2023年3月
こんにちは。田中慎太郎と言います。都内の私立大学の政治経済学部に通う2年生です。ゼミのOGである美咲いずみさんのベンチャー企業でインターンをさせてもらうことになりました。今日は脱炭素への取り組みを検討している会社に伺います。
美咲いずみ
株式会社DXファームCEO
5年間のITエンジニアの経験をもとにフリーのITコンサルとして独立
7年ITコンサルタントを務めたのち、起業
田中慎太郎
大学2年生
DXファームのインターン生
中島真知子
由見工業株式会社
環境推進部部長
ESG投資がトレンドになっていることから、社内での脱炭素の取り組みを検討している。
いずみ
田中くん、環境への取り組みって何かしていますか?
慎太郎
環境への取り組みですか?特に意識してやっていることはないですけれど、エコバッグを持ち歩いたりはしていますね。
いずみ
良いですね。そういった日常に根ざした取り組みは大切です。
慎太郎
あと、僕がよく行くカフェのストローが紙ストローに変わりました。僕が、というより世の中全体が環境問題に意識的になっているように思います。
いずみ
事実、今世界中で環境に目を向けるような流れがあります。
慎太郎
なぜ今なのでしょうか。エコって言葉は結構前から言われているのに、ここ数年、一気に環境への取り組みが叫ばれるようになった気がします。それこそ中学の公民で「地球サミット」や「京都議定書」について学びましたが、あれは確か90年代のできごとだったような。
いずみ
よく覚えていますね。1992年にブラジルのリオデジャネイロで、「地球サミット」という国連の会議が開かれました。
慎太郎
僕が生まれる前のできごとです。
いずみ
もう30年近くも前のことなんですね。私も当時小学生でしたがニュースになっていたのを覚えていますよ。この会合で、「気候変動に関する国際連合枠組条約」が署名されました。「気候変動枠組条約」「地球温暖化防止条約」などと呼ばれることもあります。
慎太郎
そんな昔から環境への取り組みをしていたんですね。
いずみ
はい、これが今に至るまで地球温暖化対策の枠組みになっています。ただ、当時は地球温暖化の原因などを今ほど正確に把握できていませんでした。そのため、条約の中身は結構フワッとしていました。
慎太郎
明確な目標がない感じですか?
いずみ
そうです。より具体的なアプローチに言及したのが1997年の「京都議定書」になります。「京都議定書」では2020年までの温暖化対策の目標を定めました。
慎太郎
ということは「京都議定書」に定めたことを更新しなくてはいけませんね。
いずみ
「京都議定書」以降の目標を定めるために2015年に「パリ協定」が結ばれました。「パリ協定」では2020年以降の目標を定めています。
慎太郎
「京都議定書」と「パリ協定」ってそういう関係なんですね。
いずみ
はい、兄弟関係といってもいいでしょう。そしてどちらも「気候変動に関する国際連合枠組条約」の枠組みの中にあるのです。
慎太郎
なるほど。前後関係がよくわかりました。
いずみ
そこで今日の相談者なのですが、北関東に工場を多く抱える由見工業株式会社の環境推進部部長の中島さんです。
慎太郎
環境への取り組みをDXしたいということですね。
いずみ
そろそろ、ミーティングの時間ですね。つないでみましょう。
いずみ
こんにちは。DXファームの美咲いずみです。
慎太郎
田中慎太郎です。
真知子
こんにちは、由見工業株式会社の環境推進部の中島真知子です。
いずみ
よろしくお願いいたします。
真知子
早速ですが、弊社は近年注目されるESG投資を呼び込めるように環境への取り組みを一層強化したく考えています。そこでこのたび、環境推進部を創設し、私がその部を率いることになったのです。
いずみ
重要なセクションを担当されるのですね。今後ますます大変になりますね。
真知子
はい。そうなのです。また、何から手をつけたらいいものか。それに環境問題についても付け焼き刃の知識しかありません。そこで美咲さんのお力を借りて、環境への取り組みのトレンドを知れたらと思っております。
慎太郎
最近、投資家は企業の環境や社会への取り組み、さらには企業ガバナンスなど、非財務情報を考慮して投資先を選ぶようになってきていますね。
いずみ
そもそも、ESG投資は、従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のことを言います。企業経営のサステナビリティを評価するという概念が普及し、気候変動などを念頭においた長期的なリスクマネジメントや、企業の新たな収益創出の機会を評価するベンチマークとして機能しています。
真知子
持続可能な開発目標(SDGs)と合わせて注目されているように思います。環境への取り組みを強化する企業が増えてきました。
いずみ
2015年9月に持続可能な開発目標(SDGs)が、同年12月にパリ協定が成立してからその流れが強まっています。
真知子
お恥ずかしい話、どちらも名前だけは知っているものの中身には疎くて。改めて確認したいのですが、それぞれどんなものですか?
