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なぜ、優秀な若手ほど辞めていくのか?
~成長実感とキャリアの見える化が組織を変える~

「優秀な若手ほど、突然辞めていく」といった悩みを多くの企業人事担当者からうかがいます。働きやすく、学びやすい環境を整えているのに、これ以上何をすればいいのか——そんな嘆きも聞かれます。本稿では、優秀な若手がなぜ辞めていくのか、その背景に迫るとともに、若手の離職を防ぐために必要なことを解説します。

優秀な若手ほど、ある日突然辞めていく

「待遇も悪くない、人間関係も良好、残業も少ない。それなのに、将来を期待していた優秀な若手がある日突然、退職届を出してくる」
今、従業員1,000名以上の大企業の人事部門が最も頭を悩ませているリアルな課題です。
企業としては、研修もしっかり準備しており、若手が安心して学べる環境は用意しています。また、離職防止のために、待遇改善や働き方改善にもいち早く対応してきた自負も持っています。「これ以上、何をすればいいのかわからない」というのが、人事管理者の本音かもしれません。
待遇面では不満がないはずの職場で、なぜ彼らは離職を選ぶのでしょうか。その根本的な理由は、「今の環境に対する不満」ではなく、「この環境に居続ける将来への不安」があるからです。現代の若手社員が、表立った不満を示さないまま離職に向かう、いわゆる『サイレント離職』を防ぐために、人事はその背景に何があるのか知る必要があります。

離職理由の正体は「成長実感が得られない」という焦り

若手の離職理由として見過ごせないのは、「成長実感が得られない」というものです。この言葉にはどのような焦りが隠されているのでしょうか。

第一に挙げられるのが、「ゆるブラック企業」への恐怖です。
「ゆるブラック企業」とは、残業が少なく人間関係も良好で、働きやすい環境が整っているものの、仕事での成長機会が乏しい(と若手が感じる)企業を指します。
『大手企業における若手育成状況調査報告書』(リクルートワークス研究所/2022年)によると、「このまま所属する会社の仕事をしていても成⾧できないと感じる」について、「強くそう思う・そう思う」という回答が36.9%を占めています。
加えて、「自分は別の会社や部署で通用しなくなるのではないかと感じる」については、45.6%が「強くそう思う・そう思う」と回答しています。
残業がなく居心地が良い反面、社外の市場で通用するスキルが身についていないと感じる環境を、若手は「ゆるブラック」と呼び、将来に対する強い危機感を抱く傾向にあります。

第二に、優秀な若手ほど「タイムパフォーマンス(タイパ)」への意識が強いことが挙げられます。
同じ調査において「いつまで現在在籍する会社で働き続けたいか」について質問したところ、全体の73.8%が現在の会社で働くのは10年以下の期間であると回答しています。

20代という期間は、ビジネスパーソンとしての土台を築く非常に貴重な時間です。その時間を、ただ「こなすだけの業務」に費やすことへの焦りが存在しています。

彼らの本音は、「頑張っても報われない」と嘆いているのではなく、「頑張っても成長できない」ことに対する危機感です。「ここにいても自分の価値が上がらない」と感じた瞬間に、優秀な若手は次のステージへと動いてしまうのです。優秀な若手が辞める本質的な理由は「成長実感の欠如」であり、待遇・環境整備とはまた別の問題だと気づく必要があります。

なぜ大企業で「成長実感」が迷子になるのか

元々は学ぶ意欲も成長意欲も高かった優秀層が、なぜ大手に入社した途端に「成長実感」を失ってしまうのでしょうか。そこには大企業ならではの構造的な要因があります。

業務の細分化と全体像の欠如

大きな企業・組織ゆえに、任される仕事が一部分で限定的に感じる面があります。自分が何の役に立っているのか、全体にとってどれほどの価値や貢献を生んでいるのかが見えにくいことも考えられます。

「社内調整」がスキルの中心になる歪み

社外でも通用する汎用的なスキルではなく、社内を円滑に回すための調整業務を中心としたスキルを身に着けているように感じてしまう点です。長年の慣習による目的の不明確な社内独自のローカルルールを身につけても自分の成長につながらないという不安を持つ場合もあります。

インプット過多・アウトプット過少

研修はたくさん用意されているが、それを実際に現場で試す「打席」が足りない点です。経験を通して学ぶ意欲を持っていても、結果として、知識が経験(=成長実感)に変わっていかないことが想定されます。



これらの要因が重なることで、「自分の強みが分からない」「仕事でどのように成長できるのか見えない」「将来のイメージが描けない」という状態に陥り、結果として成長実感が得られない、当然ながら会社が用意した学習システムも積極的に活用しようという意識が薄れていきます。

若手が「成長実感」を持つための仕組みとは

失われがちな「成長実感」ですが、実は単に個人の感覚的な問題ではなく、組織が仕組みとしてデザインできるものです。若手の離職を防止し、定着を図るためには、研修を「提供する」だけでは不十分であり、スキルを身につけているという実感と将来を見据えたキャリアの可視化と連動させることが大切です。

解決するための仕組みとして以下の4点のステップが考えられます。

1. スキルの可視化(自分の現在地を知る)

「今、何がどの程度できているのか」「会社に在籍する中で、何ができるようになったか」を客観的なデータ(スキルマップ等)で示し、目に見える成長実感を担保します。まずは現状の自分のスキルと強みを把握することがすべてのスタートとなります。

2. キャリアの可視化(めざす目的地を知る)

「将来どうなりたいのか」といった、社員がありたい姿を自己探索する機会を作ります。今後仮に変化していくことがあるとしても、このスキルを磨けば、どんなキャリア(希望の部署やプロジェクトなど)に手が届くのか、キャリアパスやロードマップを明示します。中長期的なキャリアを可視化することで、めざすべき成長イメージを明確に描けるようになります。

3. 自律学習へのドライブ

現在地と目的地が明確になることで、スキルギャップを自覚し「足りないスキルを自発的に学ぶ」という主体性が生まれます。

4. 制度との連動(打席の提供)

学んだ成果を、社内公募やFA(フリーエージェント)制度、新規プロジェクトへの抜擢という形で「出口(打席)」とつなぎます。これがさらなる大きな成長実感へと循環します。

優秀な若手の離職を防止するためには、「現状のスキルの可視化 → 中長期的なキャリアの可視化 → 押しつけではない自律的な学習」というサイクルを支援する仕組みが不可欠なのです。

まとめ:離職防止を「攻めの人事」に変える

若手の離職を防止するこれらの取り組みは、単なる「守りの施策」ではありません。
社員が自身の強みを理解し、生き生きと自身にあった環境で働いてもらうことは、強力な離職防止策となります。そのために人事は、教育にとどまらず、FA制度や公募制度などと連携しながら、「成長実感」を持てる仕組みを組織全体で整える必要があります。
さらにいえば、このような環境を整えることは、採用活動時に応募者に対する強力なアピールにもなる「攻めの組織変革」といえます。
単なる若手の離職防止策を超えた、攻めの組織改革につながる仕組みづくり。今すぐ始めてみてはいかがでしょうか。

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