「働き方改革」、今まさに真っただ中という企業も多いことでしょう。その一歩として現場で必要とされるのは労働生産性の向上ですが、実は日本の労働生産性はOECD加盟国34ヵ国中21位(2016年度/公益財団法人日本生産性本部調べ)、とりわけホワイトカラーの生産性の低さが指摘されています。一方で、社員サイドからすれば「業務量は減らないのに残業するなと言われる」と板挟みになるケースも。そこで本コラムでは4回にわたり、手軽に実践可能な事務仕事の時短テクニックを紹介します。
職場のチームやグループでは、毎週○曜日は朝から会議、といった具合に、会議を定例としていることが多いですね。喫緊の課題がなくてもとりあえず集まり、雑談で時間を浪費…という状況に陥ってはいないでしょうか?このような会議は、開始と終了があいまいでルーズになりがちで、日々の作業に追われる経理担当者の方にとっても大きな負担となります。
生産性の低い会議が陥りやすいポイントを以下に挙げてみました。こちらでチェックしてみてください。
① 目的がはっきりしない
定例会など定期的に行われる会議は、目的がはっきりしないのに集まるという状況に陥りがちです。連絡事項だけであれば、メールや、第一回「書類作成のムダを減らす」でご紹介したビジネスチャットでも代用することができるかもしれません。わざわざメンバーが集まらないといけない議題がなければ、思い切って会議をなくすということも選択肢の1つです。
② 時間がはっきりしない
会議の開始と終了の時間があいまいな会議では、だらだらと意見を述べ合ってしまい、結論も出しづらくなります。緊張感もないので、いい意見やアイデアが生まれにくい状況となり、生産性が低くなります。
③ 不要なメンバーが含まれている
会議に参加するメンバーは、その会議ごとにきちんと定義されるべきです。機械的にチームのメンバーを会議のメンバーとすることが果たして効率的なのか、また、アイデアを生むのに他に必要なメンバーはいないかどうか検討する必要があります。
④ 資料が多く、読み込みに時間がかかる
会議で使う資料が事前配布されず、会議が始まってから配布される場合、まず資料を読み込むところから始め、それから各自考えるという流れになるため時間がかかり、話し合いに時間を割くことができず、議論が深まりにくくなります。
では、生産性の高い会議とはどのように行うといいのでしょうか。そのポイントを紹介します。
最初に肝心なのは会議の目的です。何を決める会議なのか、どんなアイデアが必要なのかを確認し、それによって日時やメンバーを考えます。議題によっては、会議という手段よりメールや電話、第一回「書類作成のムダを減らす」にてご紹介したビジネスチャットなどで伝達する方が適切な場合もあるので、会議の必要性を含めて検討するといいですね。
日時は、メンバーが参加しやすいだけでなく、どれくらいの時間を使うのかきちんと考えて設定しておく必要があります。30分程度で済むものもあれば、アイデアをしっかり出して結論まで到達するのに1時間以上かかる場合もあります。長くても集中力が保てる90分程度までにし、議論に集中すべき時間をしっかり区切っておくといいでしょう。
さらに、参加すべきメンバーも会議ごとに考えることが必要です。アイデアを出すことが得意な人、まとめるのが得意な人、その分野に長けている人な ど、チーム外からでも必要な人材にはオファーしましょう。
また、会議を進行し、参加者全員が納得できるような結論に導く役割である「ファシリテーター」を設定する必要があります。ファシリテーターは会議の目的を把握した上で、全員の意見を引き出し、会議を進行していきます。誰がこの役割を担うかは毎回きちんと設定しましょう。(ファシリテーターの役割については、後述します)
会議の2~3日前までにはアジェンダを作成・共有し、会議の目的を明確にしておくことも重要です。「この点について問題点を出しておいてください」、「こういう点についてアイデアを聞きます」といった、メンバー各自が事前にやっておくべきことを連絡しておくと、よりスムーズに会議を進行できるようになるでしょう。
アジェンダには、会議の議題や日時、参加者の役割などを明記し、それぞれが自分の役割を確認できるようするのがおすすめです。会議がどういった手順で進行するか、おおよその流れも書いておけば、メンバーに会議のイメージを共有することができるでしょう。
【アジェンダの例】
会議アジェンダ
●議題…「経理業務の効率化について」
●日時、場所…○月○日 10時~11時30分 ○○○会議室において
●メンバー…ファシリテーターAさん、議事録Bさん
タイムキーパーCさん、Dさん、Eさん、Fさん
●進行案
10:00~10:10 現状の実績報告
10:10~10:30 問題点の洗い出し
10:30~10:50 問題の原因分析
10:50~11:20 施策アイデア抽出
11:20~11:30 まとめ、総括
※議題に関する意見を各自まとめておいてください。
こういった会議資料は、紙での配布ではなくオンラインで共有すると誰でも手軽に確認しやすくなります。オンラインのクラウドストレージ上やビジネスチャットを利用し、PCだけでなくタブレットやスマートフォンでも確認できるようにすると便利です。
さて、前出の「ファシリテーター」は生産性の高い会議のために、どのような役割を担うのでしょうか。
会議において参加者全員から意見やアイデアをうまく引き出し、それらをまとめて全員が納得できる最終的な合意へと導くことを「ファシリテーション」といいます。自己の意見を主張するのではなく、あくまで中立的な立場から会議の進行をサポートすることで、その役割を担うのが「ファシリテーター」です。具体的には以下の4つの役割を担当します。
①会議の場をつくる
日時や場所の設定はもちろん、会議当日の雰囲気作り、ルール作りも含みます。
②メンバーから意見を引き出す
メンバーからの自由な意見を聞きます。
③意見を整理し、絞り込む
出た意見をロジカルに分析し、結論への道筋を立てます。
④まとめる
参加したメンバーが納得できる結論を出し、会議を終了します。
特に②と③は苦労するポイントです。【経理業務の効率化を考える会議】を想定し考えてみましょう。
参加者Aは意見を言えるタイプのようですが、参加者Bは周りをうかがうばかりで、積極的な発言をしないタイプです。また、参加者Cはこの中でも立場が上で、DはCの意見が気になっているようです。
このような状況で、ファシリテーターはそれぞれのメンバーがアイデアを付箋紙に書くというルールを採用しましした。
付箋紙に書いたアイデアはどんなに細かなルールでも1つ1つを平等に扱うことでき、不要なバイアスを取り除くことができます。意見を積極的に発言しないタイプの参加者Bの意見や、Cの意見に左右されていたDも意見を出すことができました。
またこの方法だと、出そろった意見を分析し結論を導き出すまでの過程においても、意見を整理しやすく便利です。以下のように意見を分類すれば、さらに議論を深めることができます。
ファシリテーターの進行方法によって、会議はこのように変化します。ファシリテーターの役割以外の参加者も、ファシリテーターが考えた方法やルールに沿って、建設的な意見を出すことで、会議の生産性は格段に上がります。
会議で意見をまとめて結論が出てからやることといえば、アクションプランを立てることです。その結論に沿って、各自がどういった役割で動くのかを確認し合います。これらを議事録にまとめたり、または会議中に使用したホワイトボードなどを撮影することで、記録します。
また、会議の総括もするといいでしょう。会議の目的は達成できたのか、その過程はスムーズだったか、十分に協力できたか、十分な議論ができたか、などを総括し、それも議事録として記録しておくといいでしょう。各自がこの総括を参考に、会議のスキルが上がるよう工夫できるといいですね。
さて次回は、「業務の属人化を防ぐ」がテーマです。○○さんでないと進まない…といった業務、多くなってはいませんか? 属人化を防ぐコツを紹介します。
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