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株式会社 日立システムズ

BizQpid 2nd season(ビジネス・キューピッド)

ビジネス・キューピッド、第3幕は「古巣の新規事業を立ち上げよ!」

株式会社ビジネス・キューピッドの代表取締役、日比野京一は知る人ぞ知る敏腕コンサルタント。さまざまなビジネスのマッチングやクラウドファンディングによる資金調達などを成功させてきた日比野に白羽の矢を立てたのは、かつての職場のライバル、安田だった。新規事業の開拓に立ちはだかるのは市場か、ライバル企業か、あるいは自社の社内政治なのか?日比野は安田とともにチームを率い、強力にプロジェクトを推し進めていく…。

* この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは関係ありません(一部引用を除く)

第24回 新メンバー登場。そして急展開が。

あくる週、新規事業開発室に新たなメンバーがあいさつにやってきた。 「水野美咲と申します。よろしくお願いします」 おとなしそうな顔立ちだが、はきはきとしゃべって感じの良い女性だとあすなは思った。 「水野さんはまだ若い。入社して経理に配属されてまだ3年目だが、新規事業は若い社員が担い手になってほしいという思いであえて抜擢させてもらった。正式な配属は来月になると思うが、みんな仲良くやってくれ」 安田が推薦の経緯を伝えると、あすなが思わず、 「へぇ~、3年目なんですか?その若さでこの部署に来られるなんて、すごいですね!」 と口走る。 「おいおい、それをお前が言うのおかしいだろ…」 いつも通り、新規事業開発室は和気藹々としている。

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第23回 やり遂げた後にやってくるもの

「どうぞ日比野さん、ぜひお話しください」 東野が快く発言を許してくれたのを聞き届けて、日比野は続けた。 「専務がおっしゃったとおり、この案はまだ対象国のリストアップもできていませんし、その結果どのような売り上げが上がるのかも現時点では想像がついていないのが正直なところです。しかし、富永さんがプレゼンした通り、H社として既に持っている都市開発を、動く住宅というわかりやすい特徴とともに海外に持ち込むというのは、荒唐無稽なようでいて、実はかなり地に足がついていると思います」 日比野が諭すように整理をすると、大村専務はいったん頷いた。

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第22回 割れる見解、そして

富永のプレゼンはいよいよ佳境へと入った。 「当社グループがとるべき新規事業の柱を、私たちはモビリティ事業と名付けました。動かざると書く『不動産』を扱うわが社グループにとって、これは言うまでもなく全く新しい事業領域になります」 富永は、いつの間にか自分の緊張がほぐれていき、代わりにプレゼンへの熱がこもっていく自分に気づいていた。32歳の富永にとって、このプレゼンの場はまたとない成長の機会になっている。

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第21回 いよいよ社長向けプレゼン

合宿が終わり、あっという間に社長向けのプレゼンテーションの日がやってきた。 「はぁ…憂鬱だ」 富永は朝食のトーストをかじって、何度目かの深いため息をついた。 「もうやめてよ、そんなにため息ばっかり…こっちまで暗くなっちゃう」 妻がそういうのも無理はないが、しかし自分の置かれた境遇はあまりにも酷なのではないかという気がしてくる。 「俺は、プレゼンが苦手なんだよ…なんでそんな俺が、失敗したら会社が傾くかもしれないような重要なプレゼンを任されないといけないんだ…」 社内では気を張っていても、家にいるとつい本音が漏れる。 「そうね、あなたプロポーズの時だって『僕と結婚してください』の間に3回噛んでたもんね…あっはっは」

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第20回 過ちとの決別

安田が心配そうな表情を浮かべ、社長室を去った。 もともと、社外の人間である日比野がこのプロジェクトに参画することも、ましてや今日のように社長室に通されることも、かつてのH社の風土から考えれば異例のことだった。それどころか、今、日比野はH社の社長である東野と、間に誰も挟まず直に対面しているのである。 安田はもちろん、日比野もその意図を測りかねていた。 「日比野くんはさ…」 新しい紅茶が置かれるのを見届けて、社長はおもむろに切り出す。その口調はいつの間にか「日比野くん」に変わっていた。

