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日本企業の先進的なDXの取り組みを選定する「DX銘柄2021」選定企業大全

【第3回】DX銘柄2021選定企業の先進的なDXへの取り組みを紹介(製造業・医薬品創薬分野 編)

2021年6月7日、経済産業省と東京証券取引所は共同で「デジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄2021」選定企業 28社を発表しました。この制度は、両者が2015年から選定してきた「攻めのIT経営銘柄」の後継制度に位置付けられます。攻めのIT経営銘柄では、中長期的な企業価値の向上や競争力の強化をめざし、経営革新や収益水準・生産性の向上をもたらす積極的なIT利活用に取り組む企業を表彰するものです。

DX銘柄2021は、東京証券取引所(一部、二部、ジャスダック、マザーズ)上場会社約3,700社を対象に実施した調査の回答企業464社の中から「DX認定」を申請した企業が選定対象です。まず、アンケート調査と3年平均のROE(自己資本利益率)に基づいたスコアリングなどを経て、DX銘柄評価委員が評価を実施。その結果を基にDX銘柄評価委員会による最終審査で決定します。DX銘柄2021企業は、製造業や流通・小売業、金融業など幅広い業種から各分野で代表的な取り組みを進めている企業が選定されました。

DX銘柄制度における活動状況を紹介する本連載。今回は、DX銘柄2021選定企業 28社の中から、製造業・医薬品分野で選ばれた5社を紹介。それぞれの業界・企業が抱える課題をどのようにデジタル技術を活用し、解決してきたのかを探ります。

製造業・医薬品分野で先進的なDXに取り組む5社

製造業・医薬品分野でDX銘柄2021企業に選定されたのは、以下の5社です(企業名の後の業種は「DX銘柄2021選定企業レポート」を基準としています)。

  • 旭化成(化学)
  • 中外製薬(医薬品)
  • 出光興産(石油・石炭製品)
  • ブリヂストン(ゴム製品)
  • JFEホールディングス(鉄鋼)

「ものづくり大国」と言われてきた日本。新型コロナウイルス感染症によって、世界的に深刻な経済状況が続く中、新興国の台頭や労働力の減少、サービタイゼーション※へのビジネスモデルの変革など、日本企業を取り巻く現状は大きく変わっています。また、導入設備の老朽化、生産性や品質の向上・業務効率化、属人的な技術継承などのさまざまな課題が指摘されています。

※サービタイゼーション:生産した製品を販売して収益を上げるのではなく、製品を「サービス」として顧客に提供することで売り上げを上げるビジネスモデルのこと。
そうした課題を解決する有力な方法が「ICT活用」であることは皆さんも納得されていると思います。厳しい競争を勝ち抜くため、収益モデルの変革や市場リードタイムの短縮化、付加価値の高い製品の開発につながるICT活用は必要不可欠です。しかし、製造業をはじめ多くの日本企業は、他の先進国に比べてIT化が遅れていると言われています。

そうして点を踏まえて、ここからは先述した5社のDX推進の取り組みにおける傾向や具体的な実施施策を紹介していきたいと思います。

DX銘柄企業の特徴の一つ「中長期的な経営方針にDX推進が明記されている」

DX銘柄2021の選考にあたり、その評価基準の土台となるのが上場企業を対象とした「デジタルトランスフォーメーション調査2021」です。経済産業省が2021年6月に公表した「デジタルトランスフォーメーション調査2021」の分析レポートによると、調査結果を基にDX銘柄企業の特徴などが報告されています。

それによると、DX銘柄企業は「デジタルによる外部環境の変化を踏まえたビジョンを策定・公表している」「ビジョン実現のためのビジネスモデルを構築しており、ビジネスモデル実現のためのエコシステムを主導している」などの傾向が見られるとのことです。

今回紹介する5社も同様に、自社の経営戦略や企業ビジョン、中長期的な経営方針の中にDXの推進が明記されています。

たとえば、新成長戦略「TOP I 2030」を策定した中外製薬では、その成功のカギを握るものとしてDXを定義しています。出光興産も2030年に向けた基本方針の一つに「ビジネスプラットフォームの進化」を定め、デジタル変革を加速させることを公表しています。また、そのような経営戦略とリンクした、DXの実現に向けた具体的な内容を盛り込んだデジタル戦略を公表している点もDX銘柄企業の特徴だと言えます。

先進企業は、DX推進に向けた組織風土や人材育成にも積極的

さらに、DXの専任組織やリソース、権限なども整備され、戦略実現に向けた組織・制度が充実している点も共通しています。たとえば、ブリヂストンではグローバルCEOの直結組織としてDXソリューション戦略を担う「Bridgestone T&DPaaS」を設置するなどの体制強化を図っています。

