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専門家コラム:人を活かす心理学

【第7回】ハラスメントを考える~セクハラから職場いじめまで~

ハラスメントとは

セクハラ、パワハラ、アカハラ、最近ではマタハラも深刻な問題になっています。セクハラ(セクシュアル・ハラスメント)以外は和製英語ですが、職場や学校などでこうした行為が蔓(まん)延していることが、マスコミでも大きく取り上げられるようになっています。

ハラスメントという行為は、大きなくくりでいえば「他人から厄介な目に遭わされて困ること」(広辞苑)という迷惑行為あるいは嫌がらせ行為です。ただ、迷惑という語感には、「やっかいだなあ、けど、まあ仕方がないか」というような、しぶしぶ許容する部分も残っているように思えます。例えば、歩きスマホは多くの人にとっては迷惑な行為ですが、他人に直接害をなしているわけではないから別に構わないと考える人もいます。迷惑ということには、良識あるいは常識ということの絡む部分があり、ある人にとっては迷惑でも別の人はそれを迷惑と感じないといった、線引きの難しい面があります。

ただし、セクハラやパワハラ、マタハラなどのハラスメントは、被害者の心身ともに深刻な害がおよぶ危険性をはらむ迷惑行為であり、「まあいいか」といった曖昧な態度で済ますことができない問題です。

セクハラ

2016年3月4日に発表された厚生労働省による職場のハラスメント実態調査(全国6500社で働く25~44歳女性、約1万人からの回答)によれば、28.7%の女性がセクハラ被害経験を持っていました。セクハラ被害の内容としては「容姿や年齢、身体的特徴を話題にされた」が53.9%と最も多く、「不必要に体を触られた」「性的な話や質問をされた」が続いています。「性的関係を求められた、迫られた」も16.8%の回答がありました。加害者の最多は「職場の直接の上司」でした。マタハラ被害も21.4%の女性が経験していました。

職場の女性の容姿や年齢、身体的特徴を話題にすることは、おそらく男性にとってあまり罪悪感はなく、軽いノリで話すことも多いでしょう。これが迷惑行為の難しいところで、加害者側は悪いことをしたという意識が無くとも、対象になった女性にとっては非常に不快な思いをすることになるのです。

セクハラについては、日本では1990年代になってようやく全国的な調査が始まりました。裁判でセクハラの違法性が初めて認定されたのは、女性会社員が上司からのセクハラ被害を訴え勝訴した福岡地裁判決で、これが1992年のことでした。一方米国ではすでに1972年にセクハラの違法性が認定されており、これからすると日本は20年の遅れということになります。

セクハラの認知に関する研究からわかったこと

筆者ら(角山・松井賚夫・都築幸恵 1995、 2003)は、女子大学生や働く女性を対象にセクハラの認知に関する研究を行いました。詳細は省きますが、研究からは以下のようなことが明らかになりました。

まず、励ましや元気づけのつもりでポンと軽く叩くといった行為であっても、触られるということは女性からは不適切な行為とみなされるということです。特に、男女平等的な性役割観を持っている女性の場合には、たとえ軽くであっても体に触られることについては不適切な行為であり、はっきりした対処を求める意識が強いということが明らかになりました。また、セクハラにルーズな組織風土や、男性が多く女性があまり就いたことのない仕事状況下でセクハラが生まれやすいことも明らかになりました。

筆者らの調査で興味深かったのは、セクハラであると感じた女性たちが、では直接に抗議行動や会社に働きかけて対処を求めるといった行動をとるかというと、「我慢する」「無視する」といった行動を選ぶ人たちが圧倒的に多かったことです。実はこれと同じ傾向が、先に紹介した厚生労働省調査でも明らかになっており、セクハラ被害に遭った後の対応は「我慢した、特に何もしなかった」が63.4%と最も多く、「相手に抗議した」は10.2%にとどまっています。米国の研究でも同じ傾向が明らかにされています。

こうした傾向の背景には、被害を訴えても真摯に取り上げられない(『そんなに目くじら立てずに。軽い気持ちだったんだからさ』)、二次被害に遭う(『あなたの方にも隙があったんでしょ』『どんな被害に遭ったのか詳しく説明してよ』)といった、虚しさや無力感があります。セクハラ対応の難しさがこうした点からも見てとれます。

職場いじめ

学校でのいじめも相変わらず大きな問題ですが、おとなの世界に目を転じても、職場いじめは頻繁に起きており、たとえばILO(国際労働機関)の調査でも、職場いじめが世界的に増加傾向にあることが報告されています。国内でも、全国の労働相談所で受ける職場いじめに関する相談は急増傾向にあります。
レイナーとホーエルの2人の研究者は、職場いじめを5つに分類しています。

1 専門的な地位への脅威 意見をけなす、公の場で専門的な面で屈辱を与える、努力不足と非難する、など
2 個人的な立場への脅威 ゴシップを流す、中傷する、侮辱する、からかう、など
3 孤立させる 休暇や訓練の機会を邪魔する、物理的あるいは社会的に孤立させる、情報を与えない、など
4 過重労働 生産への過度の圧力、不可能な締め切り、不必要な中断、など
5 不安定な状態に置く 与えられるべき賞賛を与えない、意味のない仕事、機会の剥奪、決まりなどを都合に合わせて勝手に変更する、過ちをくどくど注意する、失敗するよう仕組む、など

働く人々を対象に筆者が行った調査でも、いくつかのタイプの職場いじめが出てきました。さすがに直接的ないじめ(身体的攻撃)は多くはありませんが、間接的なものとして、仕事の制限(仕事を回さない、干すなど)、無視(会話しない、皆で無視するなど)、情報遮断(情報を回さない、わざと連絡しないなど)、異動(忙しい部署に追いやる、遠隔地に追いやるなど)といったタイプのいじめが見られました。

ホーエルたちは、職場いじめ防止策の基本として、予防、介入、リハビリの3つを提唱しています。わが国では1997年に当時の労働省が発表した指針の中で、「事業主が配慮すべきセクハラ防止項目」に関して

  • セクハラは許さないという方針の明確化と社員啓発
  • 相談・苦情への対応
  • 事後の適切な対応

の3点が挙げられていますが、これらはそれぞれホーエルたちのいじめ防止策に対応するものといえます。予防と介入とリハビリ、この3点を忘れてはならないと思います。

※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。

 

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