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株式会社 日立システムズ

政府のIT戦略に見るデジタル変革のポイント

【第1回】新型コロナで一変した社会・価値観~緊急事態下におけるデジタル化で浮かび上がった課題とは?

世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、経済・社会や私たちの価値観に大きな変容をもたらしました。日本政府は「世界最先端のデジタル国家」になることを掲げ、IT戦略を推進してきました。しかし、コロナ禍でのさまざまな変化を受け、その戦略を見直しています。

本コラムでは、政府が掲げるIT新戦略のポイントを紹介していきます。
今回は、2020年3月に出された緊急事態宣言以降のデジタル化の状況と課題を振り返ります。

サプライチェーンの分断や物不足、休業など経済活動に大きな打撃が

コロナ禍では、世界中の多くの都市が封鎖される事態(ロックダウン)が発生しました。その結果、工場の閉鎖による部品や原材料の生産停止、国外への人の移動や輸出制限などによって、複数の国や地域をまたがる「グローバル・サプライチェーン」の一部が分断されました。特に製造業の事業活動に大きな影響がありました。また、医療用品のような緊急物資の需要が急激に拡大し、特定の商品が入手しづらくなることも社会問題となりました。

2020年4月から5月に発令された1回目の緊急事態宣言では、生活の維持に必要な場合を除いた外出の自粛や学校の休校、百貨店や映画館、各種イベントなど多くの人が集まる施設の使用制限といった感染の防止に必要な協力が要請され、企業の経済活動の停滞にもつながってしまいました。

巣ごもり消費でEC市場が拡大、「都市から地方へ」居住地へのこだわりにも変化

外出自粛に伴って「家の中での生活を楽しむ」という消費活動“巣ごもり消費”の需要が拡大しました。その結果、インターネット通販やケータリング、デリバリー、宅配購入などの電子商取引、ネットの利用が急増しています。

また、企業が大都市にオフィスを構えることの意味に疑問を持ち、地方へ移転するという事例も増えました。さらに、都市部の若い世代を中心に「地方移住」への関心も高まっています。

テレワーク普及や脱ハンコ文化で「働き方改革」は急速に進む

緊急事態宣言が出された地域を中心に「テレワーク」勤務が推奨され、多くの企業が緊急導入しました。また、従業員間の社内ミーティング、取引先や顧客など社外の人との会議や打ち合わせなどに「Web会議」ツールが広く活用されました。

ただ、業務内容によってはテレワークが難しい業務があることが顕在化し、契約書や稟議書などの書類の押印のために出社せざるを得なくなる「ハンコ出社」がテレワークの思わぬ壁となりました。それを受けて、社内の承認業務フローの見直しや取引先との契約の電子化など「脱ハンコ」「ペーパレス化」の動きが加速しています。

行政機関や教育現場に多くの混乱が出た

国の行政機関や多くの地方自治体では、全国民を対象とした「持続化給付金」をはじめ、個人向け・企業向けの各種支援策の申請対応に追われました。「行政手続きのオンライン化原則」への取り組みが進みましたが、申請システムなどにてさまざまな不具合が発生し、給付金の遅延などが問題視されました。また、国・地方で運用しているシステムの不整合が顕在化するなど、標準化・共通化されたシステム基盤を構築する必要性が高まっています。

また、学校の臨時休業や全国的なスポーツ・文化イベントが続々と中止されるなど、新型コロナは児童・生徒や大学生を巻き込んで教育の現場にも多くの混乱をもたらしました。学習機会を提供するために「オンライン授業」が全国的に展開されましたが、学校や家庭でのIT環境の違いなどによる基盤整備に関する課題やオンライン授業を実践する現場教師のノウハウ不足なども露呈しました。

「医療崩壊」への懸念、災害時のリスク対応にも課題

新型コロナウイルスによる新規感染者数が増加傾向を見せる中、医療従事者の過重な負担や受け入れ可能病床のひっ迫、医療機関での感染クラスターの発生などによって、医療提供体制の確保・維持は困難な状況にあるという見方も多く「医療崩壊」への懸念も起きています。

また、時限的・特例的対応として「初診時のオンライン診療」が解禁されましたが、医療機関から保健所、自治体における陽性者報告がFAXで行われる状況などの改善も求められています。

さらに台風や地震などの自然災害が多い日本では、大規模な災害が発生した場合の避難所での集団感染リスクにも備えておく必要があります。

デジタル化の遅れをどう解決するかが鍵に

政府は現在、感染症対策を日常生活に取り入れた「新しい生活様式」の実践・定着を推進しています。その実現には、非対面・非接触での生活様式を可能とするデジタル技術の活用が重要な鍵を握っています。しかし、今回振り返ったように、多くの人が緊急事態宣言下で実感したことは「さまざまな領域におけるデジタル化の遅れ」ではないでしょうか。

次回以降、コロナ禍で顕在化したデジタル活用の課題解決に向けた政府の方針や具体的な施策を紹介していきます。

※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。

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