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株式会社 日立システムズ

専門家コラム:人を活かす心理学

【第16回】職場モラール ~意欲・士気の研究~

モラールとは

「うちの職場はモラールが低い」とか「わがチームのモラールは高い」など、職場や集団ではモラールという言葉もよく使われます。もとは兵士の戦闘意欲を意味する用語であったのが、集団への貢献に関わる個人の態度として、働く場面でも用いられるようになったものです。日本語では「勤労意欲」や「職場士気」などの言葉があてはめられています。
英語ではmoraleと綴りますが、末尾の「e」がなければモラル、つまり道徳心とか倫理という意味の言葉になります。私が学生時代に恩師(今では死語扱いですが)から聞いた話では、モラールという語が日本に入ってきたのは戦後だったようです。当初はモラルと混同され、『やはり労働の場には道徳心が必要ということだ』と、妙に感心されたそうです。それだけ当時の産業界では、まだなじみの薄い言葉であったということです。

モチベーションとの違い

モチベーションという語が一般に使われるようになる前は、このモラールという語が使われていました。士気や意欲という意味はモチベーションに重なるところがあり、二つの語がほぼ同義に用いられることは現在でも少なくありません。
しかし厳密に言うと、モラールはモチベーションとは異なる概念です。社会学者の尾高邦雄は、モラールを「仕事への満足」「仕事の意義の自覚」「集団への帰属意識」「集団の団結力」の4つの要因に分けています。
前の2つの要因は集団の中での個人の適応に関するもので、職務満足に焦点をあてたものといえます。これに対してあとの2つは、仲間との一体感や団結心といった集団維持意識に焦点が置かれており、「集団心」という言葉で表されることもあります。
このように、モラールは仕事への満足感や集団との一体感を中心に据えた態度の概念であり、目標達成に向かう個人のエネルギーに焦点を置くモチベーションの概念とは異なる面を持っています。

モラールを規定する要因

古い研究ですが、勤続年数とモラールの変化の関係を調べた研究があります。この研究によると、モラールは勤続3年を過ぎる頃から徐々に下降し、5年目から7年目あたりで最も低くなります。その後はまた徐々に上昇していくのですが、働き始めた頃の水準までには戻りません。

継続年数とモラール

(正田亘「産業心理学」恒星社厚生閣より)

このような緩いV字型の推移を示す原因としては、入社時は仕事や職場に対する期待などからモラールも高まるものの、環境に慣れて現実が見えてくるようになると、不満や将来に対する不安などが強まってモラールが低下することが考えられます。しかし、その後地位や仕事も安定して長期的な展望も持てるようになると、満足感も回復しモラールもまた上昇してくると考えられます。
「3日(みっか)、3月(みつき)、3年(さんねん)」という言葉は、芸事の修行などではプラスの意味(3日耐えれば3月は耐えられる。3月耐えられれば3年は耐えられる)で使われるようですが、働く場ではネガティブな意味(意欲が下がる頃)で使われることが多いようです。3年が危機のポイントになるという点では、モラールの変化の様相と共通するところがあるようにも見えますね。
もちろん、勤続年数がストレートにモラールに影響すると考えるのは早計です。勤めている間には、職場の異動や昇進、仕事内容や役割の変化など、さまざまな要因が絡んできます。これまでの研究でも多くのモラール規定要因が挙げられていますが、同僚や上司との人間関係要因、給与などの経済的報酬要因、仕事自体に関する要因が共通して見い出されています。

キャプションを入れてください。
研究者 見いだされたモラール規定要因
ハイマン 職務満足、職務条件、生産の順調性、公正な監督と給与、恵まれた昇進の機会、安全で衛生的環境
カッツ 職務満足、職場の人間関係、会社との一体感、賃金や昇進機会の満足
ベアーとレンク 組織との一体感、職務満足、直接的監督、同僚との親しみと協力、個人的報酬

モラールの測定

モラールを測定する場合には、心理学分野での態度測定をもとにした方法が用いられています。専門的な分野では、シカゴ大学の産業関係研究所で開発された従業員態度調査が知られていますが、これは我が国でも翻案・標準化され、従業員満足度調査として現在も多くの企業で利用されています。
測定方法としては、給与、仕事の負担、職場の人間関係、会社との一体感、昇進や向上の機会といった領域で複数の質問項目を用意し、各質問に対して用意された選択肢から1つを選びます。こうして得られた全質問に対する回答のうち肯定的な反応を総合することで、モラールの水準を示します。
このほかにも、面接手法、職場でのミスや仲間内のトラブル頻度、欠勤や遅刻の回数などを手がかりに、職場全体のモラールをとらえるやり方もあります。
気をつけねばならないのは、こうした調査を実施しながら出てきた問題点に対して何の対策も講じなかったり、不平や不満を聞くだけで何の改善もなさないままだと、経営に対する不信感がかえって増大し、仕事への意欲が低下してしまうことにもつながりかねません。

モラールからモチベーションへ

モラールが仕事への意欲を反映するものであるならば、モラールが高いことはすなわち仕事意欲が高く、生産性も高まることが期待できます。しかしながら、これまでの研究ではモラールと生産性の間には単純な関係は見い出されてはいません。勤続年数との関係でも触れたように、モラールには多くの要因が絡んでおり、それらが相互に関連し合って複雑な様相をしめすので、なかなか単純化した結論を見い出すことは容易ではないのです。
また先に紹介したように、モラール概念には集団の団結心と個人満足感の2つの意味が含まれることもあって、意欲と言いながらその研究の対象はときに曖昧なものにもなってしまうことがあります。そのようなことから、実践的な活用の場はさておき意欲に関する研究という面では、近年はモラール概念よりもモチベーションの概念に基づく研究が主流になってきています。

  • ※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。
 
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