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日本企業の先進的なDXの取り組みを選定する「DX銘柄2022」選定企業大全

【第7回】「DX銘柄2022」選定企業の先進的なDXへの取り組みを紹介(情報・通信業/食料品/建設業/サービス業分野 編)

DX銘柄制度における活動状況を紹介する本連載。今回は、「DX銘柄2022」選定企業 33社の中から、情報・通信業/食料品/建設業/サービス業分野などで選ばれた7社を紹介します。それぞれの業界が抱える課題についてデジタル技術を活用してどのように解決しているのかを見ていきましょう。

情報・通信業/食料品/建設業/サービス業分野でDX認定企業に選ばれた7社

情報・通信業/食料品/建設業/サービス業分野などで「DX銘柄2022」企業に選定されたのは、以下の7社です(企業名の後の業種は「DX銘柄2022選定企業レポート」を基準としています)。

  • KDDI(情報・通信業)
  • ソフトバンク(情報・通信業)
  • サントリー食品インターナショナル(食料品)
  • 味の素(食料品)
  • 清水建設(建設業)
  • 応用地質(サービス業)
  • アシックス(その他製品)

情報・通信業におけるDX推進とは?

携帯電話やスマートフォンの開発、インターネットの環境整備などによって、電波や通信のサービスを提供している通信事業者。特に昨今は、IoT(Internet of Things)市場が拡大しており、日常生活の利便性向上や社会課題の解決などさまざまな用途で活用されています。ただ、IoT市場が拡大することで、取得した個人情報に関するプライバシー問題への対応が必要となっています。

また、社会経済の発展に向けては、保有するさまざまな二次利用が可能な公開データ(オープンデータ)を有効活用するためのけん引役を担う存在としても注目されています。

KDDIが2022年5月に発表した「中期経営戦略(2022~24年度)」では、5つの注力領域の1つとしてDXが掲げられています。中でも、IoTという形で自動車や工業設備、各種メーターなどあらゆるものに溶け込むように通信を活用し、新たな付加価値を生み出せるように、さまざまな業界毎の個別ニーズに応じたビジネスプラットフォームを提供し、お客さま企業のビジネス創造をサポートすることで、社会全体のDXを加速することをめざしています。

たとえば、パートナーとビジネス開発を推進する共創事例の1つが、JR東日本との「空間自在プロジェクト」です。両社は「時間・場所に捉われない豊かなくらしづくり」に向けて、新たな分散型まちづくり「空間自在プロジェクト」の共同事業化を進めています。同プロジェクトでは、「空間自在コンソーシアム」を創設し、新しい価値や文化の創出に向けて、企業・自治体・スタートアップなどのパートナーを募集するなど、分散型ワークプレイスの商用化に取り組んでいます。

また、2020年に開始した社内人財育成機関「KDDI DX University」では、専門能力と人間力を兼ね備えたプロ人財の育成に取り組んでいます。KDDI版ジョブ型人事制度での全30領域で専門スキルを持つプロ人財比率30%をめざし、DX基礎スキルをKDDI単体で11,000人超の全社員が習得、さらにKDDIグループへ拡大に取り組んでいます。DXを中心に事業戦略を推進するために組織力の最大化を図っているとのことです。

2022年を「デジタル社会実装元年」と位置付けているソフトバンクは「情報革命で人々を幸せに」という経営理念のもと、情報革命を通じた人類と社会への貢献をめざしています。5GやAIなどの先端テクノロジーを活用し、社会課題やビジネス課題の解決に向けてさらに社会・産業・企業のDXを加速させるとのことです。

また、主力の通信事業だけでなく、グループ会社であるヤフーやLINE、PayPayなどが持つ顧客接点を最大限に生かし、BtoBtoCの次世代社会基盤を創造することに取り組んでいます。キャッシュレス決済サービス「PayPay」では、日本のキャッシュレス決済の拡大を見据えているとのことです。

さらに、従業員の健康管理をサポートするアプリ「HELPO」として、医師・看護師・薬剤師の医療専門チームに24時間365日気軽に相談できるオンライン健康医療相談サービスを2020年に提供開始。2021年からは、オンライン診療サービスや処方薬配送サービス、唾液PCR検査支援サービス、ワクチン接種支援サービスなどの機能拡充によって、医師の過重労働や医療費の増加といった社会課題の解決をめざしています。

その他にも、ソフトバンク、トヨタ、国内自動車メーカー7社が共同出資するMONET TechnologiesではMaaSによる地域課題解決と、新たなモビリティサービスの実現を進めています。複数の自治体で市内全域デマンドサービスや医療MaaSなどを提供しています。

食料品問題をDXで解決

2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の1つに「食品ロスの削減」が掲げられるなど、国内外で食品ロス削減の取り組みに対して注目が集まっています。また、需要を引き出す新たな価値創造や生産性の向上、安全・安心な品質管理、サプライチェーンの最適化などの課題も指摘されています。それらを解決する重要な役割を担うのがデジタル技術の活用です。