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第19回 社長の強力なリーダーシップ

約束の時間の5分前に、日比野と安田は社長室につながっている応接間に通された。秘書に出された紅茶の香りがふんわりと立ち込めている。 「日比野がここに来るのは、初めてか?」 「…いや、先代の社長のときに、ちょっとな」 「へぇ、そうか」  日比野はかつて、奨学金基金の設立を当時の社長に直談判したことがあり、それがしこりになってH社を去ることになった…いきさつがある。しかし、安田にそのことは話していなかった。半ば、H社に追い出された形になった自分が、いつの間にかH社を救うために奔走しているという巡り合わせを感じた日比野は、つい「皮肉なもんだな…」と、つぶやいた。

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第18回 ネガキャンを利用する

「や、山西さん…」 つい2日前に対峙したばかりの山西が、そこにいる。安田の表情がひきつるのと裏腹に、山西は妙になれなれしい笑顔で近づいてくると、 「いや、ちょうど今から大阪に帰るところなんだよ」 と言い、重そうな荷物を指さした。 「このホテルは良いね、東京本社から近いし、眺めも良いからね…」 山西は本社という単語にわざわざ「東京」と付けて呼ぶ。それは自分が率いるプロジェクトを通じて大阪支社の格上げを狙おうという野心の表れだろう。 「それで、君たちはなぜここに?密談かね?」

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第17回 計画をストーリーに変える

合宿もあっという間に最終日になった。 「皆さん、おはようございます」  日比野は挨拶をしながら全員の顔色を読み取った。幸い、昨日のBBQで羽目を外す者もおらず、全員のコンディションは悪くなさそうだ。 「昨日の時点で、粗削りではあるものの、何とか計画に目鼻を付けることができました。ここからやるべきことは、この計画をプロジェクトの外に周知するための準備です。社長に向けたプレゼンが急遽設定されましたが、このストーリー作りはどの道欠かせない工程でしたので、プレゼン当日を一つのペースメーカーとして準備するつもりでいてください」

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第16回 でき上がった計画、そして次のステップへ

15分間の休憩が終わり、ディスカッションが再開された。 「それでは、各年度にどれくらいの台数が売れそうか、検討をしていきましょう」 そう言って日比野は表を書いた。「先ほど、目標から逆算すると12,500台を売る必要があると言いましたが、今回は逆、つまり、現時点から引き延ばして何台売れそうか?と言う現実論を交わしていきましょう」  日比野がそう言った時、庄司が不安そうに口を開いた。 「これって、そもそも1台目はいつ売り出されるんでしょうね?自動運転車って、下手したら5年経っても実用化しないんじゃないかな、と」 「……」

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第15回 売るのは家か?車か?

安田と日比野の2人が駆け付けると、あすなが目に涙を浮かべている。 「おいおい、何の騒ぎだこれは」 さすがの日比野もそう口を挟まずにはいられなかった。 「だって、さっきから庄司さんも富永さんも、自分の言いたいことばかり言ってるんですもん!」 あすなが言いたいことは、ある程度想像がついていた。たった今、安田にその講釈をしてきたばかりだ。だから本来は安田にこの場をおさめさせたいところだが、「目の前のじゃじゃ馬は、お前の担当だ」とばかりに、安田はうすら笑いを浮かべて日比野のほうを見ている。日比野は「やれやれ」と思いながら、口を開いた。

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第14回 チーム内の軋轢から目をそらすな

合宿2日目も、間もなく昼になろうとしている。 「なあ、こんな調子で大丈夫なのか?」 安田が不安げに日比野を食堂の片隅に連れていき、小声でそう尋ねる。「首を賭ける」と決意した昨夜の安田とは似ても似つかないが、日比野はその様子をむしろ好意的に受け止めた。日比野が知る限り、安田が一度決めた覚悟を曲げることはそうそうない。その上で、安田はプロジェクトの成功に向けてプライドを投げ打って日比野に助言を求めている様子を見て、「ああ、こいつはまた一皮むけるだろうな」と感じていたのだった。 「お前の不安は、富永と庄司の間の軋轢だろう?」

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第13回 新たなリーダー候補。しかし…

安田は食堂の自販機で買った缶ビールを開けて、最初のひと口を飲んだ。静かな食堂に、その「ゴクリ」という音がやけに大きく響く。冷えたビールが腹の中に落ちていくのを感じながら、安田は今日という長い一日を振り返った。 新規事業がなかなか立ち上がらない現状を打破しようとする若手チーム、そしてその時機を鋭敏に感じ取って社長の座を虎視たんたんと狙う中で、安田に右腕になれと誘ってきた山西。きっと、これまでの新規事業プロジェクトが頓挫した理由の中には、山西のような社内の抵抗勢力の存在が少なからずあったに違いない。しかし、 「俺は、あいつらの想いを無駄にするわけにはいかないんだ」

