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日本企業の先進的なDXの取り組みを選定する「DX銘柄2022」選定企業大全

【第6回】「DX銘柄2022」選定企業の先進的なDXへの取り組みを紹介(金融業/不動産分野 編)

DX銘柄制度における活動状況を紹介する本連載。今回は、「DX銘柄2022」選定企業 33社の中から、金融業/不動産分野などで選ばれた7社を紹介します。それぞれの業界・企業が抱える課題についてデジタル技術を活用してどのように解決しているのかを見ていきましょう。

金融業/不動産分野でDX認定企業に選ばれた7社

金融業/不動産分野で「DX銘柄2022」企業に選定されたのは、以下の7社です(企業名の後の業種は「DX銘柄2022選定企業レポート」を基準としています)。

  • ふくおかフィナンシャルグループ(銀行業)
  • 東海東京フィナンシャル・ホールディングス(証券、商品先物取引業)
  • SBIインシュアランスグループ(保険業)
  • 東京海上ホールディングス(保険業)
  • 東京センチュリー(その他金融業)
  • GA technologies(不動産業)
  • 三井不動産(不動産業)

人口減少や長引く超低金利、地方銀行の再編・統合、フィンテック企業の参入など外部環境の急激な変化が続く金融業/不動産分野。またコロナ禍においては、非対面・非接触を前提とする営業活動を余儀なくされるなど、多くの企業で組織やビジネスモデルの変革、業務改善などを迫られていると言えます。

そうした変革を支えるのが、まさしくデジタル技術を活用する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。ただ、金融機関は以前からいち早くデジタル化に取り組んでおり、非常に高度なシステムが導入されていました。その一方で、時代の変化に追いつけていないシステム、いわゆるレガシーシステムから脱却できないケースも見受けられます。

新しい銀行の形をDX実現する取り組み

次世代の銀行の形をめざしているのが、ふくおかフィナンシャルグループ(以下、FFG)です。同行は「お客さまの銀行体験を変革」を掲げ、デジタル技術を活用して銀行自らが変革することで、金融の枠を超えて、新たな価値を提供する、銀行レガシーへの挑戦を続けています。

その取り組みの1つとして、FFGが展開しているのが国内初のデジタル銀行となる「みんなの銀行」です。みんなの銀行は、デジタルネイティブな思想・発想でゼロベースから設計された、全てのサービスがスマートフォン上で完結する次世代型の銀行として位置付けられています。

2021年5月には全国エリアで個人顧客を対象とした銀行サービスの提供(B2C事業)を開始しました。同行では、人や企業、さまざまなコミュニティにとって真に「価値」あるモノを仲介するプラットフォームになること。従来の金融仲介から価値仲介を高めるサービス業として、銀行というビジネスドメインの先にある「新しい金融機能」の提供を通じた新たな価値を創造していきます。

また、地理的制約を受けないデジタルの特性を踏まえ、B2C事業では、従来より銀行が提供してきた「バンキング」機能に加え、日常のお金のやり取りや管理を手軽に行える「ウォレット」機能の2つを、スマートフォン上で一体化させた「デジタルウォレット」を提供しています。

さらに2022年度からは、同行が保有する金融機能・サービスをAPIを介してパートナー企業に提供する「Banking as a service(BaaS)」事業を本格展開。加えて、金融と非金融がシームレスに結び付いたエコシステムの共創を見据えています。

証券会社におけるDXの実例

続いて、紹介するのが証券業をメインとする東海東京フィナンシャル・ホールディングスの取り組みです。

同社は、次世代型の証券ビジネス「証券DX3.0」を施行し、持続的な成長を維持するためにはデジタル化が重要課題であると認識し、積極的に取り組んでいます。具体的には、AI(人工知能)を活用したデータベースマーケティング、相続診断シミュレーションシステム、資産運用分析ツールによる顧客サービスの向上、業務プロセスの変革などを進めています。

また、顧客向けのデジタル金融のゲートウェイとなる機能として、資産管理アプリ「おかねのコンパス」やデジタル地域振興券/地域通貨アプリ、個別のFinTechサービスなどを展開しています。スマホ証券「CHEER証券」やロボアドバイザー、おつり投資、小口ローン、セキュリティ・トークンなど包括的に提供することで、取得データを活用したAIによるマーケティングなどで、協業パートナーが相乗的にサービスを提供し合う「デジタル金融のエコシステム」を構築しています。

同社はさらに、各地の地場産業や中小企業、それを支える地域の金融機関において厳しい環境が続いている中、地方創生にも取り組んでいます。ブロックチェーン技術を活用した地域通貨(デジタル通貨)の発行、当該通貨による企業間取引、法改正を見据えたデジタル通貨による給与払いなどを通して、地域金融機関のDX化と併せて地方創生プログラムへの貢献をめざしています。

保険DXを進める2社の取り組み

インターネット金融をけん引するSBIグループの中の保険事業を担うSBIインシュアランスグループでは、同グループの「顧客中心主義」の徹底という基本的な経営観を踏襲しながら、保険業界のイノベーターとなるためにFinTechやAIなどの先進技術を活用。顧客や販売代理店、従業員それぞれに新しい体験価値を提供する商品やサービスを創出し、保険業のビジネスモデル変革に取り組んでいます。

たとえば、同グループ傘下のSBI損害保険では、社内のあらゆるデータの利活用とAIの全社的導入を進め、事業上のさまざまな課題をデータドリブン・AIドリブンに課題解決する「AIドリブンカンパニー」をめざしています。AIによる保険金の不正請求検知やコールセンターの受電予測など、各種AIプロジェクトの事業化に取り組んでいます。

