
統合基幹業務システム SAPソリューション
「Fit to Standard」に向けてアドオン・カスタマイズを最小限に抑えてSAPを導入
創立100周年の節目に挑んだ大規模プロジェクトを完遂し、業務改革を推進

多くの人に愛される菓子商品を提供するブルボン様。 2024年には節目となる創立100周年を迎えました。
株式会社ブルボン(以下、ブルボン様)は、販売・購買・生産・在庫・物流・会計などの基幹業務を担うシステムとしてSAP S/4HANA
を導入しました。
従来の複数分散していたスクラッチシステムを刷新することで、経営判断に必要な情報を迅速に入手できる体制を整えるとともに、SAPのベストプラクティスを活用し、一気通貫で効率的な業務プロセスを構築しました。日立システムズは、SAP導入および運用保守のパートナーとして、ブルボン様のSAPを中核とした業務改革を支援しました。
ブルボン様は、新潟県柏崎市に本社を置く総合菓子食品メーカーです。創立以来製造しているビスケットをはじめ、チョコレート、スナック、米菓など多岐にわたる菓子商品に加え、現在は飲料、機能性食品、冷菓に至るまで幅広い商品を提供しています。
ブルボン様の基幹システムは、各業務に最適化されたスクラッチシステムとパッケージシステムの組み合わせで構成されていました。しかし、30を超えるシステムはサイロ化し、データの分散や重複が発生。経営データをタイムリーに把握できないだけでなく、システム維持・運用負荷の増大や、ビジネスニーズの変化に即応できないなど複数の課題を抱えていました。
ブルボン様はこうした状況を打破するため、いくつかのシステムのサポート終了を契機にSAP S/4HANAへの刷新を決断しました。食品業界への豊富な導入実績と、グローバルに対応したERPとしての高い評価がSAPを選定した理由でした。
SAP導入支援ベンダーの選定ではRFPを作成し、各社の提案を比較検討したうえで日立システムズを選定しました。選定理由の1つめは、国内外において食品メーカーへのSAP導入実績を持つこと。2つめは、数多くのテンプレートを有するなどSAP導入の豊富な知見・経験を持つこと。3つめは、日立システムズが中堅・中小企業向けのSAP導入を専門としており、導入費用やサービス内容が自社の企業規模に適していたことです。
現状分析やシステムの構想策定を経て、2022年1月から本格的に導入プロジェクトを開始しました。
SAP導入にあたり、ブルボン様は従来の個別最適ではなく、全体最適と業務の標準化による「クリーンコア」の実現にこだわりました。これはSAPのコアには極力改修を加えず、標準機能を最大限に活用することで将来的な拡張性や保守性を高めるシステムの導入・運用方針です。
日立システムズはこの方針に沿って、事前アセスメントの実施、他社のSAP導入・運用事例の提供、業務分野ごとのSAPコンサルタント配置など、標準機能の活用を前提とした多角的なサポートを提供しました。
業務の中には、日本の食品業界特有の慣習など、標準機能で対応できないものもありましたが、そのような場合は既存システムをそのまま残し、SAPとのデータ連携インターフェースを開発するなど、あくまでSAP本体には機能改修を行わない方針を徹底しました。
約2年9カ月におよぶ導入プロジェクトを経て、同社のSAPは稼働を開始しました。当初計画から6カ月ほど遅れたものの、大きなトラブルなくスムーズな稼働が実現しました。プロジェクトマネージャーの田岡課長は当時を次のように振り返ります。
「稼働直前の時期に、他社のSAPに関するトラブルの報道が相次ぎ、経営陣からは不安の声が上がっていました。しかし、私たちはFit to Standardを徹底し、SAP本体への改修を最小限に抑えていたので、大きな問題は生じないと考えていました。結果的に不安は杞憂に終わり、導入プロジェクトを無事完遂することができました。」
2024年に創立100周年を迎えたブルボン様にとって、SAP導入は記念すべき節目を象徴する一大プロジェクトでしたが、日立システムズとの緊密な連携により導入プロジェクトを成功に導くことができました。
今後ブルボン様は、SAPの利用範囲をグループ会社および中国・米国に展開する海外法人にも広げ、ブルボングループ全体のシステム基盤をSAPで統一する計画です。日立システムズは引き続き、SAPの導入や運用・保守を支援することで、ブルボン様のさらなる成長を力強くサポートしていきます。
アドオンはわずか約30件! ブルボン様のクリーンコア戦略を支えた各種サポート
ブルボン様と同規模の食品メーカーがSAPを導入する場合、一般的には数百件規模のアドオン・カスタマイズが発生します。一方で、ブルボン様がアドオン・カスタマイズを約30件に抑えられた背景には、Fit to Standardを実現するという強いこだわりと、そのこだわりを実現に導く日立システムズの各種サポートがありました。

SAP標準機能を詳細に説明するセッションを13回実施し、既存システムでの業務のうち、SAP標準機能で置き換え可能な範囲を入念にご検討いただきました。

SAP標準機能への置き換えにあたっては、過去の実績からSAP活用・運用事例を数多く紹介し、業務がどのように変わるのかを具体的にイメージしていただけるよう配慮しました。

