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日本企業の先進的なDXの取り組みを選定する「DX銘柄2021」選定企業大全

【第4回】DX銘柄2021選定企業の先進的なDXへの取り組みを紹介(電気・機械分野 編)

2021年6月7日、経済産業省と東京証券取引所は共同で「デジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄2021」選定企業 28社を発表しました。DX銘柄2021は、東京証券取引所(一部、二部、ジャスダック、マザーズ)上場会社約3,700社を対象に実施した調査の回答企業464社の中から「DX認定」を申請した企業が選定対象です。

この制度は、両者が2015年から選定してきた「攻めのIT経営銘柄」の後継制度に位置付けられます。攻めのIT経営銘柄では、中長期的な企業価値の向上や競争力の強化をめざし、経営革新や収益水準・生産性の向上をもたらす積極的なIT利活用に取り組む企業を表彰するものです。DX銘柄2021では、製造業や流通・小売り、金融業など幅広い業種から各分野で代表的な取り組みを進めている企業が選定されました。

DX銘柄制度における活動状況を紹介する本連載。今回は、DX銘柄2021選定企業の中から、電気・機械分野で選ばれた4社を紹介します。それぞれの業界・企業が抱える課題をどのようにデジタル技術を活用して解決してきたのかを探ります。

電気・機械分野でDX認定企業に選ばれた4社

電気・機械分野でDX銘柄2021企業に選定されたのは、以下の4社です(企業名の後の業種は「DX銘柄2021選定企業レポート」を基準としています)。

  • 小松製作所(機械)
  • 日本電気(電気機器)
  • ヤマハ発動機(輸送用機器)
  • トプコン(精密機器)

上記4社は、建設業や林業、農業、医療分野などで用いる専用車両や機器の開発事業などを展開しています。デジタル技術を活用した現場業務の効率化や、データ収集・活用による可視化や詳細な状況把握などの事業成長のみならず、協業企業との連携や社会課題の解決にも貢献できるDXに取り組んでいる企業だと言えます。

さまざまなデジタル技術を活用した「デジタルツイン」の仕組みでDXを推進

DX銘柄2021の選考にあたり、その評価基準の土台となるのが上場企業を対象とした「デジタルトランスフォーメーション調査2021」です。経済産業省が2021年6月に公表した「デジタルトランスフォーメーション調査2021」の分析レポートによると、調査結果を基にDX銘柄企業の特徴などが報告されています。

電気・機械分野のDX銘柄2021選定企業の特徴の一つに「デジタルツイン」の仕組みによってさまざまなDXを実現している点が挙げられます。デジタルツインとは、リアル(物理)の世界のデータを取得し、それらを基にサイバー(仮想)空間でリアル空間を再現できる技術のことです。IoTやセンシング機器、ドローンなどのさまざまなデジタル技術が活用されています。

例えば、小松製作所では、ドローンやICT機器や建機などのデータを活用する建設生産プロセスの部分的な「縦のデジタル化」を発展させ、施工の全工程をデジタルでつなぐ「横のデジタル化」をめざしています。さらに顧客現場の施工の最適化を図るシミュレーションアプリやダッシュボードアプリなどを開発・導入することで「現場のデジタルツイン」を実現しています。これによって、現場関係者が1カ所に集まる必要なく、遠隔で建設現場の状況把握を可能にしているとのことです。

トプコンは、3次元デジタル測量機やレーザースキャナーなどのセンシング機器とBIM(コンピューター上にリアルと同じ建物の立体モデルを構築する技術)データに連携するソフトウェアを開発しています。リアルとバーチャルの間を橋渡しすることで「建築工事の工場化」を実現し、省人化、施工品質、生産性の向上を図るDXソリューションを提案しています。

