンダーを選定する時間的余裕がありませんので、ワンストップで引き受けてくれる会社。さらに今後も海外展開は続くでしょうから、ノウハウを開示・提供してくれる会社。だいたい、こんなところでしょうか」

「そうか。早速検討してみよう」

「ですが、その前にITに関する大きな方針を決める必要があります。コンサルティング会社の選定は、その後がいいと思います」

「その話は長くなりそうかい?」

「そうですね。今までお話した時間くらいは…」

「わかった。ちょっと休憩しよう。その後に続きをお願いします」

まとめ

  • 海外展開でシステム部門が押さえておくべきポイントは、大きく体制・IT・社会インフラの3点
  • その他にも検討テーマはたくさんあるため、ITに強く、ワンストップで対応でき、ノウハウも提供してくれるコンサルティング会社のサポートを受けることも検討するべき

いずみの目

経験の有無に関わらず、海外展開は準備期間が短いのが通例です。そのため、しっかりした会社のコンサルティングを受けるほうが「失敗がない」という意味で、結果的にコストの節約になるのではないでしょうか。

  • * この物語は、筆者の見解をもとに構成されています。
    日立システムズの公式見解を示すものではありません。

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ITコンサルタント美咲いずみが行く

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