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第12回 デスバレー(死の谷)を越えろ

思わぬ道路渋滞のせいで、日比野と安田が合宿所に戻ったのは、22時を過ぎたころだった。 「すっかり遅くなってしまったな」 安田が食堂の扉を開けると、バスタオルを首にかけた状態の庄司と目が合った。 「あ、よかった。戻られたんですね。すみません、先に風呂を頂いてしまいました」 「いや…こちらも時間が読めなかったことだし、それでいいんだ…さて、夜遅い時間になってしまって申し訳ないが、さっそく話を聞かせてほしい。まずは庄司、そちらのチームからだ」

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第11回 ロマンがノルマに変わるとき

H社の役員会議室には、不穏な空気が漂っていた。 山西の言いたいことはシンプルだった。大阪支社を大阪本社に格上げするためには、資金も人材も必要になることは明らかだ。安田のポストを保証する代わりに、新規事業の開発を諦めさせることで、その資金を自分の野望のために使うとともに、安田という格好の人材を引き抜きたい、ということである。 「山西さん、私は社長に命じられて新規事業開発を担っているのです。それを山西さんにとがめられるいわれはありません」

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第10回 枠からの脱却

「あすなちゃん、お疲れさま」 少し休憩を取ろうということになり、食堂の片隅にある自販機でホット紅茶を買ったあすなに、ナミが声をかけた。「すごく生き生きしてるわね。立派よ」そう言われて普段なら浮かれるところだが、今日は何となくそんな気になれない。「うーん…でも、ビジネスを大きくするのって本当に大変なんだなって…当たり前のことに今さら気づかされてます」紅茶を一口飲んだあすなは、ふーっと大きなため息をついた。

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第9回 活路はどこにある?

H社の新規事業開発室メンバーによる2泊3日の合宿がついに始まった。 伊豆高原にあるH社の保養施設は研修所を兼ねている。グループ全体で見れば毎年数百名いる新入社員の研修や、管理職候補者の研修の際によく用いられる場所だ。しかし、今回はプロジェクトメンバーに日比野・ナミを加えた7名しか来ていないため、ひどく静かである。

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第8回 後輩からのメッセージ

日曜日だというのに、株式会社ビジネス・キューピッドの社長室は騒がしかった。 「ねぇ、日比野さん、何かヒント下さいよぉ…」 あすなが日比野に泣きついている。 水曜日からの合宿に向けて、日比野が宿題を出していたのだ。

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第7回 3つのチームのあり方

「おい、いったい、なんであんな見え透いた嘘をついたんだ!?」 安田は部屋を出るなり、日比野に食って掛かった。 「落ち着け。その答えをゆっくり話そうと言っているんだ。15分しかないから、そこのスペースでいいな?」 日比野は手近なテーブルを指さし、近くの自販機でコーヒーを買って腰かけた。

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第6回 顧客は誰だ?

「社長、コーヒーが入りました」「ああ…」株式会社ビジネス・キューピッドの社長室では、いつもどおりの1日が始まっていた。H社のプロジェクトはひとまず順調に滑り出すことができたように思われた。キックオフミーティングが終わった後、安田からも「おかげで良いスタートが切れたよ」と労いの言葉をもらうことができたのだった。

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第5回 5年後の姿を描け

あすなが付箋を手に部屋に戻ってきたときには、すでに日比野は説明を始めていた。第1話で日比野が眺めていた決算資料と同じものをメンバーに配っている。 「H社グループのここ3年間の業績が、こちらです。単位は百万円ですから、ここ最近の売上は3200億円強というラインを継続していることになります」

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第4回 経営者と従業員の違い

部屋に戻ると、すでにプロジェクトメンバーは席についていた。 「さて、ではさっそく、一人一人の回答を見せてもらいましょうか」 日比野はナミからメンバーが書いたアンケートの用紙を受け取ると、テーブルの上に並べた。メンバーのアンケート結果を要約すると、以下のとおりだった。