自社やパートナー企業、顧客とのデータ連携の仕組みを構築している

電気・機械分野のDX銘柄2021選定企業の共通点としては、自社内のみならず協業企業や顧客とのデータ連携や、その改善に着手していることも挙げられます。

ヤマハ発動機では、ネクテッド二輪車と専用アプリを導入し、それらのデータから車両情報を把握、顧客とつながるアプリのデータを組み合わせ、オイル交換時期を提示するなど顧客サービスの提供に役立てています。また、お店に立ち寄る機会の少ない顧客に対して、適切なタイミングで来店してもらえるようなマーケティング活動につなげています。

小松製作所では、DX推進を担うスマートコンストラクション推進本部を設置し、開発ベンダーを組織化してシステム開発を行っています。スタートアップ企業を含めた日米欧20社以上からなる社外のパートナーとの協業・連携を進めています。

日常生活や働き方、社会課題の解決にも取り組む

NECはローカル5Gなどのネットワークや生体認証技術、AI技術などを活用し、コロナ禍でリモート・非接触対応が求められるニューノーマルな社会、日常生活や働き方などを支援しています。従来、顧客の本人確認方法として金融機関での口座開設に義務付けられていた転送不要郵便の送付に加え、スマートフォンでオンライン確認ができるように顔認証技術を使ったサービスを提供しています。

また、生体認証などを活用したゲートレス入退やマスク対応レジレス決済などの実証も進めています。

トプコンでは、トラクターの自動操舵システムや各種生育・収量センサー、施肥設計・路農用ソフトウェアを活用した「農業・路限の工場化」も推進しています。また、クラウド型農業支援システムによって、営農サイクルに関わる機器の制御からデータの収集、分析、作業効率化を支援しています。同社では、世界的な人口増加に伴う食糧不足への懸念を解決するDXソリューションと位置付けています。

小松製作所ではカーボンニュートラルに貢献する持続可能な循環型事業として、林業ビジネスに取り組み、ドローンによる撮影データから3D画像を作成し、専用アプリによって、本数、直径、材積を自動計算し、植林・育林の管理、森林資源量の推定に活用しています。伐採、搬出、運搬、植林計画などの最適化と、資源の環境保護貢献をめざしていきます。

グループ全体でDXを推進する体制を整備

また、DX2021銘柄企業の共通点としては「相対的に企業規模が大きい」点も挙げられます。グローバル体制でDXを推進する体制の整備を進めていることも重要なポイントだと言えるでしょう。

例えば、ヤマハ発動機は、長期ビジョンの実現に向けて「経営基盤改革」「今を強くする」「未来を創る」という3つのDXを同時並行、リンクさせて推進しています。統合的なデータ基盤を構築してビジネス基盤の強化を図るとともに、日本・インド・中国のIT子会社などとグローバルでデジタルリソースやイノベーション拠点を活用し、データ分析やデジタル利用の現場駆動化を進めています。また、自社のファンを増やしてブランド価値を高め、ダイナミックな成長を実現することをめざしています。

NECでは、戦略の変革、人と組織の変革、プロセスと仕事の仕方の変革について、時代と戦略に合った企業文化に根本から改めることを掲げた取り組みをグループ全体で進めています。社内のDX人財確保に向けて、職種・職務別に「スキルマップ」を体系化して必要な人物像を明確にするなどの社員教育プログラムを実施しています。顧客のDX実現に向けてDXオファーリングメニューを用意し、NEC全社の知見を集結することをめざしています。

収益向上や顧客価値創造、社会課題の解決を生み出す好循環を

電気・機械分野のDX銘柄2021選定企業は、自社や協業企業の収益の向上や顧客への新しい価値創造を通じて、ESG(環境・社会・企業統治)の課題解決に向けた好循環を生み出すことをめざしています。今後も「デジタルツイン」「スマート建設」「スマート農業」「スマート林業」などの実現に向けた活動を加速させていくことでしょう。

ここまで紹介してきた先進的なDX企業の取り組みを参考にして、ぜひ自社のデジタル化を進めてみてはいかがでしょうか。

  • ※ 本内容は2021年9月時点の情報です。
  • ※ 本記事に記載の情報は初掲載時のものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください。

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