また、DX推進を目的とした拠点を開設する取り組みもなされています、旭化成ではデジタル共創ラボの拠点として「CoCo-CAFE」を開設しています。JFEホールディングスでは、データサイエンスと最新ICTを活用した全社DX推進拠点「JFE Digital Transformation Center」を本社に構えています。中外製薬は、従業員のアイデアを短期間で具体化・検証する仕組みとして「Digital Innovation Lab」を構築し、新規価値創出の場を提供しているのです。

続いて、DX人材の採用・育成の取り組みを見ていきましょう。出光興産では、外部からDXスキルホルダーのプロフェッショナルを採用し、専門スキルチームのリーダーとして従業員教育を実施しています。ブリヂストンは、ソリューションビジネスをリードするデータサイエンティストの育成研修制度を用意しています。

また、旭化成では、デジタル活用のマインドセットを育む育成プログラム「オープンバッジ制度」や全社DX大会を開催するなど、DX事例の共有やグループ全体の推進を図っているのです。

IoTやAI、データサイエンスなどを活用した製造・生産現場におけるDX推進事例

製造・生産現場におけるDX推進の主軸となるのが、IoTやAI、ビッグデータなどを取り入れた「技術革新」と膨大で多様な「データ資産の有効活用」です。

旭化成では、AIを活用した製品検査の自動化、設備異常の予兆検知、IoTツールを活用した業務の高度化などを推進し、生産効率や収益率を向上したという成果が多く報告されているようです。

中外製薬では、抗体プロジェクトに機械学習を用いることで、最適な分子配列を得るAI創業支援技術「MALEXA-U」を開発しています。また、AIやロボティクスを活用し、創薬プロセスの革新や創薬の成功確率向上、プロセス全体の効率化などに取り組んでいます。

出光興産では、AIを活用した配船計画策定や、デジタル技術による製油所の保全業務改善に着手し、事業効率を最大限に高めたり、競争力強化、安全・安定操業の継続に取り組んでいます。

ブリヂストンは、デジタル技術を活用した高度設計シミュレーションによって、耐久性の向上、許容荷重の増加など顧客ニーズに合わせて最適な性能を提供する高機能な鉱山・建設車両用タイヤ「Mastercore」の開発に成功しました。

JFEホールディングスでは、操業データの各工程での連携や地区間の共有化など、統合的にデジタル技術を活用し、生産性向上、コスト削減などを推進。製造プロセスのサイバー/フィジカルシステムの標準化による操業技術のレベルアップなどを図っています。

新規ビジネスの創出に向けて5社が展開するDX推進策

DXの推進は「既存ビジネスの深化」や「新規ビジネスの創出」につながります。生産性や業務効率、製品品質などが特に重視される領域でもある製造・創薬分野では、既存ビジネスの改善には十分つながる成果が出ていますが。一方、ビジネスモデルの変革を迫られている企業も多く、企業成長に向けた新規ビジネスの創出も重要です。

旭化成では、医療や生鮮食品、物流の高度化に向けたブロックチェーンの活用、ウェアラブル除細動器着用患者の遠隔モニタリング、診療とのシームレスな連携が可能なエコシステムの構築など、新規事業へのさまざまな取り組みを進めています。また、中外製薬はデジタル技術を用いて疾患の有無やその状態を客観的に評価する「デジタルバイオマーカー」の開発を推進しています。

出光興産は、全国6,400か所のエネルギー供給拠点の新ブランド「apollostation」を発表し、アプリやデジタルマーケティングの導入、企業間連携などで、地域の人々の暮らしと移動を支えるさまざまなサービスを展開していく計画です。

ブリヂストンでは、タイヤや車両のデータをリアルタイムで収集・分析するソリューションを提供することで、オペレーションの最適化を進めています。JFEホールディングスは独自開発したAIエンジンとの北陸電力のダムに関するノウハウを組み合わせて、過去の降雨量や水位から将来の流入量を高精度に予測する「ダム最適運用システム」の実証実験を実施中です。

製造業・医薬品分野におけるデジタル活用の利用シーンは今後も増える

製造業・医薬品分野では、今回紹介した5社のようなDX推進への取り組みが進められています。世界の主要各国が第四次産業革命への対応を進めている中、日本でも「デジタルツイン」「スマートファクトリー」などの実現に向けた動きが進んでいます。

その際には、エッジコンピューティングの普及や産業システムの制御・運用技術「OT」とITとの連携、急増するサイバー攻撃への対処など、今後もさまざまな場面でデジタルを活用する機会が出てくると考えられます。先進的なDX企業の取り組みを参考にして、ぜひ自社のデジタル化を進めてみてはいかがでしょうか。

  • ※ 本内容は2021年9月時点の情報です。
  • ※ 本記事に記載の情報は初掲載時のものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください。

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