2019年4月に働き方改革関連法が施行されて以来、時間外労働の上限規制、有給取得の義務化、正規・非正規雇用の格差是正など、「一億総活躍社会」実現に向けたさまざまな動きが本格化しています。
中でも時間外労働削減は緊急の課題とされ、多くの企業が積極的に残業や休日出勤を減らす取り組みを進めています。一方で、一部では「残業代が減って生活が苦しくなった」といった声も聞かれます。
そこで、新たに浮上してきたのが「空いた時間をどう活用するか?」という問題です。
趣味に没頭する、レジャーを楽しむ、家族サービスの時間を増やすなど使い方は人それぞれですが、空き時間はこれまで忙しくてできなかったことや、将来役立つと思われることにチャレンジする絶好の機会でもあります。本コラムでは時間の有効活用を進めるための各種アプローチをご紹介します。
「働き方改革」によって生まれた業務以外の時間は、ビジネスパーソンが自由に使える「余暇」になります。余暇をどう活用するかはそれぞれですが、使い道は時代、環境とともに変化しています。総務省統計局が5年ごとに行っている「社会生活基本調査」によると、過去1年間(平成27年10月20日~28年10月19日)に「学習・自己啓発・訓練」を行った人の割合(行動者率)は平成28年で36.9%となっており、これは平成23年に比べ1.7ポイント上昇しています。いわゆる「自分磨き」が広く普及する中で、今後一層余暇を自身のスキルアップに役立てる傾向が強まると考えられます。
出典:総務省統計局「平成28年社会生活基本調査結果」
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/index.html
気になる「学習・自己啓発・訓練」の中身を男女別でみると、男性では「パソコンなどの情報処理」「英語」「人文・社会・自然科学」、また、「商業実務・ビジネス関係」の学習に取り組む人も多く見られます。一方で女性は「家政・家事」「芸術・文化」が上位となっていますが、「英語」や「パソコンなどの情報処理」が続いており、現在の仕事に役立てるためという目的が感じられます。
出典:総務省統計局「平成28年社会生活基本調査結果」
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/index.html
これらを学ぶ方法には「学校・教室へ行く」、「独学で勉強する」などが挙げられますが、費用や時間がネックになり、あえなく途中で投げ出してしまうケースも珍しくありません。そこで、貴重な余暇を無理なく学習や自己啓発に役立てる方法をいくつかご紹介しましょう。
前々回のコラムで紹介したような「資格取得」をめざす際には、専門学校や通信講座での受講を検討する方が大多数でしょう。ただし、無理のないペースで少しずつ学びたいときや、趣味や興味のあるジャンルの知識を深めたい場合には、公開講座を受講してみるのも一つの方法です。
大学の公開講座は、通常学生に対して行われる講義を一般に開放したもので、現在多くの大学・短大で開催されています。講義内容は大学の研究テーマに基づいたものが中心ですが、専門部署(エクステンションセンター)を持つ大学では受講者の興味、ニーズに合わせた多種多様な講座が開設されています。受講料は各講座によって異なりますが、無料で実施されるケースもあり「勉強したいけどお金は節約したい」という人は、まず無料の公開講座に参加して、雰囲気を体験してみることをおすすめします。
また、公開講座は企業主催でも行われています。企業が主催するというと「何か売りつけられるのではないか?」と心配になる人もいると思いますが、社会貢献の一環として著名な講師を招き、広く一般からも受講者を募るスタイルの講座も開催されています。その多くは無料で参加可能ですので、休日や仕事帰りに立ち寄ってみるのもいいでしょう。開催告知、募集要項は主催社のホームページなどに掲載されています。
なお、公開講座の中には財務・会計・簿記など、現職の経理担当者に向けたものも多数あります。本腰を入れて仕事のスキルアップをめざす人は、講座内容を検索されてみてはいかがでしょうか。
出展者側にとって、展示会は自社の製品・サービスを知ってもらうための場です。参加者側にとっても、自身の業務に役立つ製品やソリューションの情報をまとめて得られる展示会は、格好の情報収集の場です。また、仕事に関係ないジャンルでも、趣味やキャリアアップに役立つ内容の展示会やセミナーに参加してみるのもおすすめです。
たとえば「趣味のデジタルカメラの最新情報を知りたい」という人はカメラ業界の展示会、「現在メーカーで勤務しているが、将来は教育の仕事がしたい」という人は教育関係者向け展示会というように、自分が興味関心のあるテーマであれば、担当者に直接質問ができる展示会やセミナーは積極的に会場へ足を運ぶ価値があります。
開催側事務局の方針や展示内容によっては関係者以外の参加を断っているイベントもありますが、「社会勉強に来ました」という人を門前払いにするような展示会はそれほど多くありません。また、少しでも自社の業務内容に関係している内容ならば、堂々と関係者として入場できます。出展者として接客に苦労した経験がある人も、一歩離れて見学者として展示内容を見ることで、新たな発見が生まれることでしょう。
公開講座やセミナーは、似たような課題感を持つほかの受講者が多く参加しているため、共通の興味関心を持つ者同士で会話をする機会も増えるでしょう。業務で使用している製品のユーザーコミュニティーなどに参加してみるという方法もあります。共通の興味関心、近しい課題感などを中心に形成されたコミュニティーは、勉強会や情報交換の場として大変有用です。
1人で独学に励むという方法もありますが、意見を交換し合い、他者の斬新な視点を取り入れることは、知識の幅を広げ、大きな気づきを得られるチャンスです。情報ネットワークを持ち、しっかりと業界の動向にアンテナを張っていることは、すべてのビジネスパーソンにとって重要なスキルと言えます。さらに、そこで得た人脈と知見が、将来的なキャリア形成にもつながるかも知れません。
いかがでしたでしょうか。働き方改革と併せて話題になることの多いキーワードに「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」という言葉があります。これは単に休息をすすめるというだけのものではなく、仕事にも生活にも充実感を持って楽しく生きることを意味しています。働き方改革で生まれた時間を十分に生かし、ワーク・ライフ・バランスの実現をめざしましょう。
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