いずみ
まず、持続可能な開発目標(SDGs)について。持続可能な開発目標(SDGs)とは、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でよりよい世界をめざす国際目標です。
真知子
ミレニアム開発目標(MDGs)?初めて聞きました。
いずみ
ミレニアム開発目標(MDGs)は、2000年9月に国連で採択されました。世界各国が脱貧困に向けて立ち上がり、NPOや途上国の声を取り入れ、みんなで力を合わせて世界をより良くしていこうという理想からスタートしました。8つのゴール、21のターゲット項目からなる国際的な開発目標です。
真知子
8つのゴール、21のターゲット、これらがボリュームアップしたのが持続可能な開発目標(SDGs)ですね。
いずみ
MDGsは当初は資本主義と矛盾すると、経済界からは軽く見られていました。しかし、MDGsは年月を重ねるごとに成果を出してきたのです。政策目標があることでMDGsに参加した国々は自分たちのできる範囲で目標を設定し、達成していきました。そして何より人々の意識も変わってきました。自分たちだけの利益を追求したって世の中は良くならない、そう思う人が増えてきたのです。
真知子
そういった経緯があり、経済界も意識するようになったのですね。
いずみ
はい、おっしゃる通りです。MDGsが2015年に終了することに伴い、次の15年に向けて打ち立てた新たな国際社会共通の目標です。その具体的指針となるのが、SDGs、持続可能な開発目標です。SDGsは、MDGsの成果を踏まえて、17の世界的目標、169のターゲット、232の指標を設定しました。両者の違いは、経済界が注目するようになったところにあります。
真知子
なるほど、ESG投資が注目されるようになった背景がわかりました。
いずみ
そして2015年12月に成立したパリ協定です。パリ協定では、世界共通の長期目標として、世界の平均気温上昇を産業革命以前1.5度に抑える努力を追求し、主要排出国を含む全ての国が削減目標を5年ごとに提出・更新することを定めました。
慎太郎
その目標を達成するためには、二酸化炭素の排出量を減らす必要がありますね。
いずみ
「減らす」だけでは不十分であるとしたことが大事なポイントになります。温室効果ガス排出量を実質的にゼロにする、つまり「脱炭素化」を長期目標として定めています。
真知子
脱炭素?
いずみ
はい、「カーボンニュートラル」と言うことも多いですね。
真知子
そうすると脱炭素実現に向け、努力することが大事と言えそうですね。
いずみ
おっしゃるとおりです。
真知子
とはいえ、できることは結構している気がします。どんなアプローチで脱炭素を実現すればいいのですか?
いずみ
脱炭素に向けて、先進的な取り組みをしている日立システムズを例にご説明したく思います。日立システムズでは、省エネ法が定めるエネルギー消費原単位の年平均を1%以上の低減をさせるという努力目標を大きく上回る省エネを実現してきました。
真知子
事業を拡大すれば本来エネルギー消費量が増えるはずです。どうやって減らすことに成功したのでしょうか?
いずみ
具体的な取り組みとしては、各拠点に分かれているオフィスやデータセンターの省エネをはじめ、社用車のEV化の推進などを行っています。他にもデジタル化の推進による紙の使用量の削減やリモートワークの積極的な導入により、人やモノの移動の削減を行ってきました。
真知子
オフィスやデータセンターの省エネというと?
いずみ
例えば、照明のLED化や省エネ型設備の使用、さらには空間の効率化です。
真知子
なるほど。社用車のEV化も興味深いです。
慎太郎
日立システムズでは現在1,000台近いEV車があるようですね。
いずみ
既存の社用車も2030年までに100%をめざし、EV車に切り替えていくようです。
日立システムズのEV車
真知子
デジタル化の推進による紙の使用量の削減やリモートワークの積極的な導入により、人やモノの移動の削減ともおっしゃってましたね。
いずみ
はい、コロナウイルスがまん延する中、リモートワークが中心の新たな働き方が実現しました。それを一過性のものではなく、リモートでできるものは、リモートインフラの整備や時間場所に囚われない業務効率を考え、継続しています。そうすることで、移動に伴うCO2の排出を抑制できるのです。
慎太郎
そもそも不必要に移動しなければ、CO2が排出されることもありませんしね。
いずみ
とはいえ、温室効果ガス排出量を削減するにも限界はあります。そこで、会社とは別の場所で二酸化炭素を削減・吸収することにより埋め合わせをするという考え方があります。これをオフセットと言います。
真知子
実際にどうやるのですか?
