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日本企業の先進的なDXの取り組みを選定する「DX銘柄2021」選定企業大全

【第1回】デジタル変革が急務、日本企業の企業価値の向上に欠かせない「DX銘柄」制度とは何か?

日本企業のDX推進状況を危惧する経済産業省

多くの国内企業が事業成長の柱として「DX(デジタルトランスフォーメーション)」に取り組んでいます。しかし、国際経営開発研究所(International Institute for Management Development)が発表する「世界のデジタル競争力ランキング」2020年版では、日本は全63カ国・地域中の27位となり、前年よりも4位下がってしまいました。
日本政府もさまざまな支援施策を展開していますが、「日本の企業のDX推進の道は険しい」といえるのではないでしょうか。
そうした現状について、特に強い懸念を示しているのが経済産業省です。同省は「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」(2018年)において、「2025年の崖」という言葉を用いて警鐘を鳴らしました。
「2025年の崖」とは「老朽化したITシステムを刷新しない限り、2025年以降、毎年12兆円もの経済損失が生じる」という予測を公表しています。皆さんも世の中に一気に知れ渡ったこの言葉を聞いたことがあると思います。
その後、経済産業省は企業のDXを含めた戦略的なIT利活用を促進させる支援策を展開しています。その中でも、最近注目を集めているのが「DX銘柄制度」です。

この連載では、同制度の設立意図や目的、選定メリット、注目される理由などを解説します。また、2021年6月に発表された「DX銘柄2021」でDXグランプリ2021選定企業のDXへの取り組みを紹介していきます。
今回は、そもそも「DX銘柄制度」とは一体何なのか? その全体概要を解説します。

企業価値の向上につながるDX推進企業を選定する「DX銘柄制度」

経済産業省は、東京証券取引所と共同で2015年から「攻めのIT経営銘柄」を選定してきました。「攻めのIT経営銘柄」とは、中長期的な企業価値の向上や競争力の強化のために、経営革新や収益水準・生産性の向上をもたらす「積極的なIT利活用に取り組んでいる企業」のことを言います。
その後、2020年に過去5回実施してきた「攻めのIT経営銘柄」を「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」へと名称を変更しました。その理由は、DX推進がグローバルな潮流が起きていることを踏まえ、企業選定の焦点をDXに当てたことにあります。

DX銘柄制度では、デジタル技術を前提としてビジネスモデルを抜本的に変革し、新たな成長・競争力強化につなげていくDXに取り組む企業を選定しています。具体的には、東京証券取引所の上場企業の中から、企業価値の向上につながるDXを推進できる仕組みを社内に構築し、優れた実績が表れている企業を決めるというものです。
また、選定企業の中から、注目すべき取り組みを実施している企業を「デジタルトランスフォーメーション注目企業(DX注目企業)」として、さらに業種の枠を超えて“デジタル時代を先導する企業”を「DXグランプリ」に選出しています。

2021年6月7日、経済産業省と東京証券取引所は共同で「DX銘柄2021」選定企業を発表しました。「DX銘柄2021」選定企業28社と「DX注目企業2021」20社、昨今の情勢を踏まえて「デジタル×コロナ対策企業」11社などが選ばれました。DXグランプリは、日立製作所とSREホールディングスの2社が選定されています。

企業の経営戦略に盛り込まれる「デジタル技術を活用した変革」方針

そもそも、なぜDX銘柄を選ぶ必要があるのでしょうか。その背景には、社会情勢の大きな変化があると考えられます。
日本政府は現在、あらゆる要素がデジタル化される未来社会構想「Society5.0」の実現をめざしています。また、既存のビジネスモデルや産業構造を根底から覆し、破壊する事例(デジタルディスラプション)も現れ始めてきました。そうした変化を受け、多くの企業が自社の経営戦略を見直し、その中に「デジタル技術を活用した変革の実現」を盛り込むことが求められているのです。

具体的には「デジタル技術による変化が、自社にどのようなリスクや機会をもたらすか」を把握する必要が出てきました。また、それらを踏まえた経営ビジョン、ビジネスモデルを策定するなど、経営戦略の中にデジタル技術の活用を盛り込むことが必要不可欠になりつつあります。

さらに、経営者自らがリーダーシップを発揮し、ステークホルダーに対して自社の経営戦略を積極的に情報発信したり、戦略の実現を阻む課題の把握や分析を通じた戦略の見直しを図ることも求められています。

経済産業省では、DXに注力して優秀な取り組みを進めている企業を表彰することで「経営者のDXに対する意識変革」や「さまざまな業界・業種において、より広くDX推進を波及させたい」と考えているようです。

DX銘柄企業はどのように選ばれるのか? 選定プロセスを紹介

DX銘柄2021は、どのように選ばれたのでしょうか。ここからは、その選定プロセスを紹介していきます。
まず、東京証券取引所(一部、二部、ジャスダック、マザーズ)上場会社約3,700社を対象に「デジタルトランスフォーメーション調査2021」が実施されました。調査に回答した企業464社のうち、「DX認定」に申請している企業が選定対象となりました。

DX認定制度とは、2020年5月15日に施行された「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」に基づく認定制度です。同制度は、法人と個人事業者などすべての事業者を対象に、経済産業省が2020年11月に発表した「デジタル・ガバナンスコード」の基本事項を満たす、「デジタル技術による社会および競争環境の変化の影響を踏まえた経営ビジョンおよびビジネスモデルの方向性を公表している」組織を認定するというものです。

また、アンケート調査の「選択式項目」と3年平均のROE(自己資本利益率)に基づいたスコアリングを実施、一定基準以上の企業を候補企業として選定する一次評価が実施されました。さらに、一次評価で選定された候補企業について、アンケート調査の「記述回答(企業価値貢献、DX実現能力)」を基に、DX銘柄評価委員会が評価を実施。その評価結果を基に、最終審査を経て、DX銘柄2021が選ばれています。

銘柄に選定されると企業が得られるメリットとは?

DX銘柄に選定されることは、企業にとって、どのようなメリットが考えられるのでしょうか。
まず挙げられるのが「日本政府から“DX推進の面で注目に値する企業”としてお墨付きをもらう」ということです。また、認定企業だけが使用できるロゴをWebサイトやパンフレットなどに掲載可能です。

DXの実現で求められるITシステム活用や人・組織も含めた組織変革といった、先進的な取り組みを実施している企業としての信頼度が増し、株式市場での注目が集まることにもつながります。投資家や株主など、「さまざまなステークホルダーに対する企業価値の向上にも貢献できる」と考えられるのです。

今後、同制度の認知が広がれば、選定をめざす企業が増えたり、制度自体に対する評価も高まることも予想されます。ただ、2021年のDX銘柄選定の対象は、東証上場企業の約3,700社中の464社にしか過ぎません。経済産業省がねらう「日本企業のDX推進を後押し」できるのか、今後の動向にも注目していきたいと思います。

次回は「DXグランプリ2021に選定された日立製作所は、DXに向けてどう取り組んでいるのか?」について、経済産業省が公開するDXグランプリ企業の取り組み紹介や選定レポートの内容を踏まえ、同社が展開するDX推進施策を紹介します。

  • ※ 本内容は2021年9月時点の情報です。
  • ※ 本記事に記載の情報は初掲載時のものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください。

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