こんにちは!にっぽん大好きなジャックです!
なぜ日本人は英語のプレゼンに苦労するのか?意外かもしれませんが、英会話レベルが最大の要因ではありません。日本語と英語とではプレゼンスタイルが大きく異なるからなのです。今回は、日本語と英語のプレゼンスタイルの大きな違い、英語でのプレゼンで心がけるべきこと、そして聴衆に良い印象を残す、とっておきの方法をご紹介します。
私が日本の会社に勤め始めて、しばらく経ったときのことです。ある日、職場の日本人の同僚が英語のプレゼンの準備していた折、内容の確認を頼まれました。所々、文章の僅かな修正はあったものの、それよりも気になったことがありました。
ジャック: スライドに書いてある文章がすごく多いのだけど、どうして?
同僚 : 重要な情報を、すべて記載したのです。プレゼンでは、その内容を読んで伝えます。
ジャック: まさに精度の高さを重んじるメイド・イン・ジャパンのプレゼンだね。でも残念ながら、欧米人に対して発表するときは、スライドの内容を読み上げるだけでは良しとされないんだよ。
同僚 : そうなの? どうして?
ジャック: 欧米人は大学の講義のようなプレゼンに、良い印象を持たないんだ。発表者と対話しているようなプレゼンを好みます。
私は、ほかにも改善点を同僚に助言し、プレゼンは上手くいったようです。では、そのとき、同僚に助言したポイントを見ていきましょう。
日本語と英語でのプレゼンの大きな違いは、聴衆と対話の間をつくることです。200人の聴衆を相手に対話するのは難しいかもしれませんが、決して不可能ではありません。ましてや、会議室で10~15人という少人数に向けた発表であれば、なんら問題はありません。聴衆の数の問題はさておき、重要なのは聴衆が発表者であるあなたと対話しているような感覚を抱けるかどうかという点に尽きます。
私は日本でミーティングやプレゼンに参加した経験がありますが、聴衆が退屈していたり、居心地が悪そうであったり、逆に居心地が良すぎて居眠りをしていたり...。発表内容が多いプレゼンの場合は、ただ座って聞いているだけでは集中力が続きません。そこで欧米では、自分も能動的にプレゼンに参加しているのだと聴衆に感じさせることは、発表者の責任であると考えます。それでは、どうすれば聴衆をそのような気持ちにさせることができるのでしょうか?
日本では多くの場合、講義やプレゼンは発表する内容に関して最も知識のある人(教師、専門家、会社の先輩など)が行うので、聞き手はその情報を吸収し、時間をかけて考え、学ぶことが期待されます。私が初めて日本の会社に入社したとき、会議やプレゼンの最中の沈黙に大きなショックを受けました。なぜなら、欧米人にとって、会議やプレゼンは「議論」の場でもあるからです。発表者は、レトリック(英: Rhetoric, 日: 修辞学)を使って議論の機会を作る責任があります。
レトリックとは、その起源を古代ギリシアにまで遡る、弁論や演説の技術に関する学問分野です。日本では馴染みが薄いかもしれませんが、欧米で言うところのスピーチの授業と言うのは、英語のスピーキングの練習ではなく、聴衆を説得するためのさまざまな技術の習得を目的としています。レトリックの技法として最も有名なのは、Rhetorical question(修辞的な質問)でしょう。
Rhetorical questionとは、回答を求めない質問を文脈の中に仕込むことによって、伝えたい内容や意図を強調したり、話題を転換したりする技法です。回答の有無に関わらず、敢えて質問をすることで聴衆に考える間を与え、彼らの注目を引きつけて能動的な参加を促すことができるのです。次の例文を見てみましょう。
太字のセリフがRhetorical questionです。
In the last year, overseas sales are down.
(昨年、国外の売上は減少しました)
Is this due to the global pandemic?
(これは世界的なパンデミックの影響によるものでしょうか?)
Well, yes and no.
(そうだとも、そうでないとも言えます)
We took a deeper look and found the cause is due to more than one factor.
(詳しく調べたところ、[売上の減少には]複数の原因が存在することが判明しました)
So what are the causes?
(それらの原因とはなんでしょうか?)
First…
(まず...)
このようにして書いてしまうと落語家の一人芝居のようで滑稽に見えてしまうのですが、これでいいのです。まず、聴衆が抱いているであろう疑問を敢えて言葉にすることで、その後の展開の方向性が聴衆全員に共有され、予想という行動が聴衆のなかに生まれます。そして、この予想と緊張のなかで発表者が提示する「気づき」が、より一層強調されます。
聴衆と対話する際も、知識を与える専門家としてではなく、自身も聴衆の一員として「気づき」を共有する姿勢が良いでしょう。そうすることで、聴衆の考えを代弁しているかのように、発表者の意図した方向に聴衆を誘導しやすくなるのです。そのため、スライドは発表者と聴衆の間を媒介し、プレゼンの進行を担う道具として、必要最低限の情報のみを記載するのが望ましいといえるしょう。
Rhetorical questionを使うことで、プレゼンの流れのなかで立ち止まって考える時間を作り、論理的な進行を追体験する機会を聴衆に与えることができます。このようにすることで、聴衆の注意を引き付け、興味を持たせることができるのです。人前で話すときに最も重要なことは、聴衆がどう感じるかです。このほかにも、人前で話すことを上達させ、聴衆とつながりを持つためのプレゼンのテクニックはたくさんありますが、それらのトピックについては、今後のコラムで紹介することにしましょう。
“Is the sky blue?(Rhetorical question:空は青いよね?→もちろん!)”
今回ご説明したRhetorical questionのお洒落な使用例です。
例
同僚 : Are you still up for dinner at my place as planned?
(今週末はうちでディナーだけど予定通りで大丈夫?)
あなた: Is the sky blue?
(もちろんさ!)
誰もが答えを知っている当たり前の問いを、質問に対する答えとして返すことで、“Yes”(この場合「もちろん」)という内容を示唆することができます。訊かれたことをそくざに質問で返すことで、ユーモラスでカジュアルな雰囲気を醸し出すことができます。
このようなフレーズは、自分でも作ることができるので、試してみてはいかがでしょうか?
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※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。
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