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株式会社 日立システムズ

専門家コラム:人を活かす心理学

【第2回】楽観主義者は成績がよい?

グラスにお酒が半分。あなたならこれをどう見ますか?

「まだ半分ある」と見る人は、ものごとにクヨクヨしない反面、おおまかでアバウトなところがあり、一方「もう半分しかない」と見る人は、細部の違いによく気がつく半面、落ち込みやすい人が多いといわれています。

通常、前者は楽観的思考(楽観主義)、後者は悲観的思考(悲観主義)といわれます。

セリグマンの研究

アメリカ心理学会の会長も務めたマーチン・セリグマン教授は、ものごとを楽観的にとらえるか悲観的にとらえるかによって仕事成績にも差が出ることを明らかにしました。
セリグマン教授によれば、楽観的思考の人の特徴は、日常生活で何か良いこと、例えば取りかかっていた仕事がうまくいったときなどによく現れます。このようなとき、楽観的思考の人は、それは「自分のがんばりが報いられたのだ」とその原因を自分に帰し、「いつでも精一杯やるのが私の生き方だ」とその原因は継続すると考え、「自分はがんばり屋として友人から一目置かれている」とその良い影響を広く考えます。

一方、悲観的思考の人の特徴は、なにか悪い事、たとえば取りかかっていた仕事がうまくいかなかったときなどによく現れます。悲観的思考の人は、たとえば、「自分は口べただから失敗したのだ」とその原因を自分のせいにし、「自分の口べたはすぐには直らない」と、その原因は今後もずっと続くと考え、「この口べたのため、仕事だけではなく友人との人間関係もうまく行かない」と、その原因の悪い影響を広く考えます。

こうしたものごとのとらえ方を、心理学では「説明スタイル」と呼びます。セリグマン教授らは生命保険会社の営業員を対象に、楽観的な説明スタイルと悲観的な説明スタイルで営業員の成績に違いがあるかどうかを調べました。その結果は大変興味深いものでした。教授らの調査によれば、1年目の販売成績は、楽観的思考が強い営業員では悲観的思考が強い営業員に比べて29 %高く、2年目になるとなんと130%と2倍以上の開きが出ました。また、入社2年まで在職した者とそれまでに離職した者についてみると、2年間の仕事継続者の67%は楽観的思考の営業員である一方、離職者の59%は悲観的思考の営業員でした。つまり、楽観的・悲観的という説明スタイルの違いが、実際の販売成績と仕事継続率に大きな差を生み出していたのです。

楽観主義者は日本でも高成績

生命保険は、契約者にとっては自分の死亡後にかたちになる商品であって契約時点では目に見えないものであり、その営業員にとっても契約成立までに苦労が多く、一説によると2年間で8割近くが辞めるという、わが国でも極めて早期離職率の高い職業であることが知られています。セリグマン教授らの研究結果が日本の生命保険営業員にもあてはまるのであれば、こうした早期離職率の高さに歯止めをかけることもできるかもしれません。そこで筆者らは、日本の生命保険会社女性営業員400名の協力を得て調査を行い、有効データ361名について説明スタイルと営業成績の関係を調べてみました。

2つのグラフは、成績に及ぼす楽観的思考のプラスまたはマイナス効果を見るために、361名の営業員を楽観的思考の強弱で2群に分けて、新規契約件数と新規契約高の平均を比較したものです。もし楽観的思考が成績にプラスに働くとすれば、楽観的思考が強い者の方が弱い者よりも成績は良いはずです。
グラフでは、契約件数の平均は、楽観的思考の強い営業員の方が悲観的思考の強い営業員より12%多く、統計的にも前者の方が高い値を示しました。また、契約高の平均は、楽観的営業員の方が悲観的営業員より17%高く、統計的にも前者の方が高い値を示しました。つまり、契約件数からみても契約高からみても、楽観主義は成績にプラスに働くという結果が得られたことになります。

前向き思考で明日に向かう

ところで、人は楽観主義と悲観主義の両側面を持っており、両者は必ずしも対立するものではないというとらえ方もできます。そこで筆者らは、対象者を「楽観的・悲観的思考の両方が高い」群、「楽観的思考が高い」群、「悲観的思考が高い」群、「楽観的・悲観的思考の両方が低い」群の4つに分けて、それぞれの成績を比較してみました。表はその結果です。悲観的思考高群はほかに比べて新規契約件数が明らかに低く、そして、楽観的思考高群の新規契約高はほかに抜きん出て高いことがわかります。これらから見ると、楽観的思考には成績へのプラス効果が、悲観的思考には成績へのマイナス効果があるといえます。

楽観的・悲観的思考の組み合わせと営業成績の関係

人数 新規契約件数
平均(件)
新規契約高
平均(万円)
楽観的・悲観的思考ともに強い 95 10.33 18,465
楽観的思考が強い 88 10.49 20,271
悲観的思考が強い 93 8.74 16,141
楽観的・悲観的思考ともに弱い 85 10.21 17,467

筆者らはここで紹介した以外にもさまざまな角度から分析を行っていますが、総合的にいえることは、楽観的思考の営業員の方が悲観的思考の営業員よりも成績が良いということです。「また今度もダメかもしれない」と心配するよりも、「今日がダメでも明日があるさ」と前向きに考える方が、結果的に好成績につながるということです。
もちろん、ものごとは常に単純に割り切ることはできません。悲観的に考えて周到に準備するからかえって良い結果を得ることができるという場合もあるでしょう。しかし、人生「明日は今日よりよくなる」と考える方が、希望も湧いて明るい一歩を踏み出すことができると思います。さて、皆さんはどちらのスタイルでしょうか?

(ここで紹介したデータは、松井賚夫 立教大学名誉教授、都築幸恵 成城大学教授、筆者の3名で行った研究に基づくものです。)

※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。

 

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