販売・購買・生産・会計などの主要業務に日立システムズのSAPコンサルタントを配置し、現場社員の皆さまと標準機能をどう活用するか入念にディスカッションを行いました。
創立100年の知見とSAPのベストプラクティスを融合し、業務改革を推進
ブルボン様は、部分最適にとどまっていたレガシーシステムから全体最適を実現するSAPへと大胆に移行し、業務改革を加速しています。
創立から100年の中で培われた独自の菓子食品製造のノウハウに、SAPのベストプラクティスを融合させることで次の100年を見据えた業務改革に取り組んでいます。
ブルボン様は従来、原料や包材を購買するための最低限の情報だけを持つBOMを運用していましたが、SAP導入を機により粒度の細かい正確なBOMを構築しました。
これにより、製品別の原価計算を迅速かつ精緻に行えるようになり、原材料高騰など厳しい経営環境下においてもコスト削減や品質維持の取り組みが可能となります。

SAPを軸に業務プロセスを整理したことで、各部門の業務範囲が明確になりました。さらに、現場社員の皆さまの間には「ベストプラクティスを参考に従来の業務を見直そう」という新たな視点も生まれています。

RISE with SAPモデルでSAPを利用することで、インフラや運用基盤をSAP社が提供する形となり、システムの属人的な運用から脱却できました。
最新版へのスムーズなアップグレードも可能になっています。
ブルボン創立100周年の節目に挑んだ過去最大規模のシステム導入プロジェクトを大きなトラブルなく無事完遂できたことを高く評価しています。



── 以前の業務システムの課題を教えてください。
以前は業務ごとに異なる30以上のシステムを利用していました。
その結果、システムやデータがサイロ化し、会社全体の経営データの把握に時間がかかるだけでなく、システム運用も個別対応が必要となり属人化や運用負荷が増大していました。当社は事業のグローバル化を進めていますが、旧システムのままではこれらの課題がさらに大きなものになるため、グローバルERPとして豊富な実績を持つSAPを導入し、これを業務の標準化によりクリーンコアで運用することで、旧システムのさまざまな課題を解決しようと考えました。
── クリーンコアの実現ではどのような点に苦労されましたか?
現場のニーズにあわせてシステム改修を続けてきた私たちにとって、クリーンコアは正反対のシステム方針です。ですからプロジェクト当初は非常に不安が大きかったです。しかし、これは会社として乗り越えるべき課題だと社内を啓発し、現場の理解を得るように努めました。さらに、カスタマイズ開発を抑えるため経営層を中心とした開発可否の判定会議を設けることで、Fit to Standardを徹底できるようなプロジェクト体制を設けました。
クリーンコアの実現に向けて、日立システムズからは業務ごとにSAPコンサルタントをアサインしていただきました。彼らにはブルボンの業務プロセスをSAP標準機能で実現する方法を提示してもらい、それをベースに現場社員が議論を重ねることで最善の選択肢を選んでいきました。
こうした地道な取り組みを経て、少しずつ不安を解消することができました。
最終的にアドオン・カスタマイズは約30件にまで抑制できました。他社のSAPユーザーに話したところ、「その少なさは異例だ」と大変驚かれたことが印象に残っています。
── SAPの導入効果を教えてください。
稼働開始から日が浅いため、本格的な効果はこれから実現するものと考えていますが、すでに前向きな変化の兆しを感じています。
例えば、SAP導入を機にBOMを徹底的に見直したことで、商品別の精緻な実績原価を把握できるようになりました。私たちは実績原価をもとに調達や製造プロセスを改善するので、正確なデータを早期に得られることは大きなメリットです。当社の場合、ビスケット類をはじめとしてチョコレートやスナック、米菓など多様な商品を製造しており、完成品のアソート商品もあるためBOMのパターンが膨大です。整備には大変苦労しましたが、日立システムズのレクチャーを受けながら粘り強く作り込みました。この成果は今後確実に表れてくると思います。
従業員の意識にも変化が見られます。SAPで業務を整理したことで部門間の役割が明確になり、社員の間には自身の担当業務や入力データへの責任感がより強く芽生えてきました。さらに、SAPには多くのユーザーによって磨かれたベストプラクティスが蓄積されているので、それらを取り入れる中で「これまでの仕事のやり方を見直そう」という姿勢も生まれています。こうした変化も大きな成果だと感じています。
── 日立システムズへのご評価をお聞かせください。
日立システムズのSAP導入・運用ノウハウには確かなものを感じました。導入作業では業務範囲に杓子定規な線引きをせず、柔軟かつスピーディーにさまざまなサポートを提供していただいたと思います。
今回のSAP導入は、当社にとって過去最大規模のシステム関連プロジェクトであり、さらに創立100周年の節目にあたることから、会社も大きな期待を寄せる一大プロジェクトでした。そのような取り組みを大きなトラブルなく無事完遂できたことを、経営層は高く評価しています。
将来的には海外法人を含むブルボングループ全体のシステムをSAPで統一したいと考えていますので、今後も引き続きご支援をお願いしたいと考えています。
株式会社ブルボン
| 設立 | 1924年11月20日 |
|---|---|
| 資本金 | 10億3600万円 |
| 従業員数 | 約5,000名(ブルボングループ計、臨時・パートを含む 2023年3月末時点) |
| 代表者 | 代表取締役会長 吉田 康 代表取締役社長 吉田 匡慶 |
| 事業内容 | 菓子・飲料・食品の開発製造販売 |
| URL | https://www.bourbon.co.jp |
ご協力ありがとうございました。
*本内容は2025年11月時点の情報です。
本事例に記載の情報は初掲載時のものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください。
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