ISO26000に基づく「CSR課題」を起点に、
社内外のステークホルダーとの対話を通じて「CSR3カ年ロードマップ」を策定。
小河 次に「日立システムズらしいCSR」を進めていくための、2つめの観点についてお話いただけますか。
(株)日立システムズ
CSR本部 ブランド・CSR推進部長
吉田 憲弘
吉田 新会社の取り組み課題を新しい観点から見出すために、また事業のグローバル化をより強力に進めていくことなどを踏まえて、改めて計画を立案、推進しています。
まず2011年11月、主要部門の従業員が外部の有識者とディスカッションを行い、ISO26000の記載項目を含めた「CSR課題」を整理していきました。加えて、社外ステークホルダーへのアンケート調査も実施し、2012年6月までに「日立システムズが取り組むべきCSR課題」を網羅的に挙げていきました。その上で、今回のダイアログもその一環ですが、今後はステークホルダーの皆さまの意見をお聞きしながら、「CSR3カ年ロードマップ」や「マテリアリティマップ」の策定を進めていく計画です。なお、ロードマップは、部門ごとに3年分策定する予定で、これらの項目は中期経営計画に組み込み、経営との一体化を目指していきます。
関 課題の洗い出しやロードマップの策定に関して社内外のステークホルダーとの対話を重視するなど、全体のプロセスについては大変誠実に、手順を踏んでやっていらっしゃる印象を持ちました。ちなみに損保ジャパンでも、従業員を巻き込んだダイアログを定例的にやっていこうということで、社内ダイアログという呼び方をしていますが、これはかなり重視しています。今年3月には中国の現地法人、損保ジャパンチャイナでもダイアログを開催しました。期待以上の成果というか、若い従業員がいろいろな意見を述べ、ブレーンストーミングのような形でさまざまなアイデアを出してくれて非常に有意義でした。若手を含めた従業員がディスカッションに参加することによって、いろいろなアイデアが広がり、問題意識も共有できます。
それから、ISO26000を活用した取り組みについて、あえて留意点をいわせていただくと、細かな点まで含めると数百にもなるガイドラインの一つひとつにあまり捉われ過ぎないようにした方が良いのではと、私自身は思っています。書いてあることをそのままというより、むしろそこから何かヒントを得る、触発されながらほかの取り組みを考えるなど、意図的にそういう見方をするなどして、自社にとってより重要な活動を実践するツールとして活用していった方がいいのではないかと思います。とかくリスト化してチェックしていくと、そこに捉われてしまいがちです。策定に関わった人間が妙なことをいうと思われるかもしれませんが、そうなると自由な発想が起きにくくなり、CSRにとって大切な創造性が失われてしまいます。
足達 私も関さん同様、項目に捉われ過ぎない方がいいと考えています。ではどうすればよいのか。私は2つのポイントに留意すべきだと考えています。
1つは課題抽出の部分で、多くの日本企業は会社として何を目指したいのかというメッセージ性のある言葉を発することなく、要請だけを受け止める傾向があると思っています。そうした会社が「世の中がこういっているからこんなこともしなければならない」とCSR活動をリスト化して取り組んでいくと、人間と同じで「では、あなたは何がしたいのですか?」と問われた時に答えに窮する、存在感を示せないという状況になりかねないのです。
ポイントの2つめがマテリアリティに関連する事柄なのですが、ISO26000の「社会的責任」のくだりで「影響(インパクト)」という言葉が出てきます。あえてそこに「好影響」「悪影響」と書いてある訳ではないですが、企業が事業をやっていく上では一部のステークホルダーや地域社会に避け難い悪影響をもたらしてしまう側面もあります。そうした側面を含め、企業として何ができるか、どうしたらよいのかを考えることがとても重要になります。ネガティブな影響に対して何に配慮していくのか、また、ポジティブな面ではその影響をどう広げていくのか、そういう具体的な影響と活動を正面から議論することで、その会社の目的意識がより鮮明になり、かつ従業員のベクトルも一致してより良い方向に向かっていけるのではないかと思います。
藤井 ISO26000の項目に捉われ過ぎると、「自由な発想が失われ、自社にとって重要な取り組みが見えてこない」という関さんのご意見、「企業としてのビジョンや存在意義がみえてこない」という足達さんのご意見、お二方のご指摘を念頭において取り組んで参ります。
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