2019年5月20日掲載
「デジタライゼーション」。日本語に訳せば「デジタル化」ですが、IT化とはそもそもデジタル化のことです。それが今になってなぜ強く言われるようになったのでしょうか。また実際にはどのようなもので、どう取り組んだらいいのでしょうか。前回から3回にわたって、これらを解説しています。2回目の今回は、デジタルディスラプターというデジタライゼーションで既存のビジネスを「破壊」したと称される企業を紹介し、デジタライゼーションの持つ力についてお話しします。
YMC電子工業(以下YMC)は、埼玉県にある従業員約280人のEMS(Electronics Manufacturing Service)企業だ。同社の顧問ITコンサルタントである美咲いずみは、毎週月曜日のシステム部の部内会議に同席し、そのあと通常は山田昭CIOとのコンサルティング・セッションの時間を持っている。
今回いずみは、そのセッションの時間に部内勉強会の講師を依頼された。テーマは「デジタライゼーション」だ。講師といっても司会役に近く、勉強会は意見を出し合う形で進められている。
「なぜいまさら『デジタル化』なのか」という問いかけから始まり、デジタルトランスフォーメーション(DX)とデジタライゼーションの関係や、モバイルの浸透とそれに伴う「デジタルディスラプター」と呼ばれる新興企業の登場で強く言われるようになったことが参加者の共通理解になった。
「デジタルディスラプターとは、Uber、Airbnb、WeWorkなどのことですね?」と、大手システムインテグレーター伊逹システムズの社員でYMCに常駐している高橋正弘が知識を披露する。
Uberは配車サービス、Airbnbは民泊サービス、WeWorkはオフィススペース・リースサービスで有名な企業だ。アナログ色が強かったビジネスを徹底的にデジタライゼーションして成功したことで共通している。業務は基本的に自動化されており、利用者も提供者もアプリに登録するだけで参加できる。不要な仲介業者がいないため、既存の事業者よりはるかに低価格でサービスを提供できる。
つまり便利で早くて安いので、あっという間に高いシェアを獲得し、既存業者は存在を脅かされることになった。そのため、デジタルディスラプター(破壊者)と呼ばれているのだ。
Uberの仕組みを簡単に説明しよう。
配車サービスとは、自動車を利用したい者が自分がいる場所と行きたい場所を入力すると、近くにいて、行きたい場所まで乗せていってくれる提供者(ドライバー)が表示され、その中から提供者を選択することができるサービスだ。
アメリカでは、一般の人が乗車サービスを提供できるので爆発的に普及した。日本ではこれは法律違反になるため、ハイヤーの配車サービスなど限定的なサービスに留まり、コストメリットがない。そのためあまり普及していない。
利用者も提供者も、自分の情報をスマホアプリで登録するだけでUberのサービスを利用できる。内部的にUberがやっていることは、自動マッチングと決済サービスだが、これによってさまざまな課題が解決され、利用者も提供者も多くの便益を享受することができるのである。
いずみは、どんな便益があるのか箇条書きにした。
「このようにたくさんの便益があるので、Uberは一気に普及し、シェアを獲得しました。日本では法律で守られていますが、多くの国のタクシー会社は壊滅的な打撃を受けたのです」
「しかしUberやAirbnbなどを見ていると、かなり高度なITが使われているように思います。私たちのようなCIOと他社の常駐の方を含めて7名しかいないシステム部でも、デジタライゼーションに取り組めるのでしょうか?」と真鍋課長が不安そうに尋ねる。
「いい質問ですね。それは十分可能です。引き続き、そのことを議論していきましょう」といずみは答えた。
まとめ
いずみの目
実際に現場で行われているデジタライゼーションの事例を見ると、デジタライゼーションへの理解が深まると思います。そこで製造業の事例を1つ紹介します。
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