慎太郎
例えば、植樹などの森林活動を通じ、木の二酸化炭素の吸収に期待することができます。
いずみ
そういえば、日立システムズでは、2010年5月から大阪府の「アドプトフォレスト協定」を締結し、放置された森林や竹林の下刈り、間伐、植樹などの活動を通じて里山の保全を実施し、森林保全活動を推進しています。
真知子
しかし、ここまでの話を聞いていてひとつ難しいと思ったことがあります。確かにこういった試みは弊社でも試してみたいのですが、どうやったら削減効果を認識できるのだろうと思いまして。特にESG投資を呼び込むなら具体的な数値は必要ではないかと感じます。
いずみ
いままでのような財務情報だけでなく、非財務情報が重要になりつつある中、CO2削減の“見える化”は重要なカギになると言えそうです。
真知子
CO2削減の“見える化”、そんなこと可能なのですか?
いずみ
ええ、そういった試みを「炭素会計」と呼んでいます。読んで字のごとくCO2の排出量を定量化します。
真知子
なるほど、ESG投資を考慮に入れるなら炭素会計もしっかりやっていく必要を痛感します。いずみさん、炭素会計を可能にするサービスで弊社に合うものをいくつかピックアップしてもらえますか?検討していきたく思います。
いずみ
承知いたしました。さまざまな業者がこういったサービスを用意しています。候補をピックアップし、まとめたものを後日お送りします。
真知子
ありがとうございます。本日はありがとうございました。
いずみ
ありがとうございました。
慎太郎
ありがとうございました。
いずみ
いかがでしたか?
慎太郎
たくさんの学びがありました。まず、僕が中高生のときに学んだ地球サミットの延長に環境問題に対する今のトレンドがあることが分かりました。二酸化炭素を減らそうという考えがより具体的に脱炭素に向かっているんですね。
いずみ
はい、まさに今、世界は脱炭素の実現に向けて歩き始めたと言えます。
慎太郎
ESG投資を踏まえて、企業も脱炭素に向けて活動していかなければなりませんね。そのためにはどのように脱炭素を進めていくのかが大事だと思います。脱炭素を実現するサービスは最近どんどん増えてきました。
慎太郎
炭素会計を可能にするサービスで何がおすすめですか?
いずみ
日立システムズが提供する炭素会計プラットフォームサービス「Persefoni(パーセフォニ)」というものがあります。
脱炭素に向けて、自社の事業活動やバリューチェーン(サプライチェーン)全体に関わるすべてのGHG排出量を一元的に算出・管理できるクラウドサービスです。
慎太郎
脱炭素への第一歩の踏み出し方が分からず、取り組めずにいる企業も多そうですね。
いずみ
脱炭素経営を、炭素会計領域を中心にサポートしていくのがこのサービスの特徴です。自社の温室効果ガス排出量の管理をすることも、投融資先の温室効果ガス排出量の管理をすることもできます。
慎太郎
つまりESG投資をされる側だけでなく、する側にも有効なサービスということですね。
いずみ
さまざまなグラフ表示ができるのが本サービスの強みでもあります。例えば、組織全体のグラフでいうと、企業や自治体・各種機関の温室効果ガス排出量とその種類別排出量を年度、月単位で表示することができます。他にもスコープごとや拠点ごとのグラフ表示も可能です。温室効果ガス排出量のスコープ1や2、3ごとの状況や、拠点・ビル単位の状況などをフィルタリングすることで、目的別の状況把握が可能です。さらに人の活動もグラフにできます。出張・交通費などによる温室効果ガス排出量も「組織」「拠点単位」別に管理。お客さまの経費精算システムなどの旅費データから「電車」「バス」「タクシー」「飛行機」などの排出量を算出できます。
※画面は疑似データによる表示であり、当社の実排出量とは異なります。
(出典)炭素会計プラットフォームサービス「Persefoni(パーセフォニ)」
慎太郎
さまざまな状況に対応できますね。
いずみ
もう一つの強みに気候変動モデリングがあります。
慎太郎
気候変動モデリング?
いずみ
パリ協定で定められた、産業革命以降の気温上昇を2℃未満(もしくは1.5℃未満)に抑えるという国際的な目標を達成するように、温室効果ガスの排出削減目標を定める必要がありますよね?その目標を達成するためのシナリオを自動的に作成してくれるんです。さらに目標に対する「削減パーセンテージ」および、過去排出量に基づく将来予測値を表示してくれます。
慎太郎
自社の取り組みの進捗を確認し、目標に向けた計画評価と修正などに活用できそうですね。とても便利なサービスだと思いました。炭素会計なら日立システムズの「Persefoni(パーセフォニ)」に決まりですね!
[野付敦 記]
日立システムズは、システムのコンサルティングから構築、導入、運用、そして保守まで、ITライフサイクルの全領域をカバーした真のワンストップサービスを提供します。