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専門家コラム:海外での実践的危機管理

【第2回】食事に誘うのも一苦労(アメリカ)

犯罪やテロだけがリスクじゃない

10年ぐらい前のことですが、私の友人Aさんが、アメリカ駐在中に体験したことを 話してくれました。
彼はとても親切で気が利く性格で、日本の職場では部下たちから信頼を寄せられる課長でした。職場のコミュニケーションが大事だと考えていた彼は、部下と昼食を共にするなど、日本では部下たちの率直な考えを聴く機会を作るよう心がけていました。

Aさん:「山本ってさぁ、海外駐在時代に現地の部下を誘って食事に行くことってあったのか?」
私 :「うん、よく一緒にランチしてたよ。気の良い仲間だったからね」
Aさん:「君は犯罪やテロには詳しいみたいだけど、セクハラって知ってる?」
私 :「勿論だよ。なんかやらかしたの?」

他意はなかった

Aさんは神妙な表情で、アメリカでの経験を語ってくれました。
彼はアメリカの販売支店に、営業マネージャーとして赴任していました。比較的小規模な事務所で、和気藹々とした良い雰囲気の職場だったそうです。
ある日の昼休み、気が付くと、事務所にはAさんと現地の若い女性スタッフだけになっていました。面倒見の良いAさんは、いつも誠実に仕事をしてくれている女性スタッフに気を使って声をかけました。
「お腹すいたでしょう。ハンバーガーでも一緒に食べにいかないか?」
すると、女性スタッフは少し微妙な笑顔で、「いいえ、ダイエット中なので…」と、やんわり断わられたそうです。
Aさんは笑顔で、「ダイエット?君、そんなに太ってないしチャーミングだよ。まっ、残念だけど、またの機会に」と、女性の肩をポンポンと叩いて独りで昼食に出ました。

このときAさんには全く他意はなかったのですが、「邪心」がなくても人の心を傷つけてしまうことがあるのです。
翌日、女性スタッフは、なぜか休暇をとって出社して来なかったそうです。

青ざめた人事マネージャー

2日後の朝、Aさんが出社すると、人事マネージャーが青ざめた表情で小声で話しかけてきました。
「ちょっと、別室でお話したいことがあります」
Aさんは人事マネージャーに促されるまま、会議室に入りました。

「やっかいなことになりました。あなたの部下の女性スタッフが弁護士をとおして、『セクシャル・ハラスメントを受けたので当社とあなたを訴える』と言ってきました。まずは事実の確認をさせてください」

Aさんは全く心当たりがなく、「はぁ?俺がセクハラ?」と、冤罪で逮捕されたような気分で人事マネージャーに事情を説明したそうです。
その後、会社の顧問弁護士が相手の弁護士と協議し、幸いにも訴訟に至らず解決したそうですが、職場は気まずい雰囲気になってしまい、Aさんは早期帰任になりました。解決に要した費用の額までは教えてくれませんでしたが、大きな出費であったことは容易に想像できます。

人権意識と訴訟リスク

アメリカでは、上司が部下を食事に誘うことは、セクハラと受け取られる可能性がある典型的なパターンです。多くの人がセクハラの訴訟リスクを警戒する環境下で、あえて事務所で二人きりのときに食事に誘ったら、女性は「自分は狙われている」という不安感を持つでしょう。
それ以外に、体型に関する話題、身体への接触、性に関する雑談、プライベートな話題、など、セクハラと認識されるさまざまなパターンがあります。また、セクハラは男女の性別に関係なく起こり得ることに注意が必要です。
人権意識が浸透し、訴訟社会と言われているアメリカに赴任する際には、必ずセクハラ研修を受講したりマニュアルなどを一読したりして、理解を深めておくことをお勧めします。
日本でも、男女雇用機会均等法などの法整備や行政・メディアの啓発により人権意識が高まっていますが、まだまだ十分ではないと言われています。日本で許容されていることが、アメリカでは問題視される場合があることを知っておかなければなりません。

Aさん:「俺って、そんなに悪いことしたのかな?ハンバーガー食べに行こうって誘っただけなんだけどね」
私 :「李下に冠を正さない慎重さが必要なんだ。でも警戒しすぎると職場の風とおしが悪くなってしまうから、コミュニケーションのとり方に工夫が必要だよね。立場の弱い人の心を傷つけても何も感じない思いやりのない鈍い感性では、マネージメントやっちゃダメだってことだよ。それは日本にいても、どこにいても、家族に対してだって同じだからね。」
Aさん:「べらぼうに高い勉強代だった。反省しなきゃいけないな…」

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※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。

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