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日本企業の先進的なDXの取り組みを選定する「DX銘柄2022」選定企業大全

【第1回】まだ危機感が足りない日本企業、デジタル変革による企業価値の向上に欠かせない「DX銘柄」制度を解説

あらゆる業界で進んでいるはずの「デジタル変革」、まだ危機感が足りない?

経済産業省が2018年に公表した「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」で用いられた「2025年の崖」。この言葉は「老朽化したITシステムを刷新しない限り、2025年以降、毎年12兆円もの経済損失が生じる」という予測を示し、多くの日本企業・組織に警鐘を鳴らしたことは、皆さんもご存じだと思います。それ以降、多くの国内企業が事業成長の柱として「DX(デジタルトランスフォーメーション)」に取り組むようになりました。

ただ、2020年12月28日、新たに中間取りまとめとして経済産業省が公表した「DXレポート2」では、情報処理推進機構(IPA)がDX推進指標の自己診断結果を収集、2020年10月時点での回答企業約500社におけるDX推進への取り組み状況を分析した結果を公表。それによると「全体の9割以上の企業がDXにまったく取り組めていない(DX未着手企業)レベルか、散発的な実施に留まっている(DX途上企業)状況である」ことが明らかになりました。

日本政府もさまざまな支援施策を展開していますが、「DX推進の道はいまだ険しい」と言わざるを得ません。そんな中、経済産業省が展開する施策の中でも、特に関心を集めているのが「デジタルトランスフォーメーション銘柄」(以下、DX銘柄)です。

この連載では、同制度の設立意図や目的、選定メリット、注目される理由などを解説。また、2022年6月に発表された「DX銘柄2022」の結果を踏まえ、選定された企業の取り組みを紹介していきます。今回は、そもそも「DX銘柄制度」とは一体何なのか?その全体概要を解説します。

「DX銘柄」とは、一体どういう制度なのか?

経済産業省は、国内企業の戦略的IT利活用の促進に取り組んできました。その一環として、2015年から東京証券取引所と共同で、中長期的な企業価値の向上や競争力の強化に向け、経営革新や収益水準、生産性の向上をもたらす積極的なIT利活用に取り組んでいる企業を「攻めのIT経営銘柄」に選定しています。

その後、2020年からは、デジタル技術を前提とするビジネスモデルの抜本的な変革や、新たな成長や競争力の強化につなげていく「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に取り組む企業を「デジタルトランスフォーメーション銘柄」として選定しています。

DX銘柄とは、東京証券取引所に上場している企業の中から、企業価値の向上につながるDXを推進するための仕組みを社内に構築し、優れたデジタル活用の実績が表れている企業を、業種区分ごとに選定して紹介するというものです。

「DX銘柄2022」選定企業 33社、「DX注目企業2022」企業 15社を発表

2022年6月7日、経済産業省は東京証券取引、情報処理推進機構(IPA)と共同で「DX銘柄」を選定し、「DX銘柄2022」の選定企業33社を発表しました。また、その中から「デジタル時代を先導する企業」として、中外製薬、日本瓦斯の2社を「DXグランプリ2022」に選定しています。

さらにDXの裾野を広げていく観点で、DX銘柄に選定されていない企業の中から、特に企業価値貢献部分で注目されるべき取り組みを実施している企業15社をデジタルトランスフォーメーション注目企業(以下、DX注目企業)2022に選定しています。

なぜ、DX銘柄を選定する必要があるのか

「なぜ、DX銘柄を選定する必要があるのか」について、その背景をもう少し詳しく見ていきましょう。

日本政府は、あらゆる要素がデジタル化されていく「Society5.0」の実現に向けて、既存のビジネスモデルや産業構造を根底から覆し、破壊する事例(デジタルディスラプション)も現れてきていると捉えています。また、DXは中長期的な企業価値向上において一層重要な要素となりつつあると考えているのです。

こうした社会変化の中で、企業はデジタル技術による変化が自社にもたらすリスク・機会を踏まえた経営ビジョン、ビジネスモデルを策定し、その方策としてデジタル技術を組み込んだ経営戦略をステークホルダーへ示すことが求められるようになりました。

