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専門家コラム:人を活かす心理学

【第6回】あなたの職場はハイコン?ローコン?

「グローバル」あるいは「グルーバル化」という言葉は、いまや日常の会話の中にも普通に出てくるようになりました。ITは日進月歩どころか秒進分歩(ピコ進ナノ歩?かもしれません)で発展し、地球の裏側であっても情報は瞬時に伝わります。ビジネスから教育、私たちの日常生活の隅々にまで、グローバル化の波は押し寄せています。

もちろん、ひとくちにグローバル化と言っても、そもそもグローバルとはなんなのか、いったい何がグローバル化なのかは、話す人によってさまざまであったり、分かったようで分からなかったり、よく考えるとはっきりしないことも少なくありません。

ただ、ビジネスや人の交流が地球規模で拡大しているのは事実であり、そうした中でいろいろな文化が接触し、考え方の違いや習慣の違いなどが、時に摩擦を生んでいることも事実です。今回は、そうした異文化の出会いが私たちの行動にどのような影響をもたらすかを、心理学や文化人類学の研究を紹介しながら見ていきたいと思います。

「木を見る西洋人 森を見る東洋人」

「木を見る西洋人 森を見る東洋人」(村本由紀子訳 ダイヤモンド社 2004)という本があります。著者は社会心理学の世界では著名なR.E.ニスベットという研究者です。原題は「THE GEOGRAPHY OF THOUGHT ~How Asians and Westerns Think Differently...and Why」で、アジア人と欧米人の思考はどのように違うのか、それはなぜなのかを実証的に探っており、興味深い知見が詰まった大変面白い本です。

ニスベットの研究によれば、欧米人の思考の特徴は、対象を認識するときに、その対象自体がもつ特徴に注目し分析的に理解しようとするところにあります。一方アジア人は、対象を、それが存在する場を含めて全体的(包括的)な関係の中で理解しようとします。これが本書の邦題である「木を見る西洋人」と「森を見る東洋人」ということの意味です。例えば、ニスベットたちは、実験参加者に「パンダ、サル、バナナ」の3つの単語を示して、これらのうちでどの2つがより近いと思うかを尋ねました。すると、アメリカ人参加者は、パンダとサルが近いと答えたのに対して、中国人参加者は、サルとバナナが近いと答えました。つまり、アメリカ人参加者は、カテゴリーの共通性(ここでは「動物」)で分類したのに対し、中国人参加者は意味のある関係性(「サルはバナナを食べる」)に基づく分類を行ったということです。

もちろん、世界規模で人的交流が広がり、文化の出会いや融合の度合いが高まっている今日では、「西洋対東洋」という単純な二分法ですべてを語ることはできません。これは本書でもニスベットが指摘していることです。ただ、そうした文化の融合の中で、互いのものの見方やとらえ方の違いが思わぬ摩擦を生んでしまうことは、日常場面でも、またビジネス場面でも少なからずあります。

ハイ・コンテクスト文化とロー・コンテクスト文化

文化的な違いが他者との相互理解にどのような影響を与えるかを理解する際に役立つ概念として、文化人類学者のE.ホールが提唱した「コンテクスト」があります。コンテクストは、日本語では文脈あるいは背景などの訳があてられますが、生活習慣や文化的背景、経験や価値観などを包摂する背景情報であり、他者とコミュニケーションをとるときの大切な手がかりとなります。ホールによれば、世界の文化はコンテクストへの依存の程度によってハイ・コンテクスト文化とロー・コンテクスト文化に分類されます。

ハイ・コンテクスト文化では、背景となる情報を共有している度合いが高く、いちいち具体的に説明しなくともコミュニケーションが成り立ちます。従って、明確な表現よりも、相手から伝えられるわずかな手がかりによって、相手の意思や意図を読み取ろうとします。取り引き場面での「あうんの呼吸」、会議の席で「目で語」ったり「腹の内を読」んだりなどは、背後に共通の理解があり、コンテクストを共有していなければ成り立ちません。

一方、ロー・コンテクスト文化では、背景情報の共有度が低いため、相手に理解してもらうためには、曖昧さのない具体的な表現や正確な内容が重要になります。従って、コミュニケーションではできるだけ明瞭に伝えることが大切になり、説明のために会話の量も多くなります。

日本などアジアはハイ・コンテクスト文化が多く、アメリカやヨーロッパはロー・コンテクスト文化であるとされます。さらに、国や文化圏の違いだけではなく、組織間あるいは同一組織内においてもコンテクストの違いは存在します。コンテクストの共有度合いが、職場風土や組織文化とよばれるものをかたちづくる面もあり、組織が合併した際や、複数の部門で一つのプロジェクトを構成する際などには、互いが持つコンテクストの違いがコミュニケーションの障害になることもあります。目で語ってあうんの呼吸で腹の内を読んでもらうなどという高尚(?)なやり方は、ロー・コンテクストな文化の中では通用しないということです。

モノクロニック時間とポリクロニック時間

ホールは、時間感覚についても「モノクロニック時間」と「ポリクロニック時間」の2つをあげています。モノクロ時間では、時間は一方向に向かって直線的に体験され、人々は時間の制約を強く受けながら、スケジュールどおり一時に一つのことに集中せねばなりません。いわば時間厳守の世界といえます。これに対してポリクロ時間では、その時その時で多くのことが同時進行的に進む、いわばスケジュールにとらわれない時間感覚です。従って時間厳守はさほど重要なことではなく、予定どおりの進行よりも最終的な結果が重視されます。

モノクロニックとボリクロニック

会議場面を想像してみましょう。モノクロ時間の文化では、会議は時間どおりに始まり時間どおりに終わることが当然の前提となっています。メンバーは開始時間に遅れず集まり、会議は議事に従って整然と進行します。ポリクロ時間の文化ではどんなことが起きるでしょうか。メンバーが開始時間に遅れることは珍しいことではありません。開始時間すらしばしば遅れ、議案どおりに議事が進まないこともしょっちゅう起こります。

従って、それぞれの文化に育った人が同席する会議では、一方が当然と考えていることは他方にとっては当然ではなく、混乱を生むことにもなります。モノクロ時間のメンバーは、予定の時間にメンバーが集まらないことで、すでにイライラし始めています。ようやくメンバーが集まり予定より遅れて会議がスタートしたのに、ポリクロ時間のメンバーたちはすぐに議案から離れて議論を拡散させてしまいます。行ったり来たりの進行で、会議も予定時間を過ぎてようやく終了。モノクロ時間のメンバーにとっては怒り心頭ですが、ポリクロ時間のメンバーにとっては、結論が出たわけだから問題なし。一部のメンバーたちが何を怒っているのかピンときません…。

グローバル化が進む中では、異なる文化的背景に起因するこんなすれ違いや摩擦も多くなります。トラブルを防ぐためにも、互いの文化が持つ異同を理解し、異なるものを排除するのではなく、互いを認め歩み寄る意識がますます重要になってくるでしょう。

※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。

 

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