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株式会社 日立システムズ

ネイティブが使うビジネス英語

第20回 失われた意味

こんにちは!にっぽん大好きなジャックです!

どの言語にも、独自の概念や発想の解釈があり、他言語に翻訳すると近い表現になることもありますが、ニュアンスが失われてしまうことも珍しくないでしょう。たとえば、日本語ではよく理解する事柄を英語で表現すると、しっくりこないなと感じたことはないでしょうか?
英語にはない日本語の表現がある一方で、日本語で表現すると失われてしまう英語のニュアンスというものがあります。さらに、理解したつもりで使っていた簡単な英単語や言い回しが、別の意味合いを持っているかもしれません。日本語に訳しにくい単語やフレーズを使って、英語の奥深い一面を探ってみましょう。

その解釈、合ってる?

私は時々、上級者向けに英会話のコーチングをしています。コーチングを受けにくる生徒の多くは流暢に英語を話しますが、言葉のニュアンスを間違えて使っていることがあります。次の会話を見てみましょう。

ジャック: Hello Mr. T, how’s business?
(やあ、Tさん、仕事の調子はどうだい?)

Tさん  : Not bad, but some of my younger team members lack common sense.
(悪くはないんだけど、若いメンバーの何人かは「コモン・センス」が足りないんだ)

ジャック: Oh, so they don’t conform to social norms?
(へえ、つまり社会通念を欠いていると?)

Tさん  : No, they just lack basic business knowledge.
(いや、彼らはビジネスの基本的な知識が足りないだけだよ)

ジャック: “Common Sense” huh? I think you may be confusing that phrase with another one…
(「コモン・センス」か。別の言葉と混同しているんじゃない?)

Tさん  : Am I…?
(そうなの...?)

私とTさんの「コモン・センス」の解釈にズレが生じていることに、お気づきになりましたでしょうか?なぜ、このようなことが起きてしまったのか、詳しく紐解いていきましょう。

「常識」の変遷

多様性が推進される昨今、“Common Sense”、つまり「常識」という言葉は以前にも増して定義が難しくなっています。少し話は逸れますが、日本語の「常識」という言葉、実は西洋哲学のなかで長い議論を経て日本に辿り着いた概念であることをご存じでしょうか?少し哲学的な話になりますが、そもそもは、ギリシア哲学者アリストテレスが共通感覚(ラテン語:Sensus Communis)という概念を提唱したことが始まりだそうです。人間の五感はバラバラに機能しているわけではなく、そのさまざまな感覚を統合して認識するための「共通の感覚」があるはずだと、彼は主張したと言われています。その後、時代を経て、この考え方はさまざまに解釈され、個人の感覚という枠を超えて社会通念という意味に近い概念へと変容していったと言われています。つまり、人間の身体感覚の問題ではなく、社会全体の問題へと解釈が変わっていったのです。

このように、西洋哲学の流れのなかで倫理観などとも結びつきながら解釈された末、仏教思想とも結びついて、「常識」という訳語で日本へ持ち込まれたと考えられています。こうして時間と空間の隔たりを経て、解釈が変化しながら日本へ辿り着いたのだとすると、日本人と欧米人の解釈に、ニュアンスの違いがあるのは無理もありません。

参考文献
Aristotle, and Jr. Miller, Fred D., On the Soul: And Other Psychological Works, Oxford Univ Press, Oxford, 2018, p.205

現代の常識

さて、話を戻しましょう。Tさんは会話のなかで、おそらく「知識が足りない」という意図を伝えたくて“Common Sense”と表現したのでしょう。しかし、前述したように“Common Sense”は、英語圏では社会通念という意味合いで受け取られます。誤解を招かないためにも、避けるべき表現かもしれませんね。

それでは、Tさんは、“Common Sense”ではなく、どのように表現すれば誤解が生まれなかったのでしょうか?現代の日本語で「常識」という意味合い(これもまた曖昧ではありますが)を表現するならば、 ”Common Knowledge”が適切ではないでしょうか。これは、共有知識や一般知識といった「広く一般に、みんなが知っていること」という意味で使われます。考えてみれば、“Common Sense”(自明な社会通念)は範囲が非常に広く、国によって異なりますし、時代によっても変化するものです。反面、”Common Knowledge”(みんなが知っていること)は、多少の曖昧さが残るものの、例えば“common knowledge of business”(ビジネスの一般知識)といったように範囲を限定することが可能で、少なくとも英語圏のネイティブ・スピーカーには、言わんとするニュアンスは伝わると思います。

解釈の違いを知ろう

今回は、「常識」という言葉を通じて、本来の英語の意味合いが失われていたり、解釈が変容している例をご紹介しました。言葉が、いや概念が、長い歴史を経て解釈を変えながら変容する様を少しだけ垣間見ていただくことができたのではないでしょうか。当たり前に使っていた日本語の由来、翻訳だけでは見えてこない英語と日本語の解釈の違いなど、普段、皆さんが使っている日本語には、解釈を変えて国外から持ち込まれたものがほかにも多く存在するかもしれません。逆説的ではありますが、外国語を知ること、またその文化を知ることが日本語についても深く知る機会につながると私は思うのです。

今回、題材に取り上げた「常識」以外にも、ニュアンスの違いがある英語表現に次のようなものがあります。

  1. 倫理  : 「Ethics」と「Morals」
  2. 実際に : 「Actual」と「Practical」
  3. 正義  : 「Justice」と「Rightiousness」

皆さんのなかで興味を持たれた方がいらっしゃったら、そのニュアンスの違いを調べてみてはいかがでしょうか?英語のみならず、皆さんが普段使っている日本語をより深く知ることができるかもしれません。

今月の決め台詞はこれだ!

“I think you may be confusing it with~”
(それは〜と混同しているのでは?)

今回は、日本語と英語での解釈のズレに着目して解説しました。それに関連して、本文の会話例でも使われている、会話している相手と解釈がズレていると感じたときに使えるフレーズをご紹介します。会話中、発音の誤りや文法上の誤りなどは気がつきやすいですが、言葉の概念の解釈の誤りとなると、互いの解釈がズレたまま会話が進んでしまいますよね。そんなときは、このフレーズを会話に挟んで認識を合わせるきっかけを作るとよいでしょう。

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※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。

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