失敗事例から学ぶ基幹システム構築講座「システム計画~運用」編
A社の新システム導入の背景
A社の従来システムは販売管理については10年前に導入したオフコンの販売管理パッケージを使用しており、生産管理は部署ごとにEXCELで生産計画・手配管理を行っていました。部材の発注・仕入・在庫管理、及び製品の在庫管理はオフコンパッケージで行っており、以下の問題が発生していました。
現状の問題点
- (1) 生産計画はEXCELで製品別の構成を定義し、製品の製造手配と所要部材を計算し手配するところまでシステム化している。しかし部材の在庫引当は人手で行っているため、部材の欠品や過剰在庫が発生。
- (2) 生産の進捗管理は部署別のEXCEL管理のため担当者が不在の時には進捗がつかめない。
以上のような問題を改善するために新システムの導入検討チームを作り、RFP(提案依頼書)をまとめてベンダーから提案を受けました。
RFPの要旨
- (1) 販売、生産がバラバラになっている現状システムを統合し、受注から生産、出荷・売上までを一貫して管理できるシステムとする。これにより全社の情報の共有化を図り作業のスピードアップを図る。また、環境の変化にも柔軟に対応できる体制を作る。
- (2) 在庫管理を一元化し製品及び部材ごとの入庫予定、出庫予定を含めた在庫管理を実現する。また安全在庫を設定し欠品を防止しながら在庫の最適化を図り、在庫圧縮を実現する。
ベンダーの提案
上記のRFPを3社に提示し提案とデモを受けました。
- (1) X社(従来のオフコンのベンダー)の提案
販売生産の統合パッケージをベースとし、生産管理部分についてはパッケージに若干の追加機能を加えて業務に合わせる提案。提案説明は現状を見ているがゆえに現実論が多く抜本的な改善を図るという意味では弱い印象を受ける。しかし、現場の担当者は実態に即した提案と受け止めそれなりに共感を得た様子。価格面では現状に合わせるための追加機能の分でZ社より高くY社よりは安い。 - (2) Y社の提案
Y社は販売生産の統合したパッケージを扱っておらず、販売管理パッケージと生産管理パッケージの連動案の提案。連動部分の個別開発が発生し、在庫管理も二重管理となってしまう。価格は2システムと連動部分の開発が加わり、3社中で最も高い。 - (3) Z社の提案
販売・生産を統合したパッケージに全面的に切り替え、提案するパッケージに業務を合わせればRFPの課題は全て解決できるという提案。機能面で見ても理論的にしっかり出来ており、そのとおりに運用すればうまく行くように見える。提案するSEも経験豊富で説明の印象も良く、価格は3社中一番安い。ただし、現場の担当者は現在の業務とのギャップから、全てをパッケージに合わせられるかという不安を感じている。
ベンダー選定・評価
一通り3社の提案とデモを受けて、ベンダーの選定を行った結果、Z社に決定しました。決定理由としては、
- (1) 価格が3社中最も安い。
- (2) 機能面では要求する機能を満たしている。
(ただし、パッケージに合わせて自社の業務処理方法を変える必要がある。) - (3) 提案の印象が良かった。
以上の3点でした。現場の担当者はデモ、説明の段階から業務をパッケージに合わせられるか不安はあるものの、決定に従うこととしました。