ページの本文へ

Hitachi

株式会社 日立システムズ

政府のIT戦略に見るデジタル変革のポイント

【第4回】コロナ禍で見直された「政府の新IT戦略」で変わる私たちの社会
~災害対応・インフラ基盤・法規制は今後どうなる?

世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、経済・社会や私たちの価値観に大きな変容をもたらしました。これまで日本政府は「世界最先端のデジタル国家」になることを掲げ、IT戦略を推進してきました。しかし、コロナ禍でのさまざまな変化を受け、その戦略を見直しています。

この連載では、政府が掲げるIT新戦略のポイントを紹介していきます。現在、政府は感染拡大抑制後の経済再興に向けて、ピンチをチャンスに変え、デジタル化を社会変革の原動力とする「デジタル強靱化」を掲げています。今回は、デジタル強靱化の具体例として「災害対応」「社会基盤の整備」「規制のリデザイン」を取り上げます。

「防災×テクノロジー」で激甚化する災害に効果的・効率的に対応

自然災害大国とも表現される日本。近年も激甚化する災害が発生しています。また、感染症と災害が複合的に発生する事態を想定し、情報通信技術や新たなサービスを活用した強靱な社会基盤の構築が求められています。

新IT戦略では、災害対応業務の効率化・省力化を可能にするAI(人工知能)やSNS、衛星などの先進技術の研究開発を進めるとともに、被災者支援制度のデジタル化や地上の通信インフラが途絶した場合でも、準天頂衛星経由での情報収集や配信などの通信の冗長化などを進めています。

また、「防災×テクノロジー官民連携プラットフォーム」を設置し、地方公共団体などのニーズと先進技術とのマッチングを支援したり、活用事例の横展開などを図ることで、効果的な活用事例の創出や望ましい防災システムの在り方を検討していくことが掲げられています。

たとえば、AIを活用した防災チャットボットでは、一人ひとりの状況に応じて適切な避難行動を促す情報を提供し、住民から現地の災害情報を収集できるような取り組みがなされています。また、シェアリングエコノミーを活用して、避難場所や食料、支援物資など災害支援サービスの提供を実現するため、モデル防災協定の検討、周知活動を実施しています。

さらに、マイナンバーを活用した避難所入退所情報の収集、被災者台帳の整備、罹災証明書の申請などの被災者支援制度のデジタル化を進めていきます。

社会構造の変革や行動変容の前提となる「デジタル社会基盤」の整備

新IT戦略では、オンライン化やリモート化による社会構造の変革や、人々の行動変容によってデジタル強靭化を進めることをめざしています。その前提となるのが、デジタル化された社会基盤を整備することです。

社会基盤の整備への取り組みとしては「デジタル・ガバメント」「インフラの整備」「デジタル格差対策」「データ流通環境の整備」「セキュリティ・トラストの確保」「災害対応能力の強化」などが挙げられます。

行政のデジタル化では、各府省が「デジタル3原則(デジタルファースト、ワンスオンリー、コネクテッド・ワンストップ)」を徹底し、すべての行政手続のデジタル化をめざしています。また、必要な情報システムの整備では、迅速かつ柔軟に進めるために原則「クラウド・バイ・デフォルト」の徹底を掲げています。

地方公共団体では、すべての市町村で「マイナポータル」「ぴったりサービス」の活用によるオンライン化を促進していきます。また、地方公共団体と事業者との手続きのオンライン化や地方公共団体の業務プロセス・システムの標準化やクラウド化、AI活用などを促進する予定です。

次世代インフラの整備としては、次世代移動通信規格「5G」や「ローカル5G」の早期展開や産業利用、公的利用への拡大を進めるとともに、5Gの次の世代「Beyond 5G」を産学官連携で推進するための組織である「Beyond 5G推進コンソーシアム」と「Beyond 5G 新経営戦略センター」が設立されています。

また、デジタル格差対策としては、光ファイバーや公衆無線LAN環境、家庭からの通信環境にも配慮した児童生徒の1人1台端末の整備などを進めます。さらに高齢者がICT機器・サービスの使い方を身近に相談できる「デジタル活用支援員」の設置、障がい者向けICT機器・サービスの情報アクセシビリティ基準の自己評価、生活困窮者への必要な支援策の検討などでアクセシビリティの確保をめざします。

官民一体のデータ利活用に向けた制度やデータ流通環境を利用者や国民の信頼を確保したうえで進めるともに、テレワークのセキュリティ確保や中小企業のサイバーセキュリティ対策の強化を図っていきます。

また、安全で効率的な人と物の移動を実現するため、高度な自動運転技術の早期実用化に向け、官民が連携した研究開発や実証実験を推進していきます。

その他にも、急激な需給バランス変化や人手不足に直面する農林水産業や、国民生活や産業活動に不可欠な物流におけるサプライチェーンの効率化、建設分野におけるデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進、裁判関連手続きのデジタル化などが重点分野として掲げられています。

デジタル活用を促進させるため「各種規制の見直し」が急務

これまで、デジタル活用においてはさまざまな必要性から一定の制限が設けられてきました。しかし、社会状況の変化を受け、デジタルの活用を前提として規制を再設計(リデザイン)することで、強靱なデジタル社会を構築する必要性が出てきました。

医療分野では、非常時の時限的対応として解禁された「初診を含むオンライン・電話による診療」について、検証結果を踏まえた適切な措置を検討しています。また、教育現場でも特例的措置を経て、今後の同様の緊急事態における「学び」の継続、遠隔教育の有効な活用を可能とする環境整備の方向性を検討していきます。

さらに、これまで「書面」「押印」「対面」が原則だった各種の申請手続きや承認フローに関する規制や制度を見直し、テレワークの推進と合わせたデジタル化を促進するよう規制改革を図っていく予定です。

デジタル強靱化社会の実現に向けては、ここまで紹介してきた各分野でさまざまな社会実装や改革への検討が進められています。

次回は、デジタル強靱化社会を先導する社会実装の例として、社会的課題を解決するための次世代社会インフラとしてのデータプラットフォームの取り組みなどを紹介します。

※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。

日立システムズは、システムのコンサルティングから構築、導入、運用、そして保守まで、ITライフサイクルの全領域をカバーした真のワンストップサービスを提供します。