
2025年11月にオンライン開催されて好評を博した「生成AIセミナー ~日立システムズが『ドメインナレッジ×生成AI』でDXを支援~」。生成AI市場は「とりあえず生成AIを導入する」傾向は終わりを迎え「専門性の高い業務で、生成AI活用を定着化し、着実に課題を解決する」ことが求められています。日立システムズは、産業・公共・金融など、幅広い分野のお客さまの課題解決を支援しています。本セミナーではそこで培ったドメインナレッジと生成AIを組み合わせた、日立システムズの生成AIサービス群のコンセプトから詳細までをご紹介しました。本稿では、「第5部 コンタクトセンターへの生成AI適用事例と今後の展望」の内容をお送りします。
ウェビナー登壇者:
株式会社日立システムズ
ビジネスイノベーション統括本部
AI活用推進エンジニアリング本部
木村英志
コンタクトセンターや問い合わせ業務のAIシフトをめざす方へ、日立システムズの事例をご紹介します。
私たちは効率化に向けて、大きく4ステップで取り組みを進めました。当初、「AIの知見はあるけれど、生成AIを具体的にどこへ適用すればいいか分からない」という状態でした。そこでまず、コンタクトセンターのすべての業務を洗い出すことにしました。
その際、コンタクトセンター事業のライフサイクル全体を見るという視点を大切にしました。引き合いから構築、運用、そしてクロージングまで漏れがないよう調査したことで、さまざまな担当者が、多種多様なデータを使って業務を行なっていること分かりました。
次に行なったのが、洗い出した業務ごとの特性把握です。「人」「データ」「コスト」という3つの視点に改めて着目し、各窓口へのヒアリングを実施しました。難易度やノウハウ(データ)の記録方法、作業工数などを明らかにすることで、どこにAIを適用すれば効果が大きいかを見極めていきました。
続いて、現場や開発メンバーへの生成AIリテラシー教育を実施。洗い出した業務が本当にAIに適用できるか、スクリーニングを行いました。当時の生成AIはテキストのみでしたので、テキストを利用してテキストを生成すること、かつ合計作業コストが高い業務、期待が多かった作業を各窓口からヒアリングし、業務機能としてまとめました。例えば、FAQ作成、更新をまとめた自動生成などが代表となります。
具体的な活用アイデアを紹介します。問い合わせを受け付けますと窓口ではマニュアルやFAQを参考に回答を検討しますが「どのマニュアルを見ればいいかわからない」「そもそも載っていない」といったことが起きます。そのたびに熟練者に聞いたり、時間をかけて調べ直したりするため、お客さまをお待たせしてしまうのが課題でした。
そこで、マニュアルや過去の事例をすべてAIに把握させ、問い合わせに対して回答案を自動で提示してもらう仕組みを考えました。
検証の結果、AIが活用できる業務とそうでない業務がはっきりし、「回答案の作成」「事例の登録」「FAQ案の作成」の3つは有効であることが分かり、すでに社内での本格運用を始めています。
導入にあたっては、まず標準的なプロンプトで試して効果を測り、必要に応じて調整するというステップを踏んでいます。中でも事例の自動作成は特に活用が進んでおり、現在1,000以上の電話回線で導入される規模になっています。
ここからは「AIエージェント」の実装についてお話しします。これまでの取り組みで見えてきた課題、それは「個別の作業だけをAIに変えても、調整の手間がかかる」ということです。特に、決まった手順がある業務の場合、一部にAIを入れるために前後の作業も含めて調整しなければならず、現場への負担が意外と大きいことが分かりました。そこで現在は、作業単位での置き換えではなく業務フロー全体を再構築するアプローチへと進化させています。
AIと人がスムーズに共存するためには、対象業務だけでなくその周辺にある人の作業やデータの流れまで見定める必要があります。
例えばFAQ作成を例に挙げましょう。単にAIで案を作るだけでは不十分です。業務を深く掘り下げると、「問い合わせ傾向の分析」や「既存FAQの改廃」、「マニュアルの更新」など、密接に関わる前後の業務が見えてきます。これらを無視して一部だけをAI化しても、全体の効率化効果は半減してしまいます。
そこで私たちは、問い合わせ傾向レポート機能などを追加し、業務フロー全体がスムーズに回るよう再構築しました。このようにデータ蓄積まで兼ねた全体フローを描き、将来的な改善サイクルまで提示することで、現場の納得感を得やすくなるというメリットも生まれています。
以前は個別にKPIを設定していましたが、現在はデータのライフサイクル全体での効果を測れる共通のKPIに見直しました。さらに、業務に必要な機能をあらかじめ標準パックとしてまとめ、それを展開する形へとシフトしています。これにより、個別の調整コストを減らし組織全体での効果最大化をめざしています。
今回ご紹介したアプローチは、コンタクトセンターに限らずさまざまな業界で応用できるものです。皆さまの取り組みのヒントとなり、より良い顧客接点を共に創っていくきっかけになれば幸いです。
日立システムズは、SIerでありながら自らコンタクトセンター運営も行うというユニークな存在です。現場の業務を知り尽くした知識とITの技術力を掛け合わせ、お客さまの継続的な改善をご支援します。AI活用にお困りの際はぜひお気軽にご相談ください。
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