食料品分野でDX銘柄企業に認定された、サントリー食品インターナショナル、味の素ではどのようにDXに取り組んでいるのでしょうか。

サントリーグループにおいて清涼飲料事業を展開するサントリー食品インターナショナルは「世界で最も愛され・信頼される食品酒類総合企業」をめざす姿として掲げ、顧客の喜びと生命の輝きをもたらす革新的な商品・サービスや、持続可能な社会づくりに貢献する革新的な業務オペレーションなど、新しい価値を生み出す挑戦を続けているとのことです。

具体的には、高度情報化モデルを構築・導入した新工場「サントリー天然水北アルプス信濃の森工場」を竣工。環境経営の必要性、お客さまの要望に応える多くの新製品対応、生産ライン高速化など革新的なものづくりを実現しています。

同工場では、主に表計算ソフトや、紙を使って品質、生産、コストなどをコントロールしていた従来の生産方式から、ものづくりに関わる人、設備の情報を収集、蓄積し、利活用できるインターフェースや基盤、アプリケーションを導入しているとのことです。

また、自動販売機事業では、構造改革と収益性向上に着手。自販機に無線を取り付けて、在庫状況を常時把握する在庫・販売動向の管理手法「AIコラミング」を導入。オペレーションの効率化と台数当たりの収益を高めるとともに、顧客の飲みたい気持ちに寄り添った「ロケーション別」(設置先別)の品揃えや、品切れなく確実に商品を購入可能にする適正在庫配置を実現しています。

一方、味の素は「アミノ酸のはたらきで食習慣や高齢化に伴う食と健康の課題を解決し、人びとのウェルネスを共創します」というビジョンの実現に向けた取り組みである「ASV(Ajinomoto Shared Value)の価値を最大化する役割をDXが担っています。

同グループでは「DX0.0」「DX1.0」「DX2.0」「DX3.0」「DX4.0」というレイヤー別のステージを設定し、それぞれのレイヤーを連動させながら企業文化を進化させて食と健康の分野における社会変革をリードする存在になるために顧客起点、全体最適、全員参加でDXを推進しているとのことです。

具体的には、DX1.0(全社オペレーション変革)レイヤーでは「SCM(Supply Chain Management)最適化」に取り組んでいます。サプライチェーンは部署毎の都合による個別最適に陥りやすく、在庫水準が高くなる傾向が強く出るため、事業部門機能・部門横断の各種施策によって新型コロナウイルス感染症による影響を最小限に留める工夫を取り入れています。また、企業間共同配送のジョイントベンチャーであるF-LINEを販売物流のプラットフォームに活用し、デジタル技術を用いた物流業務プロセスの効率化を図っているとのことです。

また、「生活者に提供する食体験ジャーニー」として、栄養プロファイリングシステム「ANPS:Ajinomoto Group Nutrient Profiling System」、健康と栄養の相関データベース・献立データベースなどを活用した独自のアルゴリズムを共通するバックエンドに構築しました。現在は、システムの高度化を続けると同時に個々のニーズに合わせたフロントエンドと連携させ、きめ細かいサービスの提供を進めています。そこで得られる生活者情報を基に、生活者の食体験ジャーニーのさまざまなタッチポイントにおけるサービスを展開。

たとえば、レシピサイト「AJINOMOTO PARK」では、AIを活用してユーザー一人ひとりのニーズに合った献立を提供する「自動献立提案システム」の導入につなげているとのことです。

建設業界におけるDXの取り組み

昨今の内部・外部環境の変化によって、多くの課題を抱えている業界の1つが建設業界です。たとえば、少子高齢化による労働力の不足を補うための省人化の推進が挙げられます。また、従業員の高齢化による熟練技術者の減少に伴う技術力の低下も深刻な状況です。さらに、生産性向上や業務効率化を実現するためにはデジタル技術の活用は必要不可欠と言えるでしょう。

建設業において「DX銘柄2022」企業に認定された清水建設では「ものづくりをデジタルで」「デジタルなサービスを提供」「ものづくりを支えるデジタル」の3つのコンセプトを柱とする「Shimz デジタルゼネコン」を中期デジタル戦略とし、DXを経営ビジョンに位置付けています。デジタルとリアルのベストミックスを追求する「デジタルゼネコン」として、社会の期待を超える価値を創造し持続可能な未来づくりをめざしているとのことです。

たとえば、時間と場所を選ばないニューノーマル時代の新しい働き方を実現するネットワーク型ワークフィールドとして「SHIMZ Creative Field」を提案。デジタル技術を活用して、自立型組織への転換やワークエンゲージメントの醸成、対話中心のリアルタイムオペレーションの場づくりなど、企業の創造性と経営速度を生み出す基盤に位置づけています。

