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株式会社 日立システムズ

海外での実践的危機管理~海外進出企業編

【第9回】今、何が起こっているのか?

情勢分析って何なの?

昨年、会社員だったころの同僚と久しぶりに話す機会がありました。彼は長年の友人なので、率直すぎる会話になりました。

元同僚:「やまもっちゃんてさ、会社辞めてから、海外危機管理なんとかっていう仕事やってるんだろ?」

私  :「海外危機管理コンサルタントね。いい加減、覚えてくれよ」

元同僚:「会社にいるときから、お前は怪しげだったからな。具体的に何やってんの?」

私  :「そうだな。一日中、海外の報道とか、資料とか、読んでるよ」

元同僚:「ふーん…、よく分からん仕事だ。お前、相変わらず怪しい奴だな」

海外危機管理の基本

海外進出企業で海外危機管理を担当している人のほとんどは、海外の事件・事故の検出作業から一日の仕事が始まります。
その仕事はとても退屈ですが、会社の誰よりも早く事件・事故の発生をキャッチして、社内と海外事業所への「情報共有」「注意喚起」「渡航可否判断」などを行うのが使命です。
場合によっては、緊急対策本部を立ち上げて対応の検討、対処行動の指示、退避支援など、会社の危機管理対応の要としての役割を果たすのです。

普段はあまり「目を見張るような」事件や事故は発生しませんが、だからといって油断していると重要危険情報を見逃してしまい、初動対応の遅れから重大な人的・経済的損害に発展してしまう場合があります。
海外危険情報の収集は企業の海外危機管理の基本中の基本で、「今、何が起こっているのか?」をタイムリーかつ正確に知り、対処行動につなげていくための最初のインプットと言えます。
そのため、規模の大きな海外事業を運営する大企業の海外危機管理担当部門は、日々の情報収集や情勢監視に、熱心に取り組んでいます。

しかし一方で、比較的小規模な海外事業を営む企業においても、海外事業所所在国のみならず、世界の治安情勢の著しい変化をキャッチすることは非常に重要です。今回の新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが良い教訓で、近年、国際社会は「ヒト」「モノ」「カネ」が国境を越えて密接に連携しており、ある国で顕在化したリスクに世界中が影響を受ける事態に発展することがあるからです。

さまざまな情報源

企業の海外危機管理担当者が情報収集をする際、さまざまな情報源を駆使する必要があります。一般的な情報源は、概ね以下の通りです。

  • 外務省海外安全ホームページの危険情報
  • 日本国在外公館が配信する危険情報(たびレジ登録によるメール配信)
  • 主要欧米諸国の外務省が発信している危険情報
  • 日本の各報道機関
  • 海外の主要報道機関
  • 海外事業所所在国の報道機関
  • 海外事業所が収集した情報
  • 海外危機管理専門会社などから購入する情報
  • 旅行会社、物流会社などの提携先企業からの情報
    など

このように、日々、膨大な量の情報が飛び交うなか、海外危機管理担当者は「今、何が起こっているか?」を知るために、悪戦苦闘しているのです。

情報の処理

インテリジェンス(情報分析)の専門家によると、収集した情報は大まかに5種類に分類されると言われています。

情報の種類

  1. 事実に基づいた情報
  2. 事実ではない情報
  3. 事実と事実でないものが混ざった情報
  4. 誤認、または恣意的に事実に基づかずリークされる情報
  5. まだ知らない情報

ここで問題になるのは、入手した情報のすべてが「事実とは限らない」ということです。そのため、収集した情報に対して「分類」「信頼性の評価」などの「処理」を行う必要があります。そう整理整頓した情報をもとに、「今、何が起こっているのか?」を可能な限り正確に描き出して、妥当な対処行動につなげていくのです。
逆に言えば、海外危機管理体制を持たず、情報収集も行っていない海外進出企業は、「羅針盤の無い船」で暗い海を航行しているに等しいと言えるでしょう。

70%が霧の中

困ったことに、インテリジェンスの常識では、前述の「5. まだ知らない情報」が圧倒的に多く、丁寧に情報を集めたとしても全体の30%が分かれば大成功で、残りの70%は「霧の中」だと言われています。
つまり、「今、何が起こっているか?」を正確に知ることは、海外危機管理上は最も重要ですが、実は最も困難なことなのです。

世界の治安情勢は昔も今も常に混沌としており、これからも「いつ、どこで、何が起こるか分からない」状況に変化はないでしょう。海外進出に余念なく取り組んできた日本企業は、これからも「不確実性」と「偶発性」に挑戦せざるを得ない状況を、果敢に乗り越えていかなければなりません。
今回の新型コロナウイルス感染症による国際社会の混乱の影響は計り知れず、日本企業も例外ではなく、多大な影響から免れることはできませんでした。その苦い経験を通して、安全配慮と事業継続の両面から精度の高い情報収集機能の重要性が、以前にも増して強く認識され始めています。

火の見やぐら?

元同僚:「つまり、火の見やぐらみたいなもんだよな?」

私  :「ちょっと違うけど、まあ、そうだな。近い将来、霧の中を手探りで歩く羽目にならないように、会社の中に精度の高い海外情勢の見張り番を置いとかなきゃいけない時代が、きっとくるよ」

「海外危機管理」に関するクイズにチャレンジしてみませんか?

※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。

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