第2回 (後編)
ドローン・ロボティクス事業推進プロジェクトは、
先端技術領域でのUXの未来を模索する
福田:またちょっと話は変わるんですが、前半でお話になっていたようなお客さまに飛び込んで行って隠れた課題や言葉を聞き出していくような向き合いのメソッドは、服部さんから次の世代にどのように受け継がれていくものなんですか?
服部:そこは大きな課題かもしれませんね。正直にいうと、まだ十分にできているとはいえないんです。お客さま案件ごとにフィードバックするというのはやっているんですけど、それを体系立てて伝えるみたいなことはできていないですね。ただ、話を整理していく、深いところを聞き出していくという点では、できるだけホワイトボードなどに文字や図にしながら話すことをチームミーティングなどでも意識していますし、「ちょっと書いてみてよ」という形で振ることもあります。PCで資料をディスプレイ投影して会話しているだけだと、なんか分かったつもりになって終わってしまうこともあるので。
福田:分かった気になると。
服部:手を動かしながら書いてみると「あれ、ここって具体的には…?」と疑問が出てきたり、全員参加型の打ち合わせにすることが多いように思います。そうすると自然と会話も広がり、認識がずれていたということも少なくっているかなと。ちょっとアナログなんですけどね。
お客さまとの打ち合わせでもホワイトボードにおっしゃっていただいたことを書いて、「ここはこういうことですよね?!」とか、「ここに課題が隠れていそうですが、どうでしょうか?」とかそういう会話になれば、だいぶ違うと思うんです。お客さまの頭の中をビジュアルにアウトプットしながら聞き出していくというのは、先ほどあった課題を中心に据えてというのにもつながっていくと考えています。あと「今日決まったことはこれ」、「次回はこう」というのも、明確に残せますし。
福田:ちなみに今の服部さんのメソッドや考え方は服部さんもまた先輩から学ばれたわけですよね。
服部:はい。先輩から学びましたね。ホワイトボードに書きだされていった内容に、「この部分はどうすべきだと思う?」みたいな問いかけがあって、「ここはこうするのが良いのでは?」と答えているうちに、いつの間にかその部分は自分が担当になっている。最初は巻き込み力がすごいなと思ってましたが、説明を受けるという受身の姿勢がいつの間にか主体的な姿勢に変わってたなと感じたときに、これは自分でもいろいろなシーンで使おうと思いましたね。
福田:以前に自分が居た会社の部下だったアートディレクターの女の子が、「嗅ぎ方」という言葉を良く使っていました。クライアントのもとに行ったときに、どれだけお前は「嗅げるのか」ということを部下に問いかけていて。依頼されていることの本質をちゃんと分かって作ることを大事にするアートディレクターだったんですね。「嗅ぎ方」が大事であるというふうに気付けると、結果として作るものがそれまで作っていたものよりも一歩二歩、相手の課題に踏み込んだ深いものになるし、作り手の達成感もより大きなものになる。今お話しいただいたことも、仕事が深くなると同時に喜びのツボの変化ですよね。今まで得られなかったツボみたいなことがそこで体験されたときに、この満足感いいなみたいなことがうまく好回転を生み出す瞬間が、きっとあるんでしょうね。
別に僕はよいしょするつもりもないんですけど、このインタビューを通じて、僕は日立システムズという会社の中で言語化されているわけではないけど、とても重要な企業遺伝子みたいなものに触れている気がするんです。お客さまとの向き合い方、課題解決に関してどう聞くのかということの重要性とか。また、さらにその先の課題を探っていく姿勢とか。それは企業文化なんだなと。違う方にお話しを伺った時も、運用を大切にする企業文化のお話をお聞きしたんです。UXという今時なメソッドとしてではなく、ずっと昔から存在し受け継がれてきたユーザー体験との向き合い方の文化として。
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