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「働き方改革」、今まさに真っただ中という企業も多いことでしょう。その一歩として現場で必要とされるのは労働生産性の向上ですが、実は日本の労働生産性はOECD加盟国34ヵ国中21位(2016年度/公益財団法人日本生産性本部調べ)、とりわけホワイトカラーの生産性の低さが指摘されています。一方で、社員サイドからすれば「業務量は減らないのに残業するなと言われる」と板挟みになるケースも。そこで本コラムでは4回にわたり、手軽に実践可能な事務仕事の時短テクニックを紹介します。

過剰サービスは生産性を下げる

サービスはすればするほどいいような気がしますが、実は過剰なサービスはビジネスや職場に悪循環を生みだすといわれています。

実際にあった例として、ある百貨店では、サービスの向上をめざして正月などの休暇を減らし、営業時間を長くしてできるだけ多くのお客様に応対することを実践しました。その結果、スタッフたちには疲労が蓄積し、職場での笑顔や会話、新しいアイデアが減少、本来の目的であったはずのサービスの質が低下してしまったといいます。

このままではいけないと、売り上げの減少を覚悟して休暇を設ける方針に転換したところ、スタッフはいつでも元気に接客できるようになっただけでなく、それまでにはなかったアイデアも生まれるようになったそうです。そして、営業時間が短いにも関わらず、売り上げは例年と同等程度をキープできたということです。

この事例のようなことは、経理の部署内でも起きることは多々あります。ムダな作業に時間と手間を費やし、結局やらなければならないことをするために残業…なんてことはできれば避けたいものです。

仕事を4つに分類し、見える化

一般的に「トヨタ式」と言われている業務分類法では、業務を4つに分類できるという考え方があります。

ここで、「上司の指示で至急プレゼン資料を作成する」という業務を担当したとして、内容を4つに分けてみます。

①主作業
注力すべき作業。ここではもちろん、プレゼン資料の作成ですね。

②付随作業
主作業に伴って発生する作業。ここではプレゼン資料を作成するために資料を集める作業がそれにあたります。

③事前準備・後始末作業
主作業の前後の業務。同様のプレゼン資料がないか調べたり、上司に報告したりする作業が含まれます。

④ムダ・例外作業
主作業が進まない時間。ぼんやりする時間や、雑用が入るといった雑務に対応する時間など

このように業務を分類すると、どこに一番注力するべきかが自然と見えてきますね。①に多くの時間を割くとして、それ以外の時間を②~④にどのように分配していくかということが重要です。

④の時間は少ない方が当然いいわけですが、②や③を省いてしまうと、結局時間のムダが生じてしまうことがあります。かといって②と③に注力しすぎても主作業の質が低下してしまいますね。どこまでが適度で、どこからが過剰なのか、常にそのバランスを意識しておくことが必要です。

過剰サービスはなぜ起こるのか

「おもてなし」や「好意」「厚意」といった言葉に象徴されるように、日本人はどうしても相手が想像するレベルを超えた仕事をしたいと考えるもの。これは日本人のいいところで、対お客様の業務においては必要なことかもしれません。しかし、経理の事務仕事などの社内向けの業務においては、度を過ぎると要求されている仕事の本質からずれてしまうパターンも少なくありません。

この「おもてなし」意識が強すぎることが、生産性を下げるほどの過剰サービスを生んでしまうといわれています。

経理の部署においては、要求されているレベル以上の仕事をすることは個人の自由だと捉えられることもあるとおもいます。そのため、案件ごとにどんなことが求められているのかを、どこに注力するとムダが生じるのかを考える必要があります。いくら出来栄えがよくても、想定の何倍もの時間がかかっていたとしたら、それは単なる「過剰サービス」となってしまいます。

イラスト1

過剰サービスが良しとされる職場では、生産性の低い作業に労力と時間を浪費し、長時間労働で疲弊していくことにもつながりかねません。

大切なのは「ジャスト・イン・タイム」

先ほど紹介した「トヨタ式」では、生産性を評価する際に、「10人で100の仕事をしていたが120できるようになった」ではなく、「10人でしていた100の仕事を8人でできるようになった」ことを評価します。

上記の例では、10人のスタッフは、良かれと思って120の生産をしたわけですが、多く生産された「20」は在庫となってしまいます。それに伴って在庫の管理や運搬などが生じ、たくさんの付随したムダを生むことが予想されるのです。これでは、生産性が上がったとはいえません。

「必要なものを、必要なときに、必要なぶんだけ」―――これがトヨタ式の「ジャスト・イン・タイム」の考え方です。100の仕事をする職場で、ムダの排除や工夫、熟練によって10人で運営していたものが8人で運営できるようになったら、これは生産性が上がったと評価されるというわけです。

経理部門においては、日々たくさんの事務処理をこなす必要があり、さらに平行して年次の決算書や報告書等の業務、突発的な資料作成なども発生します。1つ1つに必要以上の時間を割いていてしまうことは、たとえその出来栄えが素晴らしかったとしても、生産性を下げる結果になりかねません。

イラスト2

経理の仕事全体を、または1つの案件を、例年より少人数、または短時間でやり遂げられるよう目標を設定したいものですね。

さらにトヨタ式で分析! 7つのムダ

徹底的にムダを排除する考え方の「トヨタ式」では、発生しやすいムダとして7つのパターンを提唱しています。これを事務仕事に置き換えてみてみました。

●7つのムダと、その一例
作りすぎのムダ
  • 資料を必要以上に作成する
  • 時代に合わないやり方を続けていて、時間を浪費している
手待ちのムダ
  • 指示待ちになっている
  • 他の担当者と仕事量の平準化ができていない
運搬のムダ
  • 職場の動線が悪くムダな移動が多い
  • 不要な出張や郵送で時間を浪費する
加工そのもののムダ
  • 資料に過剰なアニメーションなど手を加えすぎる
在庫のムダ
  • 必要な作業かどうかを確認せず、作業をして(させて)しまう
動作のムダ
  • 資料が適切にファイリング・共有化されておらず、情報を探すのに時間がかかってしまう
不良をつくるムダ
  • 指示が徹底できておらず、目的に沿わない作業をして(させて)しまう

以上で挙げたようなムダが生じている状況でいくら仕事に注力しても、それは1つの「過剰サービス」となってしまうかもしれません。

指示する側にも意識改革を

ここまで、経理担当者ベースでの過剰サービスを防ぐポイントを解説してきました。もう1つ、過剰サービスで疲弊する状況から脱却するのに必要なもの、それが、上司側の意識改革です。

必要最低限の資料作成をし、それを上司に見せたところ、「クオリティが低い」「もっと凝ったレイアウトにすべき」などの指示が出たとします。その担当者はどの程度まで手を加えればいいのかわからず時間をかけて直すでしょうし、次回から同じオーダーがあれば同じ程度の凝ったものを提出することになるでしょう。こういったやりとりが、過剰サービスの悪循環を生み出します。

指示を出す側も、ムダに時間を使っていないか、その作業は本当に必要なのか、という感覚をもって指示を出すことが大切です。

コラムの締めくくりとして

全4回の「どうすれば上がる? 事務仕事の生産性」コラム、いかがでしたでしょうか。働き方改革という大きな流れの中で、皆様の職場でもさまざまな変化が起きつつあるのではないでしょうか。本コラムの内容が皆様の業務の生産性向上の参考となれば幸いです。

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