

従業員一人ひとりのスキルを把握し、人財の配置や育成に生かす「スキルマネジメント」が注目されています。これは、少子高齢化を背景とした人手不足が深刻化する中で、企業は自社人財の力をできる限り効果的に活用する必要があるからです。また「人的資本経営」の浸透などに伴い、従業員のスキルの可視化や、その戦略的な活用への関心も高まっています。
とはいえ、スキル情報の管理が属人的に行われており、従業員のスキルを十分に活用しきれていない企業も少なくありません。スキルマネジメントを導入し、どのように推進すればいいのか悩んでいる担当者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、スキルマネジメントの基本的な考え方とタレントマネジメントとの違いのほか、導入するメリットとよくある課題などについて解説します。
スキルマネジメント(スキル管理)とは、従業員が保有する資格・知識・経験などのスキル情報を可視化し、社内で共有・活用できるように整理する取り組みです。管理対象となるスキルには、業務に必要な専門知識や資格だけでなく、マネジメント能力やコミュニケーション能力といったソフトスキルも含まれます。
可視化したスキル情報は、人財の配置や育成、そして評価など、さまざまな人事施策の基礎データとして活用されます。近年は、Excelなどによる手作業の管理から、専用システムを用いた一元管理へと移行する企業も増えています。
タレントマネジメントとは、従業員の才能・資質・能力を経営資源と捉え、有効活用して個人と組織の成果を最大化する取り組みのことです。
スキルマネジメントが「現時点でどのようなスキルを保有しているのか」を可視化する取り組みであるのに対し、タレントマネジメントは可視化されたスキルをもとに配置転換や育成などの人事戦略に反映させる、より広い概念といえるでしょう。
つまり、スキルマネジメントはタレントマネジメントを実現するための、土台となる取り組みと位置づけられるのです。
タスクマネジメントとは、業務を分解した最小単位である「タスク」の進捗や期限を管理し、業務を効率的に進めるための手法のことです。
スキルマネジメントが「誰が、どのような能力を持っているのか」という人財の能力に着目するのに対し、タスクマネジメントは「何を、いつまでに行うのか」という業務の進行管理に着目する点で対象が異なります。
ただ、スキルマネジメントとタスクマネジメントを組み合わせるメリットもあります。保有スキルの情報をもとにタスクを割り振る仕組みを整えれば、担当者の勘や経験などに頼らず、より精度の高いタスク管理が可能になるでしょう。

スキルマネジメント(スキル管理)が重視される背景には、社会環境や労働市場の変化に伴ういくつかの理由があります。ここでは、スキルマネジメントが企業にとって重要な理由について解説します。
スキルマネジメントが企業にとって重要な理由のひとつに、人的資本経営の普及があります。
経済産業省の定義によれば、”人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。”(※1)
2023年3月期決算からは、”企業内容等の開示に関する内閣府令等の改正により、有価証券報告書等において、「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄を新設し、サステナビリティ情報の開示が求められることとなりました。”(※2)
有価証券報告書を発行する国内の大手企業を対象に、人的資本に関する情報開示が義務化されたことにより、従業員のスキル可視化と、その活用の重要性が高まっているのです。
人的資本経営を実践するうえでも、スキルマネジメントは従業員の能力を把握するための土台となる取り組みといえるでしょう。
少子高齢化により労働人口の減少が進み、新卒一括採用の変化などが進む昨今、新たな人財採用に頼った人員確保は難しくなっています。限られた人財で事業を維持・成長させるには、既存の従業員が持つスキルを最大限に活用することが不可欠です。その前提として、スキルマネジメントは重要性を増しています。
「従業員の中で誰がどのようなスキルを持っているのか」を把握できていれば、必要な人財を社内から迅速に確保できるようになるでしょう。
「スキルギャップ」とは、業務や役割で求められるスキル水準と、従業員が実際に保有するスキル水準との差を指します。スキルマネジメントによって個人・組織それぞれの単位でスキルギャップを可視化すれば、どの分野の育成に力を入れるべきなのかが明らかになるだけでなく、研修や自己学習の計画に落とし込めるようになるはずです。
不足しているスキルに的を絞った育成を行えるため、従業員の自律的な学習を促しやすくなる点も、スキルマネジメントのポイントです。組織全体で見たときも、事業戦略の実現に必要なスキルと現状とのギャップを把握できれば、優先度の高い育成投資の判断が容易になるでしょう。
スキルマネジメントが重要視される理由には、企業としての競争力維持・強化も挙げられます。顧客ニーズや技術の変化が速い現代においては、従業員のスキルを正確に把握し、変化に対応できる人財配置や育成を行うことが競争力の維持に直結するのがその理由です。
スキルマネジメントによって組織全体の強み・弱みを可視化できれば、事業戦略に応じた人財育成やスキルの底上げを計画的に進められるでしょう。