また、経営者自らがリーダーシップを発揮してステークホルダーに情報を発信し、課題の把握分析を通じ、戦略の見直しを図ることでガバナンスの役割を果たすことが重要となっています。

そこで、経済産業省は2020年5月、デジタル技術を活用した企業全体の変革を促していくために「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」(情報処理促進法)を施行しました。また、経営者に求められる企業価値向上において実践すべき事柄をとりまとめた「デジタルガバナンス・コード」の策定と「DX認定制度」の整備を実施しています。

DX認定制度とは、情報処理促進法に基づく認定制度を指します。具体的には、DXに向けた戦略や推進体制などの整備状況を確認し、準備が整っている事業者を認定するというものです。「DX銘柄2022」の選定にあたっては「DX認定の取得」が銘柄の選定条件となり、さらにデジタルガバナンス・コードに紐づく「DX認定」と「DX銘柄」の有機的な連動が図られています。

経済産業省がDX銘柄制度に期待すること

経済産業省では、DX銘柄に選定された企業について、「単なる優れた情報システムの導入やデータの利活用にとどまらず、デジタル技術を前提としたビジネスモデルそのものの変革および経営の変革に果敢にチャレンジし続けている企業」と位置付けています。

また、選定された企業のさらなる活躍とともに、優良な取り組みが他の企業におけるDXの取り組みの参考となることを期待しているようです。

さらに、DX銘柄を発表することは、目標となる企業モデルを広く波及させてIT利活用の重要性に関する経営者の意識変革を促すことにもつながります。加えて、投資家を含むステークホルダーへの紹介を通して評価を受ける枠組みを創設することで、企業によるDXのさらなる促進を図ることを見据えているのです。

DX銘柄企業はどのように選ばれるのか? 選定プロセスを紹介

「DX銘柄2022」は、どのように選ばれたのでしょうか。ここからは、その選定プロセスを紹介していきます。

まず、東京証券取引所上場会社等約3,800社を対象に「デジタルトランスフォーメーション調査2022」を実施。調査に回答した企業401社のうち、「DX認定」に申請している企業が選定対象となりました。

次に、一次評価として「選択式項目」と財務指標によるスコアリングを実施。アンケート調査の「選択式項目」と3年平均のROE(自己資本利益率)に基づき、一定基準以上の企業を候補企業として選定しました。

その後、アンケート調査の「記述回答(企業価値貢献、DX実現能力)について、DX銘柄評価委員が評価した結果を基に、DX銘柄評価委員会による最終審査を経て、業種ごとに優れた企業が「DX銘柄2022」として選定されました。

DX銘柄に選定されることで得られるメリット

DX銘柄に選定されることは、企業にとって、どのようなメリットが考えられるのでしょうか。

まず挙げられるのが「日本政府から“DX推進の面で注目に値する企業”としてお墨付きをもらう」ということです。また、認定企業だけが使用できるロゴをWebサイトやパンフレットなどに掲載可能となります。

DXの実現で求められるITシステム活用や人・組織も含めた組織変革といった、先進的な取り組みを実施している企業としての信頼度が増し、株式市場での注目が集まることにもつながります。つまり、投資家や株主など「さまざまなステークホルダーに対する企業価値の向上にも貢献できる」と考えられるのです。

今後、同制度の認知が広がれば、選定をめざす企業が増えたり、制度自体に対する評価も高まることも考えられます。2022年のDX銘柄選定の対象は、東証上場企業の約3,800社中の401社にしか過ぎません。経済産業省がねらう「日本企業のDX推進を後押し」できるのか、今後の動向にもさらに注目が集まっています。

次回以降、経済産業省が公開するDXグランプリ企業の取り組み紹介や選定レポートの内容を踏まえ、業種ごとに「DX銘柄2022」企業が展開するDX推進施策を掘り下げていきます。

  • ※ 本内容は2022年6月時点の情報です。
  • ※ 本記事に記載の情報は初掲載時のものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください。

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