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株式会社 日立システムズ

専門家コラム:海外での実践的危機管理

【第16回】荒れる街角(全般)

テレビに映し出さるクーデターの模様

2006年9月19日、10年余りの海外勤務を終えて帰任し、本社の海外人事に配属された直後だった私は、いつものとおりテレビを観ながら朝食をとっていました。ニュースをなんとなく眺めていると、画面には大きな字幕が踊っていました。

「タイ・バンコクでクーデター!」

このときの私は、「へーそうなんだ、大変だなー」程度の感覚でしたが、通勤電車の中で、「あれ?これって、ひょっとしてエラいことになっているんじゃないかな?」と思い始め、職場に着いた頃には、事の重大さに目まいを覚えることになったのです。

君が担当者だ!

職場に到着すると、私の机の横に上司が青ざめた顔で立っていました。

上司:「山本、タイでクーデターが起こった。君が担当者だ!早急に対処しろ!」
私 :「はっ、私ですか?ついこの間、着任したばかりなんですけど…」
上司:「お前、引き継ぎしてないのか?業務リストには山本って書いてあるぞ」

そういえば…前任者から引き継いだ海外人事の大量の資料の中に、「海外危機管理」というタイトルの薄っぺらいファイルがあったことを思い出しました。

その直後、バンコクの駐在員から電話がかかってきました。

駐在員:「山本さん、あのね、朝起きて出勤しようとしたら、戦車とか兵隊さんがいっぱいいて、道路封鎖してるんですけど…何かあったんですか?」

この瞬間こそ、私が企業の海外危機管理に深く携わっていく始まりだったのです。

どうして良いか分からない!

突然、海外危機管理の担当者であることに気が付いた私は、思いつくままに駐在員の安否確認、出張可否判断、退避の検討など、オロオロしながら対応しました。しかしながら、すべてが後手に回ってしまいました。
幸いにもこのクーデターは比較的穏やかに推移し、駐在員や帯同家族、出張者に被害はありませんでした。

お恥ずかしい話ですが、この事件を契機に、私は海外危機管理の勉強をせざるを得なくなり、体制を整える活動を始めました。タイ拠点長とも緊密に連絡を取り合い、退避措置の準備や逃げ遅れた場合の籠城についても検討をしました。

その後、タイでは反政府側の人による抗議活動が繰り返し発生し、2010年の大規模なデモ隊と軍による激しい武力衝突による強制排除の際には、当時のタイ拠点長、駐在員、帯同家族の皆さんが郊外へ一時退避できたことは、幸運でした。

暴動、政変は突然発生する?

海外危機管理の勉強をしているうちに、私はあることに気付いたのです。

それは、暴動・政変は突然発生するわけではなく、生活困窮者が多い国や政情が不安定な国では常に潜在的リスクがあり、総選挙、経済の低迷、政府による大規模な政策変更、宗教・民族問題の発生、権力者の政治闘争など、事件が発生する前に「確かな予兆」があるのです。
日本では、暴動や政変が発生する確率が極めて低いために、私たちは安心しきって生活しています。海外で生活する際にも、現地に慣れるうちに暴動や政変のリスクへの警戒心が薄れる傾向にあり、目の前に現れた「確かな予兆」にも気が付かなくなってしまうほど、日本にいるときと同様に鈍感になりがちなのです。

始まったら逃げられない

暴動や政変への対処として強く意識しておかなければならないのは、事件が発生し、空港閉鎖、暴徒と治安部隊の衝突、軍事衝突などが発生している段階では、帯同家族とともに安全な退避ができなくなる可能性があることです。

「退避」は、情勢が悪化する前の段階で、迅速かつ安全、確実に実行されなければなりません。「いつ、どこへ、どうやって逃げるか?」を予め具体的に決めておくことは重要です。それ以前に、暴動・政変のリスクが高い国では、日常的に報道やインターネット情報、在外公館から配信される安全情報・緊急一斉連絡メール(たびレジ)などで、「予兆」を早期に察知する努力が必要です。
万が一、逃げ遅れた場合を想定し、現地で「籠城」する準備(場所の確保、約2週間程度の飲料水や食料の備蓄、衛星携帯電話の配備など)をしている企業もあると聞いています。
また、現地情勢が極めて悪化した際には、日本政府が退避支援を行なう場合があり、赴任後には必ず在外公館に在留届けを提出し、自己の存在を知らせておくことも重要です。

「備えあっても、憂いが尽きない」のが、暴動・政変への対応です。しかし、退避・籠城の備えだけでなく、「心の準備」をして初動を可能な限り早める努力をすることが、「自分の身は、自分で守る」につながると言えるでしょう。

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※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。

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