スキルマネジメント(スキル管理)を導入することで、企業は主に下記のメリットを得られます。
ここでは、スキルマネジメント導入のメリットについて解説します。
スキルマネジメント導入によって、人財配置の最適化が図れるのはメリットのひとつです。従業員一人ひとりのスキルを可視化することで、業務内容と個人の得意分野を照らし合わせた「適材適所」の人財配置が可能になります。
人事異動や新規プロジェクト立ち上げ時にも、必要なスキルを持つ人財を社内から素早く選定できるはずです。
スキルマネジメント導入は、スキル管理効率化のメリットももたらします。Excelなどでの管理では、スキル情報の更新に手間がかかるだけでなく、担当者によって管理方法にばらつきが生じるのがその理由です。
例えば、スキルマネジメントの専用システムを導入すれば、スキル情報の登録や更新、検索を一元化でき、管理業務の効率化につながるでしょう。
人財採用・育成計画の立案の際にも、スキルマネジメント導入のメリットを実感できるかもしれません。組織全体で不足しているスキルを可視化できれば、どのようなスキルを持つ人財を採用すべきか、具体的な採用計画を立てられるからです。
スキルマネジメント導入によって、個人のスキルの過不足も把握できるため、一人ひとりに合わせた育成計画を策定しやすくなる点もメリットといえます。
効率的なスキル継承は、スキルマネジメントのメリットとして挙げられるでしょう。ベテラン従業員が持つ専門知識や技術をスキルマネジメントで可視化しておくことで、退職や異動によるノウハウの喪失防止につながります。
「誰がどんなスキルを持ち、何を教えられるのか」が明確になるため、若手従業員への技術継承を計画的に進められるはずです。
スキルマネジメント(スキル管理)は多くのメリットがある一方、実際の運用ではさまざまな課題に直面することも少なくありません。ここでは、スキルマネジメントにおける課題について解説します。
「スキルマネジメントの方法がわからない」というのは、スキルマネジメントの課題として挙げられます。何を「スキル」として定義し、どのような基準で評価すればよいかが不明確なまま導入しようとすると、途中で運用が止まってしまうかもしれません。
スキルマネジメント導入時には、自社の事業内容や職種に応じて、管理すべきスキル項目や評価基準をあらかじめ整理しておくことが重要といえます。
スキル情報が更新されていないことも、スキルマネジメントでよくある課題です。導入時にスキル情報を登録しても、その後の更新が滞り、実態と異なる情報のまま放置されてしまうケースが多く見られます。
定期的な自己申告や上長によるレビューの機会を設けるなど、情報を更新し続ける仕組みをあらかじめ運用ルールに組み込んでおかなければ、スキル情報は意味のないものになってしまうかもしれません。
共有したスキル情報の活用が行われていないことも、スキルマネジメントにおける課題として挙げられがちです。スキル情報を可視化・共有しただけで満足してしまい、人財配置や育成計画などの具体的な施策に反映されないまま終わってしまうことがあります。
人事だけでなく、現場の管理職もスキル情報を活用できる仕組みや、活用を前提とした運用フローを整えることが必要といえるでしょう。

スキルマネジメント(スキル管理)は、主に「スキルマップの作成」と「スキルマネジメントシステムの導入」という2つの方法で進められます。ここでは、スキルマネジメント(スキル管理)の方法についてご紹介します。
スキルマップとは、従業員一人ひとりがどのような能力を持ち、それぞれどの程度まで習得しているのかを一覧表形式で整理したものです。職種や部署ごとに必要なスキル項目を洗い出し、各従業員の保有状況を段階評価などで記載することで、組織全体のスキルを「見える化」できるでしょう。
ただし、スキルマップの作成や更新には、手間や時間がかかります。また、評価基準が属人的になりやすいだけでなく、作成が目的化しがちな点にも注意が必要です。
従業員数が多い企業や、管理すべきスキル項目が多岐にわたる企業では、スキルマネジメントの方法として専用システムの導入がおすすめです。Excelなどでの管理には限界があるのが大きな理由です。
また、スキルマネジメントシステムを活用すれば、スキル情報の登録・更新・検索はもちろん、人財配置のシミュレーションから育成計画の立案まで、一元的に行うことも可能になるでしょう。
スキルマネジメントは、従業員のスキルを可視化し、人財配置や育成、スキル継承など幅広い人事施策に活用できる取り組みです。一方で、評価基準の整備や情報の更新・活用には運用面の課題を感じる企業も多いのも事実です。スキルマネジメントは、専用システムの導入によって推進を図るのがおすすめといえます。
日立システムズが提供する「人財管理プラットフォーム コーナーストーン」は、社員のスキルや強み・弱み、将来のキャリアパスまでを可視化し、評価だけにとどまらない継続的な人財育成を支援するタレントマネジメントシステムです。自社のスキルマネジメントを効率的に進めたい方は、ぜひコーナーストーンの導入をご検討ください。