2012年8月20日掲載
中小企業、特に中堅(従業員数十人規模)以下の企業では、IT化が進んでいない企業が多いと言われています。いわゆる、システムを自社開発するのは大げさ、しかし市販のソフトウェアでは不十分というゾーンなのですが、最近の動きについてはどうでしょうか。
スマートIT株式会社
代表取締役 大磯 岳士氏
業種・業態によっても違うので一言では言えませんが、メールやグループウェアといったクラウド型のコミュニケーションツールを使ってみようという意識が高まりつつあるように感じます。
TwitterやFacebookといったコミュニケーションツールが爆発的に広まったことで、それらを使いはじめた企業がより密度の濃いコミュニケーションや作業効率の向上を実現するためのITツールとして、高機能なクラウド型のメール・グループウェアに関心を持ち始めているように思います。
こういった傾向は、比較的パソコンを使うことの多い業種・業態で顕著です。5店舗で正社員10人程度のレストランでは、そのニーズは少ないと思いますが、5~6人の事務仕事中心のオフィスでは、かなりニーズが高いと言えます。
昨今ではスマートフォンの普及に伴い、その連携性や効率性がかつて以上に認知・評価され、営業担当や1日中外出しているような社員が多い業種においても、そのニーズが高まっています。セキュリティ面でも、自社にサーバーを置くよりクラウド型サービスを利用する方が、技術レベルで言えばはるかに安全と言えます。
さらに東日本大震災以降は、BCP(事業継続性)という観点からも大事なデータこそクラウドに置いて、万が一の災害から守るという考え方も浸透してきているように思います。
一方で、クラウド型ITサービスのデメリットもあります。最も顕著なのは、カスタマイズ性が低いということです。クラウド型ITサービスでは、一つのハードウェアやネットワークを複数の企業が利用するので、クラウド型ITサービスの機能に合わせて自社の業務プロセスを考え直さなければならない場合もあるということです。
このことは、カスタマイズをすればその分高コストになり、提供されている機能で間に合わせれば費用は安くなると言い換えることもできますので、結局のところ費用対効果次第と言えます。
しかし、本当に問題なのは、クラウド型ITサービスが自社の業務にとって必要なものなのかどうかを判断するところ、つまりIT戦略です。数十人規模の企業などは、大企業の宣伝に踊らされて「きっと良くなるに違いない」と直感的に導入してしまうケースが少なくありません。そのような場合、せっかく最新のITサービス(ITツール)を導入しても、今までのメールやファイルサーバーの使い方となんら変わらない使い方に終始してしまい、「宝のもちぐされ」状態になり、その効果を全く実感できないということにもなりかねません。
また、社内システム以外でいまだに中堅以下の企業の関心が高いのは、「ホームページを活用して、集客を高めたり、案件数を増やすことができないか」ということです。相変わらず経済環境は良くないですし、やはり売上に最も貢献できるITツールとして、ホームページの作成とその活用が認知されていると思います。
これからITツールを積極的に活用したいと考えている企業は、まずは目的を明確にし、無料もしくは低コストで使えるクラウド型サービスを試しに使ってみるようなことから始めると良いのではないでしょうか。
そして、社員が使いこなすようになったら、追加費用を払ってより高機能なサービスへ移行し、よりIT活用度を高めるというように、段階的に高機能なITへ移行することをお勧めします。
社員がITを使いこなせるようになってくると、ITでこんなことをして作業を効率化できないだろうか?といった、より高度なニーズが自然と芽生えてくるものです。このように、社員のIT成熟度に合わせてITを導入していけば良いのだと思います。
ITコーディネーターの考え方は、「身の丈に合ったITツールを導入すべし」です。初めから高度なITツールを使いこなすことは、誰にとっても困難です。
車の運転に例えると、免許を取ったからといって、いきなり4トントラックやF1カーを運転できないのと一緒です。
大磯 岳士
スマートIT株式会社 代表取締役
好きな言葉は「敬天愛人」:常に公明正大、謙虚な心で仕事にあたり、天を敬い、人を愛し、仕事を愛し、会社を愛し、国を愛する心。
社名「スマートIT」は「中小企業の皆さまがITをスマートに(賢く)使いこなすことによって、新たな価値の創造を通じてビジネスを活性化したり、業務プロセスの効率化などによって経営課題を解決するために貢献したい」という思いから命名。(http://www.smart-it.jp/)
【その他の主な活動実績および報奨】
日立システムズは、システムのコンサルティングから構築、導入、運用、そして保守まで、ITライフサイクルの全領域をカバーした真のワンストップサービスを提供します。