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株式会社 日立システムズ

海外での実践的危機管理~海外進出企業編

【第7回】突然の帰国

一夜明けたら、別世界

企業の海外危機管理担当者は平時においては情報収集、危険情報の抽出・分析、海外駐在員や出張者への注意喚起などをされています。実は、こうした仕事は非常に地味で、海外で大きな事件が起こらない限り脚光を浴びることはなく、社内では「あの人、いったい何の仕事している人なのだろう?」と冷ややかな視線を向けられることもあるそうです。

ところが、海外駐在員、帯同家族、出張者の緊急退避が視野に入るような大事件が発生したときは一転します。
海外では戦争、クーデター、暴動、大規模テロ、自然災害、感染症パンデミックなどによって現地情勢が著しく悪化し、海外駐在員が自力で退避することが困難になる場合があります。
そのとき、海外危機管理担当者が旗振り役になって、社内の経営陣と全部門の力を結集して駐在員、帯同家族、出張者を安全な場所まで退避させ、現地従業員の安全にも配慮しながら事業継続を確保するため、全力で取り組むのです。

一方で、海外で活動する駐在員、出張者は「一夜明けたら、別世界」に直面する可能性が常にあるということを肝に銘じておくべきであり、「いつでも退避可能」な準備と心構えが必要です。

いつ逃げたらいいのか?

海外で緊急退避が必要な大事件が発生したとき、顧客企業の海外危機管理担当者から危機管理コンサルティング会社、旅行会社、海外赴任支援会社などに、現地情勢の詳細、航空便の運行状況とは別に、必ず聞かれることがあるそうです。
その問いとは、
「他社はどういう対応をしているか?」。

民間企業に「海外での緊急事態」に慣れっこの人は、ほとんどいません。社内の誰にとっても初めて経験することで、これからどうなるか予測が困難なため、自分たちの判断の妥当性に自信が持てず、経営陣も含めて対応にあたる全員が不安にかられます。
そのため、どうしても「他社はどういう対応かな?」という「空気」が気になるのです。確かに、現地で親会社や顧客企業に物やサービスを供給している企業にとって、必要な情報かもしれません。しかしながら、冷静に考えてみると、物やサービスは事態の鎮静化や、日本本社や他の海外事業所が肩代わりすることで挽回の余地はありますが、駐在員や帯同家族が死んでしまったら取り返すことはできません。「まだ、どこの会社も逃げてないし、真っ先に逃げるのも気が引けるな…」という実際の発生事象とはまったく無関係な理由で退避指示を先延ばしにしてしまった結果、駐在員や帯同家族に死傷者が出てしまったら、「信用」という最も大切な資産を失う結果になりかねません。
他社の動静を知ることは実務上は非常に重要ですが、他社も自分たちと同様に「どうしていいか分からず、様子見をしている」公算が大きいのです。他社と足並みを揃えようとして逃げ遅れたとしても、他社が責任をとってくれるわけではありません。当然のことながら、究極的には「自分たちの会社のことは、自分たちの責任で、自分たちで決める」という気概が必要なのです。

逃げ時の目安を決めておく

海外危機管理体制が導入されている企業では「海外危機管理規程」が制定化されています。その規程では、多くの企業で発生事象の危険度を

  1. 「情勢注視・待機」
  2. 「帰国勧奨」
  3. 「退避開始」
  4. 「全面退避」

などの4段階程度に区分けし、レベルごとに「帯同家族」「一般駐在員、出張者」「事業所責任者」というような優先順位で退避することを決めています。これは海外進出企業にとって、退避を迅速かつ安全に実行するための重要な決め事です。
また、緊急帰国や第三国に退避した際の宿泊施設の手配や負傷者や病人への対応についても、あらかじめ準備をしておくことが必要でしょう。退避は、決して「逃げたら完了」ということではありません。退避後の身体と心のケア、人事上の取扱い、事業継続措置なども含め、正常化までの全行程を「退避計画」に織り込んでおくことが重要です。

安全への祈り

注意しておかなければならないのは、実際の海外緊急事態は必ずしも段階を追って状況が悪化するとは限らないということです。時間をかけて徐々に悪化する場合もあれば、一足飛びに全面退避が必要になる場合もあります。そのため、海外危機管理担当者は海外事業所との連携を密にして日常の情報収集、分析、共有、注意喚起を怠らず、海外危機管理規程の退避タイミングの枠組みが適用できない状況も想定しながら、適切な「逃げ時」を指示する必要があるのです。

私自身はお客さまから「逃げ時」を聞かれたら、「空港までの移動が困難になり、空港機能が停止し、航空便が欠航する」前に退避することを推奨しています。最も重要だと思っていることは、将来のトラウマにならないよう、「帯同子女」に凄惨で過酷な光景を見せないように最大限の配慮をすることです。

「退避計画」は、最もぜい弱で保護が必要な子供たちを基準に策定すべきで、結果として早期の退避行動着手が計画に織り込まれることになります。それは、退避計画に「安全への祈り」を込めておくことだと言えるでしょう。

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※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。

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