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専門家コラム:人を活かす心理学

【第15回】あなたの人を見る目は、正しい? ~誰にでもある思い込み・判断のバイアス~

錯覚

近頃はあまり耳にしなくなったようにも思いますが、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」ということわざがあります。怖い、恐ろしいと思うと道端の枯れススキも幽霊に見えてしまうということですが、私たちの心の持ちようが思い違いや見間違いを生んでしまうことの、よい例といえます。
こうした現象は「錯覚」とよばれて古くから心理学の研究対象になっています。例えば目の錯覚については、多くの幾何学的錯視図形が知られています。ちなみに、第二次大戦後まだ日本が貧しかった頃には、紙と定規があれば刺激材料を作成して錯視の研究ができることもあって、日本から多くの優れた研究が生まれたという話を、私がまだ学生だった頃に古い先生方から聞いたことがあります。もちろん、心理学の世界だけでなく芸術の世界でもエッシャーや安野光雅画伯のだまし絵などは、子どもから大人まで楽しめる作品です。

図1.13はアルファベット?数字?

対人認知バイアスの例

こうした錯覚は、私たちが相手を判断する際にも、気がつかないうちにさまざまな思い込みとなって紛れ込んでくることがあります。心理学では対人認知のバイアス、あるいは判断のバイアスとして知られており、人事評価場面にも影響をおよぼすものとして昔から注目されてきました。以下はそうしたバイアスの代表的なものですが、おそらく読者の皆さんも思い当たるものがあると思います。

(1)ハロー効果

日本語では光背効果とか後光効果ともよばれます。阿弥陀如来(あみだにょらい)が背負っている光背は、それがあるとよけい、ありがたく見えるものです。同じように他者判断においても、全体的な判断や目立ちやすい特徴が、細部の判断にも影響をおよぼすことがあります。
例えば好感を持った新人については多少の欠点があっても気にはならず、かえってそれが好ましい特徴のようにも見えることがあります。けれども、どうも好かない、自分と合わないという思いがある場合には、相手の些細な言動や、場合によってはジャケットやネクタイの色まで気に入らなくなることもあります。いわば前者は「惚れた目にはあばたもえくぼ」、後者は「坊主憎けりゃ袈裟(けさ)まで憎い」という感情です。

(2)論理的錯誤

ある特徴を持っていると、それに関連する(と判断者が思っている)ほかの特徴も持っているだろうと判断してしまうことがあります。例えば、「あの人が痩せているのは、いつも細かなことを気にするナーバスな性格だから」という説明が自分の中でできあがると、今度はそれをほかの人への判断にも当てはめます。その結果「痩せている人=神経質な人」というように、本来は関連があるかどうか分からない特徴が一つにまとめられてしまいます。本人の中では論理的につながっているようでも、それはあくまで本人がそう思っているだけで、その論拠は正しいかどうかは分かりません。
これが評価に顔を出すと、ある要因への評価が、本来は関係がないはずなのに評価者の論理では結びついている別の要因の評価にも影響する、といったことも生じてきます。このように「AであればBも」という結びつきを前提とした判断エラーなので、これを包装効果とよぶこともあります。

(3)ステレオタイプ

文化や経験に基づく型にはまった判断傾向です。A型の人はこんなタイプ、B型は…、といった血液型性格(信憑性については第4回をお読みください)もステレオタイプ的な判断の一つといえます。職業や国、人種なども他者判断におけるステレオタイプを生みやすいものです。
こうしたステレオタイプ的な判断は、判断の誤りに気がつけば修正も可能です。しかし、中には気がついていても修正できずに、相手を相変わらず否定的な枠組みの中にはめて判断してしまうものがあります。これが「偏見」です。例えば人種的な偏見を持っている人は、そうした判断が根拠のないもので誤りであると分かっていても、なかなか修正することができません。偏見を取り除くためには、その国に行ってみる、相手とまっさらな気持ちで接してみるといった、実際の行動が大切です。

(4)投影

精神分析の創始者であるS.フロイトが提唱した概念です。例えば、本当は相手のことを嫌っているのに、それを認めたくない自分がいます。そうした場面では自分の本来の感情を無意識のうちに抑圧し、表面上、自分は相手を嫌っていないという気持ちが支配しています。けれども、抑圧した感情はどこかに表れてきます。『自分は相手を嫌っていないけれど、相手が私のことを嫌っている。だからうまくいかないのだ』というように、無意識に抑圧した感情を相手が持っているものとしてとらえてしまうのです。
いわば、相手の心のスクリーンに自分の感情を映し出す(投影する)という、心のメカニズムです。他者とのコミュニケーションの中では、自分を正当化し自己を防衛するために、こうした投影のメカニズムが働くことがあります。

(5)対比効果

先日、海外出張中の乗り継ぎ空港で、ある国のラグビーチームと居合わせました。中に、ほかの選手に混じって、中肉中背というよりも、ややほっそりした小柄に見える選手がいました。その彼が飛行機でたまたま私の隣に座ったのですが、そばで見ると、足や腕は丸太のようで上背もあり、チームメイトの中で見たときとは全く違った圧倒的なパワーを感じました。
このように、誰と比べるか、周囲にどんな人がいるかによって、相手の本来の特性を過大評価したり過小評価したりしてしまう判断傾向が対比効果です。「佐藤君は田中君に比べて押しが足りない」といった評価も、田中君ではなく渡辺君と比較すれば、佐藤君の評価はまた変わってくるかもしれません。仕事の場面などでは、他者と対比するのではなく、本人の過去の仕事ぶりや業績と対比することも、納得性を高めるうえでは有効なやり方です。

バイアスから逃れることはできない

思い込みや判断のバイアスは、本来は判断にかかる時間や情報処理を節約しようとすることから生まれてきたものと考えられます。相手に対する情報が少ないときには、私たちは外見や第一印象を手がかりに性格や特徴を推測しようとします。論理的錯誤やステレオタイプなどはそうした推測判断といえます。
こうした判断には私たちの経験則も含まれているので、必ずしも間違いとはいえない面もあります。しかし、こうに違いないという思い込みが働くと、相手の持っている本来の特性・特徴を見逃してしまうことにもなりかねません。
では、思い込みや判断バイアスを防ぐには、どうすればよいでしょうか。残念ながら完全に防ぐ方法はありません。私たちはさまざまな情報を手がかりに相手を判断しますが、その中には多かれ少なかれ、思い込みや認知バイアスが混入するものです。大切なことは、そうした混入があるということを知っていることです。
例えば錯視は、それが錯覚であることを知っている場合でも、どう見てもそうにしか見えません。しかし、それが錯覚であることを知っている場合と知らない場合とでは、それを見る私たちの心持ちや態度は違ってきます。

図2.ミュラー・リヤー錯視(矢羽根に囲まれた線の長さはどちらも同じ)

対人場面でも同じことがいえます。相手とうまくいかないとき、それはひょっとするとハロー効果が働いているのかもしれません。ステレオタイプで相手を判断しているのかもしれません。さまざまなバイアスが存在することを知っていることで、相手に対する見方や接し方を一歩下がった視点で見直すことができます。そこから相手に対する新たな気づきや対人関係の構築も始まるかもしれません。

  • ※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。
 
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