日立グループとのシナジーを強化して、社会に新たなイノベーションを起こしていく。
小河 「これから強化すべきCSR活動」の2つめの話題として、ITの力を生かして社会にどう貢献していくかという点についてご意見をいただければと思います。
小塚 当社が社会において、より大きな責任を果たしていくためには、環境、エネルギー問題、少子高齢化、医療、教育、災害危機対応、地域活性化などの課題に、本業であるITを活用して解決の指針を示し、持続可能な社会づくりに貢献していかなければならないと考えています。もう少し具体的にいうと、災害復興で注目されているBCPの構築や地球環境と共生する経営モデルの構築、高齢者の方々が暮らしやすい街のインフラ構築、農業や漁業に関する新たなビジネスモデルの創出、雇用創出に向けた新事業の創造などです。こうした課題認識は日立グループ全体で共有する、ある種の価値観でもあり、未来社会に向けて新しい顧客価値を見出していく、すなわち社会にイノベーションを起こしていくことが当社および日立グループのミッションだと理解しています。
小河 お話しいただいたような取り組みに対する評価、あるいは期待という点で何かございますか。
足達 2つの観点があると思います。1つはグループ力をより発揮していただきたいということです。日立グループの中には、エネルギー関連の大きな事業もありますし、交通インフラ事業もあります。そうした幅広い事業をどうつなげて社会課題の解決に貢献していくか。一例を挙げるとBEMS(Building Energy Management System)、HEMS(Home Energy Management System)と呼ばれているような、デマンドサイドのエネルギー制御の仕組みがありますが、こうしたシステムはITの力なくしては実現不可能です。
一方で、原子力発電など、これまでの分散型ではないエネルギーシステムとの一種の摩擦みたいなものはあるのかもしれませんが、日立グループはそれらも含めた総合力を持っていますから、それを乗り越えていただき、次世代の省エネ社会づくりに挑戦していただきたいと思っています。
2つめは、先ほど新たな農・漁業モデルを構築していくというお話がありましたが、身近な暮らしをより豊かにする仕組みづくりをいろいろな角度から推進していただきたいと思います。
受け売りになりますが、地方の高齢者の方々がPCを使って、裏山で採れる葉っぱを都内の料亭に出すビジネスで大きな成功を収めているという例があります。ITを活用することで地方と都市を結ぶバリューチェーンがいとも簡単にできる。これはやはりイノベーションであり、こういう形でのIT利用の余地は、これまでも議論されてきてはいますけれども、地域の医療連携のシステムも含めてまだまだヒントはあるのだろうなと思っています。
小塚 日立グループのシナジーの重要性ということをご指摘いただきました。確かに日立グループには当社のようなサービス系の会社に限ってもエレベーターのサービスを提供している会社や、電力・エネルギー系のバックエンドのシステムを手がけている会社など、いろいろあります。そういう企業と横連携という形でBEMS、HEMSに取り組んでいるのですが、ほかにもトライアル、インキュベーションのような状態のプロジェクトもいくつかあります。こうした取り組みをより強化していくことで、当社が社会により貢献できるということだと思います。
小河 関さん、いかがでしょうか。
関 先日、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された国連の持続可能な開発会議(リオ+20)に行って参りました。そこで世界の保険会社27社ぐらいが署名して、公表された持続可能な保険原則「PSI(Principles for sustainability Insurance)」について、当社も起草会社の一員として賛同を表明しました。原則に則って行動するとはいっても、保険会社単独でできることは非常に限られています。そこで、いろいろなセクターとコラボレーションをする中で、保険会社としてのリスクヘッジ、リスクマネジメント機能をうまく生かしていきたいと考えています。IT会社も大きな仕組みづくりができるという強みがありますので、ぜひそうした機能を生かし、さまざまな企業や他のセクターとも戦略的なアライアンスを組んで、新しい挑戦をしていただけたらと思います。
小塚 確かに他業種とのコラボレーションという点でも、大いにチャレンジしていく価値があると考えています。
関 さらに、これはリオでも話題になっていた大きなテーマですが、今後のライフスタイルをどうやって変えていくのかという話があります。持続可能な消費(sustainability Consumption)という新しいライフスタイルを、どうしたら実現できるか。いろいろなアプローチがあると思いますが、我々の暮らしを変える何らかの大きな仕組みを構築していくという点で、ITは一つの切り札になり得るのではないかと思います。
あと、近年は温暖化の影響もあるのでしょうが、世界各地で豪雨や洪水、干ばつなどの自然災害が増加しています。こうした課題に対して、損保ジャパンでは、タイの農村地域の人々を対象に2年前から「天候インデックス保険」という干ばつに備えたマイクロインシュアランスを始めていますが、そのポイントとなるのは気象観測所のデータです。観測所のデータに基づいて保険金を支払う訳ですが、途上国では観測所の数が少なく、あってもデータがデジタル化されていないなどの問題があるのです。気象観測データの収集には衛星を活用したり地上のセンサーを使ったりするなど、いろいろなやり方があると思いますが、情報解析を含めてITが果たす役割は大変に大きいものがあると思います。ちなみに、こうした分野は、今まで公共政策として国や地方自治体がやっていて、民間企業の役割ではないという一般的な理解があったと思いますが、実際に物事を進めていくのは民間企業だったりNGOだったりします。そこに企業、民間の力をどんどん注入していかなければいけない状況になってきているわけです。そんな視点を持っていただくと、取り組みのアイデアが広がっていくかと思います。
小塚 気象観測データなどのビッグデータ関連のお話については、弊社がもつデータセンターやクラウド、解析技術などを活用することで大きな可能性があると思います。クラウドというのは、いろいろな意味でライフスタイルを変えたり、あるいは高齢者の方々にいろいろなバリューを与えていくサービスプラットフォームになったりする可能性がありますので、より取り組みを進化させていきたいと思います。
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