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海外での実践的危機管理~海外進出企業編

【第11回】今後、どうなりそうか?

情勢分析は占いか?

昨年、久しぶりに長年の友人と会い、喫茶店で話し込みました。

友人:「おまえの得意技ってさ、情勢分析なんだろ?」

私 :「得意技ではないけど、主に情勢の予測を依頼されるよ」

友人:「ほお。実は転職しようかどうか迷っているんだけど、俺、どうなりそうかな?」

私 :「あのさ、俺、占い師じゃないから」

私の友人だけでなく、誰でも将来的に自分がどうなりそうか予測がつかないとき、不安を感じるものです。企業の経営者も同様に「予測がつかない」事象に直面したとき、判断の妥当性に自信が持てず悩むのです。だからといって、街の占い師に会って、「将来、どうなりそうですか?」と相談する人は少ないでしょう。

歴史を学び、ときを読む

危機事象は過去からの経緯、もっと長い視点で言えば「歴史」の流れがあって、その結果として現在直面している事象が発生していると考えるのが情勢分析を行ううえで必要です。そして、今、目の前で起こっている危機事象がさまざまな国、地域、人々に影響を与えて、将来のさらなる情勢変化を引き起こす要因となるため、どの方向の延長線に向かって推移していく確率が高いのか、仮説を立てることが情勢分析の醍醐味といえるでしょう。最初は細かく現状を観察し、次に全体像を鳥瞰し、最後に過去から現在に至り未来への流れを読んで、「今後、想定される事態」を描き出すのです。

新型コロナウイルス感染症による混乱の中で…

昨春、新型コロナウイルス感染症の急速な拡大で、多くの海外進出企業が駐在員、帯同家族、出張者の退避帰国、現地残留の対応、衛生用品や生活物資の支援輸送などの対応で大きく混乱しました。また、駐在員が引き上げたあとの海外事業所の保全措置、サプライチェーンの維持、リモートによる現地従業員とのやり取りなど、事業継続対応に大わらわだったと思います。本コラム執筆時点においても、多くの海外進出企業で必死の現状復帰努力が行われているところです。

一方で入国規制や物流停止の影響は免れなかったものの、社内の混乱を最低限に抑えて粛々と海外事業の現状復帰に取り組むことができた企業が多くあることも事実です。
では、対処できた企業とそうでない企業との違いは、一体何だったのでしょうか?

明暗を分けた「想定と準備」

2009年に発生した新型インフルエンザのパンデミックを教訓に、多くの企業が「感染症パンデミック対策」や「事業継続計画」を策定し導入しました。その内容の多くが、今回の新型コロナウイルス感染症のケースでも活用されたと聞いています。
混乱を低減できた企業の多くは、感染拡大によって発生する事態を段階別に分類して想定し「どこで、だれが、何を、どうする」ということを具体的に準備しておいて、社長を本部長とした緊急対策本部を立ち上げ、組織的な対応をすることができたのでしょう。

新型インフルエンザ発生後に海外進出企業が策定した行動計画の中には、「出入国の制限」「現地政府による感染者、疑い患者、濃厚接触者、感染区域などの強制隔離措置」「軍による行動規制」「航空便の停止」「物流の停止」「現地医療機関の混乱」「衛生用品の不足」「生活物資の不足」「社会不安の発生」「退避帰国者の隔離措置」「海外事業所の閉鎖と保全措置」など、既に想定したものがありました。また、少なくとも検討課題に挙げていた企業も多かったと記憶しています。

つまり、混乱を低減できた企業は、過去の教訓に加えて想像力を駆使し、感染症パンデミックが起こった場合に「想定される事態」を描き、あらかじめ対策を講じていたからこそ、冷静な対応ができたと言えます。

不確実性の低減

海外でのビジネスは日本とは異なる環境であるために、企業にとって先を読むことが難しく、危機事象に遭遇したときの対応が遅れることも、しばしば起こります。
「情勢分析が何に役に立つのか」と問われたら、私は「不確実性の低減」と答えるようにしています。不確実性から生じる将来への強い不安は、不必要な企業内部の混乱を引き起こして判断を遅らせてしまう、危機管理上の主要リスクの一つです。「今後、どうなりそうか?」を想定して対応を準備しておけば、冷静で迅速な判断をすることができる確率が高まり、焦って闇雲に走り回るより被害を低減できる確率も遥かに高くなるのです。

「備えあれば憂いなし」の意味は、歴史や過去の経緯を正しく学び、想像力を駆使して「想定」の精度を上げる努力をし、しっかり準備をしておけば、先を予測しながら平常心で危機事象に対応できると言えるでしょう。

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※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。

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