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第3回 新規事業の前に、理念の話をしよう

「俺にはリーダーの資質が欠けている、だと?」安田は日比野の言葉を反すう芻しながら、顔を上気させた。「いくらお前でも、言って良いことと悪いことがあるぞ。この会社で、曲がりなりにも俺は同期で最初に部長職の座を射止めたんだ」安田のいうとおり通り、彼の辣腕ぶりは、H社の誰もが、そして日比野も認めているはずだった。「…だったら、答えてもらおう」日比野は冷静さを失わないまま、安田の持つA4用紙を指さした。「お前には口頭で答えてもらいたい。そこに書いてある、3つの質問だ」

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第2回 いよいよキックオフミーティング…しかし。

キックオフミーティングの日は5日後に設定された。「あすなちゃん、すごいですね。新規事業のメンバーに抜擢されるなんて!」ナミはいつものとおりコーヒーを淹れながら日比野にそう言った。「ふん、あいつは人質みたいなもんさ。安田のやつ、あすなを置いておけば、もれなく俺がついてくるとでも思っているんじゃないか」日比野も、いつものどおり悪態をつく。しかしその悪態が様になっていない。「…とにかく、H社にとっては“見えざる正念場”なんだ」

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第1回 旧友からのメール

あっという間に、1年が経った。オフィスの掃除を一とおり終えたナミは、いつもどおりコーヒーを淹れ、社長室でPCとにらめっこしている日比野の前にカップを置いた。「先月のレポート、ご覧になりましたか?」「ああ、今見ているが…これは誰が書いたんだ?」「榎田君です。成長したでしょ?」「そうだな」日比野がオープンしたシェアハウス「アンジュ」の一室に構えられた、タウン誌「かすみタイムズ」の編集部は、立ち上げに携わった架純が大学を卒業したため、後任として榎田君が編集長を務めている。日比野の厳しくも温かい指導の甲斐あって、少しずつ榎田君の仕事の能力も上がってきているようだ。

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筆者の紹介

写真:眞山 徳人

眞山 徳人 まやま のりひと
公認会計士。2004年慶應義塾大学経済学部卒業後、2005年公認会計士第2次試験に合格。
大手監査法人にて、監査業務のほか、管理会計の導入から経営ビジョンの策定にいたるまで、さまざまな種類のコンサルティング業務に従事。
また、大学や大学院でのインターンシップ研修の運営や各種企業研修での講師も担当。
2016年に独立。現在、合同会社フォルケCEO、眞山公認会計士事務所所長。

子どもを対象としたプレゼンテーションやビジネススキルに関する教育にも力を入れている。将来の夢は「子ども向けビジネススクールを作ること」。

(著作歴)
2011年2月:LEC東京リーガルマインドより無料小冊子「公認会計士ハル」を刊行。
2011年12月:中央経済社の月刊誌「会計人コース2011年12月号」にて、付録「マンガde会計基準」の執筆・原作を担当
2012年3月:日本実業出版社より刊行された「公認会計士最短最速合格法(著:平林亮子)」にて、執筆協力者としてストーリー執筆を担当。
2014年4月:日本実業出版社より「江戸商人勘助と学ぶ 一番やさしい儲けと会計の基本」を刊行。
2014年10月:中央経済社より「そこが知りたい! 固定資産管理の実務」を刊行(共著)。
2017年5月:洋泉社より「スピーチ・ツリー ~どんな場面でも人前で「ブレずに」話せる技術」を刊行。
2018年8月:クラウドファンディングを経て、自費出版にて「ぼくらの夢がかなう!おこづかいのヒミツ」を刊行。

漫画家の紹介

イメージ:たちばないさぎ

たちばないさぎ
1992年花とゆめプラネット増刊「無添加有機世代」でデビュー。
以後、Silky増刊号・フォアミセス・別冊ねこぷに・15の愛情物語などの各雑誌に、エッセイ・ドキュメンタリー漫画作品を掲載。
著書に「ハムハムえぶりばでぃ」 「ひなたの風景」「公認会計士 松本翔の事件簿」「うたで走り抜く」などがある。
宝塚大学 東京新宿キャンパス マンガ領域非常勤講師。
日本漫画家協会・日本在宅医学会会員。

BizQpidシリーズ

会計×コンサル物語 ~BizQpid(ビジネス・キューピッド)~ページへ

会計×コンサル物語 ~BizQpid(ビジネス・キューピッド)~
難しい会計やビジネスの世界を、マンガも取り入れてわかりやすくご紹介します。

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会計×コンサル物語 ~BizQpid 2nd season(ビジネス・キューピッド セカンドシーズン)~
ビジネス・キューピッド、待望のセカンドシーズン始動!

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