また、執務空間内に配置された高精度センサーと各人が携帯するタグ(発信機)から位置情報を取得し、Web上のダッシュボードにバーチャル執務空間をデジタルツインで再現したり、各人の移動履歴を蓄積して働き方改革やマネジメント改革に活用。さらに、自社開発の建物OS「DX Core」を基盤とする制御系ネットワークを活用し、空調・換気設備フィード制御サービスをサブスクリプション形態で提供しています。

その他にも、位置情報システムを基盤としたサービス(BaaS)事業を核に順次領域を拡げ、デジタルサービス分野を担うことで非建設事業における業績目標への貢献をめざしています。

DXを核としたイノベーションを創造する取り組みも

製品・サービスにデジタル技術を活用させることで、持続的ビジネスへ変革させることや企業文化や商習慣まで大胆に変えていく方向へ舵を切る企業もいます。その1社が、創業から60年以上にわたり積み上げてきた地質調査関連の製品・サービスを手掛けている応用地質です。監視用センサーの設置から防災計画立案支援まで多岐にわたる事業を展開しています。

同社は、2021年に開始した現中期経営計画「OYO Advance 2023」においてDX戦略を成長ドライバーとして位置づけ、新たな利益や価値を生み出す機会を創出することに取り組んでいます。具体的には「新事業サービスの創出」「既存ビジネスモデルの深化」「働き方改革、生産性の革新的向上」を3本柱に設定してDXを推進しているとのことです。

たとえば、同社が提供する事象情報管理システムは、多様なデータをクラウド基盤上で一元管理します。エッジコンピューティングやLPWAなどのIoT技術を活用した遠隔監視・制御が可能な低価格帯の多点型センサデータからのリアルタイムデータに加え、自治体や道路管理者によるパトロールで得られた情報、道路規制などの各種情報を統合できます。

これにより、円滑な災害対応をサポートするとともに、各管理者が実施する周辺住民への災害情報発信との連携を可能にするとのことです。また、蓄積データを統計処理した上で次の防災計画に活用できる機能を有するなど、安全・安心なまちづくりをトータルに支援するサービスを提供しています。

同社では、多岐にわたる自社事業をデジタルデータとデジタルプロセスで統合することで、管理者による現場業務フローとしての循環や自社ビジネスとしての循環を一致させています。そして、顧客である管理者とともに業務の効率性・精度向上を図ることをめざしています。

CX(顧客体験)向上にDXを活用する取り組み

多くの業界では、商品・サービスの機能や性能、価格などの価値がコモディティ化しています。その結果、他社との差別化が図りにくいという課題を抱えています。そこで、購入するまでの過程や利用時、購入後のフォローアップなどの過程における経験である「CX(カスタマー・エクスペリエンス)」を重視する傾向が見られています。

デジタルを軸にしたランナーにとって魅力的な価値の提供をめざしているのが、アシックスです。同社では、中期経営計画2023の戦略目標の1つとして「デジタルを軸にした経営への転換」を掲げ、全社一丸となってデジタルを意識した取り組みを展開しています。

特に、データを活用したランナーへの理解やパーソナライズサービスの提供、シューズ開発を実現するため、直接顧客と接点を持てる「DTCチャネル」を強化しています。

具体的には、2016年に買収したランニングアプリ「ASICS Runkeeper」や2019年に買収したレース登録プラットフォーム「Race Roster」を、会員プログラム「OneASICS」と連携させたエコシステムを立ち上げています。商品の販売だけではなく、デジタルを軸にランナーにとって魅力的な価値の提供を目指し、トレーニングメニューの提案、その進捗管理、各種大会のエントリーなどのサービスをシームレスに連携させることで、心も身体も満たされるランニング体験の提供に注力しています。

また、自社の商品やサービス、ランナーに関する研究で得られた知見を連動させ、コアランナーのパフォーマンス向上を目的としたトレーニングプログラム「アシックスプレミアムランニングプログラム」を提供。さらに、コロナ禍においてマラソン大会がキャンセルされる中で、レース登録サイト「Race Roster」で参加登録し、バーチャルで「ASICS Runkeeper」アプリを使って個々人が走り、それぞれが完走をめざすイベント・サービスを展開しています。

デジタル活用の利用シーンは今後も確実に増えていく

DX銘柄制度では、デジタル技術を前提としてビジネスモデルを抜本的に変革し、新たな成長・競争力強化につなげていくDXに取り組む企業を選定しています。今回紹介した企業のようにDXによって具体的な成果を出している企業も増えてきました。

今後もさまざまな場面でデジタルを活用する機会が出てくると考えられます。先進的なDX企業の取り組みを参考にして、ぜひ自社のデジタル化を進めてみてはいかがでしょうか。

  • ※ 本内容は2022年6月時点の情報です。
  • ※ 本記事に記載の情報は初掲載時のものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください。

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