さらに外部のパートナー企業を介して保険を販売するビジネスでは、その販売プロセス全体のDXに取り組むことで、パートナー企業の業務効率化に貢献し、強固なエンゲージメントの構築を実現しているとのこと。

具体的には、SBI生命保険では団体信用生命保険、SBI日本少額短期保険が家財保険などにおけるペーパーレス化や保険基幹システムとパートナー企業側システム間とのAPI連携、保険販売管理ポータルの実装などに取り組んでいます。

また、東京海上ホールディングスでは「社会課題の解決を存在意義」と定義し、保険事業の再定義を経営戦略と掲げ、データ活用やAI実装をはじめデジタル技術を集約して新たな価値の提供を進めています。

具体的には、社会が自社に解決を期待する社会変化・課題起点でターゲットゾーンを定め、保険金支払いに加え、その前後にある「早期検知・予防」「軽減・再発防止」などで、果たすべき役割を拡大した成長をめざしています。世界46カ国に展開するグローバルでの事業基盤を活用し、世界に類を見ないビジネスモデルの創出を見据えています。

社会課題の解決事業としては、テクノロジーを活用した防災・減災事業の共創を図るべく、多業種14社の参画法人から構成される「防災コンソーシアム(CORE)」を発足しました。2022年4月からは44法人体制で、防災4要素(現状把握・対策実行・避難・生活再建)における課題の抽出と対策研究や、新たなビジネスモデル・ビジネス機会の創出支援など、デジタル技術を駆使した防災・減災事業の構築を進めています。

金融サービスの推進力としてDXを活用

リース事業を展開する東京センチュリーでは、DXの実現を通じて事業パートナーに支持される金融・サービス企業を指向しています。具体的には、長年培った自社事業の強みを生かしつつ、サブスクリプション・DX共創モデルを掲げています。従来までのリース顧客を事業パートナーとして再定義し、その共創活動を中心に事業変革シナリオを実践しているとのことです。

サブスクリプション分野では、オムロンソーシアルソリューションズとの協業プロジェクト「太陽光発電向けパワーコンディショナ定額貸出サービス」を展開。パートナー事業と自社のリース・ファイナンス事業双方のバリューアップを図っています。

また、「攻めのDX」推進活動を支える上で、次世代の基幹システムの構築を進めています。同システムは、DX時代を生き抜くという自社を体現した開発コンセプトの下、グループ会社をはじめとする同業他社を非競争領域においてパートナーとする「共同利用システム」も視野に入れています。2025年を見据えた、DXステージに立つ(DX Excellent Company)ための根幹をなすものと位置付けているとのことです。

不動産DXがもたらすさまざまな価値

不動産業では、GA technologies、三井不動産の2社が「DX銘柄2022」企業として認定されました。

GA technologiesは2013年の創業以来、「テクノロジー×イノベーションで、人々に感動を生む」を経営理念に掲げ、テクノロジーを活用した不動産取引の実現をめざしてきました。自社内の不動産DXだけでなく、不動産業界全体のDX推進に資する他社向けのSaaS開発・提供も進めています。

また、2022年5月の法改正による不動産取引のデジタルシフトを加速させる規制緩和を契機にオンライン上で不動産取引が完結できる「ネット不動産」の普及活動も実施。具体的には、BtoC事業では不動産取引オンライン化サービス「RENOSY」を展開しています。

従来は、紙の資料や対面交渉などオフラインコミュニケーションが一般的だった不動産売買において、営業資料のデジタル化や電子契約システムの活用、AIやビッグデータを用いた業務の効率化を進めています。すでに取引で発生する紙の使用量を1契約あたりで平均452枚を削減しています。

さらに、不動産管理会社・賃貸仲介会社に向けた業務支援サービスを提供し、そこから得られるリアルタイムな物件データベースの構築を実現。不動産賃貸に関するさまざまな業務のDXを推進することで、事業者の働き方や顧客の部屋探し体験の変革をめざしています。

一方、三井不動産では長期経営方針「VISION2025」の3つの柱の1つとして、「テクノロジーを活用し、不動産業そのものをイノベーション」を掲げています。顧客に向けた価値提供のためのDX、ビジネスプロセス効率化のためのDXの2つの方向で、事業部門と、DX本部をはじめとするイノベーション組織が一体となり全事業でDXを推進しています。また、2017年にはIT技術職掌を新設し、ITスペシャリストの採用を強化して、不動産×デジタル人財の育成を図っているとのことです。

さらに、街づくりに積極的にコミットする事業の一環として、千葉県の柏の葉エリアにおけるヘルスケアデータプラットフォーム「柏の葉データプラットフォーム」を構築。行政や大学、医療機関、ヘルスケアサービス、IT、保険会社などが連携するエコシステムによって、データが生み出す新たな価値をデータ提供者に還元するサービスを実装しました。
そのサービスでは、生活者は「スマートライフパス柏の葉」の各種ヘルスケアサービスを優待利用でき、価値を感じたサービスに自身の意思でパーソナルデータを提供。その対価として、サービスによる価値還元が受けられるとのことです。

金融業/不動産分野における課題解決をDXで

コロナ禍における経済活動自粛の過程で、金融業/不動産分野ではデジタル化の遅れが明らかになりました。同領域におけるさまざまな課題は、DXによって解消できる可能性を秘めています。今回紹介した企業の取り組みを参考にして、ぜひ自社のデジタル化を進めてみてはいかがでしょうか。

  • ※ 本内容は2022年6月時点の情報です。
  • ※ 本記事に記載の情報は初掲載時のものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください。

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