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政府のIT戦略に見るデジタル変革のポイント

【第2回】政府のIT新戦略の基本コンセプト

世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、経済・社会や私たちの価値観に大きな変容をもたらしました。日本政府は「世界最先端のデジタル国家」になることを掲げ、IT戦略を推進してきました。しかし、コロナ禍でのさまざまな変化を受け、その戦略を見直しています。

本コラムでは、政府が掲げるIT新戦略のポイントを紹介していきます。現在、政府は感染収束後の経済再興に向けて、ピンチをチャンスに変え、デジタル化を社会変革の原動力とする「デジタル強靱化」を掲げています。今回は、IT新戦略の全体像を解説します。

IT新戦略の基本的な考え方は「強靱なデジタル社会を実現すること」

政府のIT新戦略の基本的な考え方は「国民が安全で安心して暮らせ、豊かさを実感できる強靱なデジタル社会」を実現することです。

日本政府は2016年ごろから、日本の再興戦略のひとつとして「Society 5.0」構想という今後めざすべき未来社会の姿を掲げています。

IT新戦略では、そうしたSociety 5.0時代にふさわしいデジタル化によって「国民の利便性を飛躍的に向上させること」「国や地方自治体、民間の効率化を徹底すること」「データを新たな資源として活用し、すべての国民が不安なくデジタル化の恩恵を享受すること」をめざしています。

コロナ禍で明らかになった課題と、ニューノーマルを見据えた萌芽

新型コロナウイルス感染症の拡大は、日本が抱えるさまざまな課題を浮き彫りにしました。デジタル化に関する問題もそのひとつです。コロナ禍におけるデジタル化やオンライン化の取り組みのなかでは、各種給付金の受給申請手続きや支給作業の一部に漏れや遅れが発生するなど、行政対応に不備が生じました。

また、今後のニューノーマル(新常態)を見据えた萌芽とも言うべき傾向も見てとれます。人との接触や移動が制限されるなかで、テレワークや遠隔医療、オンライン教育などが広がり「職(Work)と住(Life)の近接化」が起きています。今後は地域や家庭が仕事、教育、生活など複合的な役割を担う場として存在感を増すことが予想されています。

さらに、グローバル経済の再構築も新たな傾向のひとつです。これまでのサプライチェーンは「効率性」を求められてきましたが、今回のコロナ禍では、サプライチェーンの一部で分断が起こると多方面に渡って影響が及ぶなど、有事におけるぜい弱性が露わになりました。たとえば、医療現場に欠かせない製品や付加価値の高い素材の入手先が特定地域へ過度に依存すれば、リスクが高まります。

IT新戦略では、こうした新たな傾向を踏まえつつ、デジタルを徹底活用することでソーシャルディスタンスを確保しながら、経済・社会活動を維持して経済が成長可能となるような「デジタル強靱化社会」の構築をめざしています。

コロナの経験から新IT戦略に盛り込まれた2つの視点

コロナ後のニューノーマルの視点として、IT新戦略では「対面・高密度から『開かれた疎』へ、一極集中から分散へ」「迅速に危機対応できるしなやかな社会へ」の転換を図ることが重視されています。

開かれた疎という観点では、テレワークをはじめとするリモート対応が常態化・高度化することで、場面に応じて対面とリモートとの適切な組み合わせを模索しています。時間や場所を有効に活用できる新しい働き方が定着することで、一極集中の是正や地域の再興、地域からの発信、新しいエンターテインメントの創造が期待されます。

また、地球規模で甚大なパンデミックが発生したことで、今後も同様な事態が起こり得ることを想定し、柔軟に危機対応できる社会の在り方が求められるようになりました。たとえば、「危機発生時に個々人の状況に応じて、必要な人に必要な支援を迅速に届けることを可能にする仕組み」や「社会経済環境が激変した際に、需要の高まる職種に柔軟に労働力をリバランスさせる仕組み」などが考えられています。

デジタル強靭化社会の実現に欠かせないこと

日本政府は、2019年6月に閣議決定された「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」において、国民の生命を守り経済を再生するための「データ利活用」、接触機会を減らし利便性を向上させるための「デジタル・ガバメント」を二本柱としてデジタル化に取り組んできました。

新IT戦略では、その方針を継承しつつ、社会・価値観の変容がもたらすニューノーマルの社会への移行を進める方針です。

また、デジタルを徹底活用する社会では「デジタルにアクセスできないことが深刻な格差を生んでしまうこと」についても懸念を示しています。そうしたデジタル格差が起きないように、都市部・地方部を問わない無線通信などのネットワークインフラの再構築、データ活用におけるプライバシーの保護やサイバーセキュリティを確保する「AI/セキュリティ対策」などの基盤技術といった「新しいデジタル・インフラ」が必要不可欠です。

さらに、働き方改革やくらし改革、経済活動・企業活動への支援、人材育成・学び改革など、社会・価値観の変容に応じた「社会基盤の整備/規制のリデザイン」も求められています。IT新戦略では、それらの重要性を強調するとともにデジタル強靭化社会の実装に取り組むことが明記されています。

次回からは、デジタル強靭化における各分野の具体的な取り組みを紹介していきます。

※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。

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