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株式会社 日立システムズ

ネイティブが使うビジネス英語

第13回 皮肉が通じる人になろう!

こんにちは!にっぽん大好きなジャックです!

本コラムでは、英語でのコミュニケーションについて取り上げつつ、言葉が持つ文化的な側面にも焦点を当て解説してまいりました。文化が異なれば、言葉による表現にも違いがあり、今回はそのなかでも私が英語講師として勤めていた頃、生徒への説明に頭を悩ませたironic humor (皮肉なユーモア)について解説してみたいと思います。「皮肉」とはなかなか説明が難しく、私の長年の講師人生のなかでも教えるのが難しかった概念のひとつです。その難しさとは、文法や語彙の難しさではなく、日本人と欧米人の考え方の違いによるものなのです。
一見、ビジネスには不要と思うかもしれませんが、実はironic humorは英語では無視できないほど頻繁に使われており、それが理解できないと、最悪の場合はビジネスチャンスを逃してしまうこともあるかもしれません。

なぜ、そんなことを言うのだろう?

以前、私が勤めていた会社は、オフィスは東京に構えていましたが、社員の多くは海外から来ていて、実に国際色豊かな職場環境でした。多様性について考える貴重な経験ができたと同時に、時折、誤解を生むこともありました。以下は、私が所属していたチームの日本人マネージャ(以下、Mgr)と外国人社員の間で実際にあった会話です。

日本人Mgr: I just got a request from our client, they asked us to deliver the project early so our deadline has been shortened to the end of this week. I’m sorry to ask, but I’d appreciate everyone’s cooperation on this.
(先ほどクライアントから依頼があり、早期納品を求められたので、納期が今週末に短縮されました。無理を言って申し訳ないのですが、皆さんのご協力をお願いします)

外国人社員 :Well, I guess it looks like I can go home early today then!
(じゃあ、今日は早く帰れそうだね!)

日本人Mgr : …Mr. M, please listen carefully. The entire team will need to do overtime today.
(...Mさん、よく聞いてください。今日はチーム全体で残業が必要なんだ)

外国人社員 : …right, of course, let’s get to work.
(...そうですね、もちろんです、仕事に取りかかりましょう)

日本人Mgr: <変な人だな...>

言うまでもなく、その後、数日間はチームにとってストレスの多い日々が続いたわけですが、そもそもなぜこの外国人社員は、このように不適切なことを言ったのでしょうか?
その疑問に答えるために皮肉とは何か、そして英会話のなかで通常どのように使われるかを見てみましょう。

そもそも皮肉とは何なのか?

Ironic humorを理解するためには、まず「皮肉」という言葉の意味を知らなければなりません。英語には日本語の「皮肉」を意味する言葉が複数存在することをご存じでしょうか? 本コラムでは、その中でも特に “Irony”(アイロニー)について言及しますが、ネイティブがどのように、そして、なぜ皮肉を使うのかを説明したいと思います。

一般的に“Irony”とは、意図していることと反対のことを述べることによって、自分の意見を強調する効果を狙った話し方で、反語法とも言われます。誰が見ても明らかに事実とは異なること、あるいは状況や境遇を、言葉で表現することによって面白さが生まれ、間接的な批判や指摘を強調するのです。例えば、次のように。

例1) <食べ物が塩っぱすぎたとき>

"I love how salty these fries are."
(このフライドポテトの塩加減がたまらない)

例2) <友人が飛行機の搭乗の4時間前に空港に行くと言い出した場合>

“I don't think we are going to make it on time for the flight”
(搭乗時刻には間に合わないと思うよ)

このように、“Irony”はユーモアを交えて批判や抗議の意見を示唆する際に使われることが多いですが、必ずしも否定的なものではありません。本コラムでは、“Irony”と、その他の「皮肉」の類型の比較説明は割愛しますが、ironic humorの使い方を誤ると、”Sarcasm”(サーカズム: 嫌味な冗談)や“Cynicism”(シニシズム:冷笑的な皮肉)など、悪意のある表現になってしまうので注意が必要です。
このように、ironic humorを理解すると、会話例の外国人社員は、実は、期限が短いにもかかわらず、遅くまで残ってプロジェクトに励む覚悟があるということを彼なりのユーモアを交えて伝えたかったのだと言うことが分かります。彼は、残業することには前向きではなかったかもしれませんが、言葉通りにオフィスを早く出るつもりはなかったのです。
日本人の間では、英語でのコミュニケーションにおいては物事をはっきり伝えるという印象が強くありますが、ironic humorのように遠回しで間接的な表現もあります。はっきりとは言い出しづらいけれども、ユーモアを交えてしっかりと意思表示はするという点においては、「本音と建前」という概念が存在する日本語とは対照的であると言えるでしょう。ある種の嘘によってやんわりと本音を伝える習慣がある英語に対して、日本語では人間関係の摩擦が生じないように建前によって本音を隠す習慣があり、比較文化の観点からも興味深いものだと私は思います。

いつもの会話に皮肉を少々

さて、ironic humorについて理解が深まったところで、ironic humorの例をいくつか見てみましょう。

例1)

あなたはアメリカのテキサス州にあるステーキハウスを訪れ、食事を楽しんでいます。ウェイターは完食したことに気づき、次のようにコメントします。

ウェイター: I guess you really hated your food, huh?
(よっぽど食事が不味かったんだな?)

明らかに食事を楽しんで完食したことをウェイターが面白がっていますが、こんな時は、“It was terrible!”(ひどいもんだった!)などと上手く冗談を切り返してみたいものです。

例2)

雨の多い日が続いている。同僚が窓の外を見てこう言った。

同僚: Lovely weather isn’t it? I might have lunch in the park today…
(素晴らしい天気ですね。今日は公園でお弁当を食べようかな...)

→ 悪天候へのイライラを吐露

このフレーズは、実は英語で最も一般的で使いやすい皮肉なジョークかもしれません。次の嵐の日に、英語圏の友人や同僚との会話で使ってみては、いかがでしょうか。

コミュニケーション術としての皮肉

英語の皮肉には、敢えて事実とは異なる発言をすることで、本心を示唆するとともに生じる面白さにより、コミュニケーション上の摩擦を軽減する役割があります。最初は理解しにくいかもしれませんが、言語的なパターンとしては難しいものではありません。皮肉な表現が苦手だとしても、それを見極め理解できることによってネイティブとの会話でミスコミュニケーションを避けることができるでしょう。
会話例のような状況に遭遇したら、話し手が皮肉を言っているのかどうか、少し考えてみてください。そうすれば、イライラやミスコミュニケーションから解放されるだけでなく、冗談の分かる奴だと一目置かれるかもしれません。

今月の決め台詞はこれだ!

“but seriously, ~“
(でも真面目な話、〜)

皮肉は、ストレスや困難な状況を和らげる効果がありますが、最終的には自分の意図していることを正しく伝えるべきでしょう。万が一誤解がないように、皮肉な発言の後には“but seriously”というフレーズがよく使われます。では、どのように使われるのか、以下の例文を参考にしてください。

状況)
あなたのチームが担当しているコンピュータープログラムに、複数の不具合が発見されました。修正には長い時間がかかり、一から書き直すことになるかもしれません。

“Well…this code looks perfect to me… but seriously, let’s divide the work up among the team and fix it asap.”
(まいったなぁ、実に素晴らしく完璧なコードだよ...でも真面目な話、チームで作業を分担して早急に修正しましょう)

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※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。

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