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新年度を迎え、新卒入社の方々の研修が終わるころでしょうか。
間もなく新卒入社の方々も、初めての経費精算を迎えるかもしれません。
この全3回の連載は、経理担当者が新社会人の方に経費にまつわる教育をする際に、改めて必要な知識をインプットするために活用いただけます。
連載の1回目では、新社会人にとって必要な経費の基本をまとめました。2回目では、新社会人から聞かれそうな、経費にまつわるよくある質問をまとめて回答していきます。

《1》
領収書とレシートの違いとは?

Q:

経費精算の際には、手書きで印鑑が押された領収書が必要なのでしょうか、それともレシートでもよいのでしょうか?

A:

これはかなりの確率で質問される内容かと思います。結論を言うと、レシートでもエビデンス(これを一般に証憑(しょうひょう)と呼びます)として有効です。日本では一般的に手書きのものを領収書、レジで印字されるものをレシートと区別する慣習がありますが、実際は同じものと考えて問題ないでしょう。ちなみにレシートは英語で「Receipt」、翻訳すると領収書であることからも理解できるかと思います。

中には領収書ではなくレシートでは不可だとしている企業もあるかもしれませんが、領収書は「金銭を支払ったことの証明」であるため、①誰から(書類の作成者の氏名又は名称)、②いつ(購入年月日)、③何を(購入物の内容)、④いくらで(金額)、⑤誰が(書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称)購入したかが記載されていればよいということになります。

※小売業、飲食店業、タクシー業、駐車場業、その他これらに準ずる事業で不特定多数の者に資産の譲渡等を行うものである場合は、要件①〜④までを満たす必要があると消費税法で定められている。

ただし、会社の規定によっては手書きの領収書を求められる場合もあるかもしれませんので、事前に経理担当者に確認することをおすすめします。

《2》
領収書の宛名の「上様」って何?

Q:

会社の先輩は皆、宛名を聞かれた際に「上でお願いします」と答えています。宛名を正しく記載する必要はないのでしょうか?

A:

Q1で、特定の事業者を除き、領収書には宛名(書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称)が必要と書きました。例外を除けば、宛名は正しく記載するのが最も間違いが起きない方法です。しかし時間の問題などでやむなく「上様」と記載されたとしても、実際税法上では大きな問題にはなりません。

ただしこれも、会社のルール上正確な記載が必要とされている場合もありますので、事前に必ず確認しましょう。また、手書きの領収書の場合に宛名よりも重要なのは、何のために支払ったかが分かる「但し書き」、すなわち購入物の内容です。購入物の内容がわからなければ、事業との関連性を証明できないからです。さらに2019年に導入された軽減税率の対象品か否かの判断をするためにも、但し書きは重要です。

《3》
写真に撮ったら紙の領収書は捨ててもいい?

Q:

私の会社は領収書を写真に撮って申請する方法です。この場合、写真を撮った後の領収書は捨ててしまっても問題ないでしょうか?

A:

この質問は、近年よく話題に上がる「電子帳簿保存法」という法律に深く関連しています。電子帳簿保存法とは、領収書などの証憑類を紙媒体ではなく、スキャナーやカメラで撮った電子データ(電磁的記録)として保存することを認める法律です。
結論を言うと、この電子帳簿保存法に対応した申告を行っている会社であれば、写真を撮った後の領収書は破棄しても問題ありません。しかし注意が必要なのは、経理への申告が写真ベースであっても、必ずしも電子帳簿保存法の要件を満たした保管を行っているとは限らない点です。経理からはっきりと破棄してよいと言われていない場合は、証憑類は必ず残しておくようにしましょう。

《4》
新幹線は何席に乗る? タクシーは使っていいの?

Q:

初めての出張で新幹線を予約することになりました。自由席、指定席、グリーン車など種類があって、どれを予約していいものか迷ってしまいます。

A:

出張に関する疑問でよく挙がるのが電車やタクシー、飛行機などの交通機関に関するもの、またはホテル等の宿泊に関するものではないでしょうか。学生のころには深く考えずに予約できたものですが、社会人になって会社のお金を使うことになった際はさまざまな疑問が浮かぶものです。

これらの疑問に対しては、すべて会社のルールに依存するという回答になります。ほとんどの企業は、出張旅費規定と呼ばれるルールブックを定めています。出張旅費規定には、出張時にまつわる交通費・宿泊費の金額などが細かく記載されています。

新幹線で言えば、役職によってはグリーン車が認められる場合もありますし、近場の場合は自由席を推奨している場合もあるでしょう。タクシーの利用に関しても、公共の交通機関が整っていない、時間が間に合わないなどの妥当性があれば認められるケースがあるでしょう。宿泊費は、役職や宿泊地が政令指定都市か否かによって分けられているケースが多く見られます。

出張旅費規定を自分の目で確認し、疑問点があれば担当者に確認するようにしましょう。

《5》
スーツやカバンなどは経費にならないの?

Q:

事業活動に伴う支出として、普段利用するスーツやカバン、靴などは経費として請求できないのでしょうか? 会社の業務をするために購入しているのだと思いますが。

A:

確かに連載の1回目で、経費とは「通常事業活動を行う上で必要な費用のこと」とお伝えしました。そう考えると、仕事で使うために購入したスーツなどの衣服代、または身だしなみにかかる散髪代なども経費に含まれるのではないかと考える方もいるでしょう。

しかし、実際これらを経費として請求するのは難しいでしょう。それは、プライベートでも使う可能性があるという単純な理由が1つ。もう1つは、給与所得控除と特定支出控除の存在です。

給与所得控除とは、給料のうち一定額を控除する仕組みのことです。給料の全額から所得税や社会保険料を計算しないために、給与取得者にとっては節税につながるのです。これは翻せば、会社員にとっての経費枠と考えられていたのです。この控除の中から、スーツ等の必要な経費を賄うという考え方です。

しかし近年では、キャリアアップのために学校に通ったり、自費で接待をしたりといったケースも増えてきました。この給与所得控除で賄いきれない支出のためにあるのが、特別支出控除です。特別支出控除は、その年の給与所得控除の1/2を上回った支出がある場合に、給与所得控除に加えて控除できる仕組みのことです。なお、特別支出控除に適用される支出は下記の通りに定義されています。

  1. 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出(通勤費)
  2. 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出(転居費)
  3. 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出(研修費)
  4. 職務に直接必要な資格を取得するための支出(資格取得費)
  5. 単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出(帰宅旅費)
  6. 次に掲げる支出(その支出の額の合計額が65万円を超える場合には、65万円までの支出に限ります。)で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者より証明がされたもの (勤務必要経費)

    6.1. 書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用(図書費)

    6.2. 制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用(衣服費)

    6.3. 交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出(交際費等)

  7. *No.1415 給与所得者の特定支出控除|国税庁Webサイト

分からないことは担当者に確認して
しっかりと理解しましょう

ここまで新社会人の方が持ちやすい疑問を5つまとめました。
それぞれの質問の回答を見てみると、税法上に関するものから、会社のルールに関連するものまでさまざまです。この他にも分からないことがあったら、税法上大丈夫だから大丈夫ではなく、会社のルールと照らし合わせてみるとよいでしょう。またその逆に、会社のルールだけではなく正式な法令を知ることも大事です。不明な点は、会社の経理担当の方にしっかり相談して、理解できるようにしましょう。
それでは連載の3回目では、実際の経費精算業務の流れをまとめます。

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