私には、とても親切で面倒見の良い友人がいます。その友人と、喫茶店でコーヒーを飲んでいたときの話です。
友人:「俺の家の近所に、古い和菓子屋さんがあってね、こないだ、仕事の帰りにそのお店に寄ったら、80歳前後の足の不自由なおばあさんが、重たい荷物を持って四苦八苦しながら、お団子を買おうとしていたんだ。自分の母親のことを思い出して気の毒になって声をかけたら、家が近所だったので荷物を持って家まで送ってあげたんだ」
私 :「ふーん、そうなんだ…」
友人:「うん?なんか、いけなかったかな?」
私 :「いや、なんでもない。そのおばあさんにとって、家まで送ってくれたのが親切なお前でラッキーだったなと、思っただけだよ」
友人:「お前、海外で仕事して帰ってきてから、疑い深くなっちまったな。困った人がいたら、助けてあげるのが人として自然なことじゃないのか?」
日本は昔に比べて世知辛くなったと言われていますが、外国と比べると、「親切心」を持った人が多く住んでいる国です。
海外は、その「親切心」を利用する犯罪手口によって、多くの日本人が被害に遭っている現実があります。
プロの犯罪者の心理は、恐らく世界共通だと思いますが、犯罪行為のターゲットに対して人間らしい共感や同情などの感情を持つことは無く、極めて自己中心的です。特に生活環境の厳しい途上国では、その傾向が強いと思われます。
悲しい現実ですが、私たち「お伽の国の住人」は、海外には未だに酷い貧困や、腐敗・差別が横行する国々が存在していて、縁もゆかりも無い外国人がどこでどうなろうと、まったく意に介さない非情なプロの犯罪者が少なからず活動していることを知っておくべきです。
経験豊かなプロの窃盗犯や詐欺師は、ターゲットの思考を停止させるために心理的な混乱を引き起こす状況を意図的に創り出したり、善人であるかのごとく振る舞って「偽りの安心感」を抱かせたりして、犯行と逃亡を容易にするよう画策するのです。
海外のプロの犯罪者が仕掛ける罠には、日本人が引っかかりやすい、さまざまな手口があります。
このように、ターゲットに警戒を解かせる罠は実にバラエティーに富んでいて、巧妙です。無防備で、親切で、日常生活で犯罪被害に遭った経験の少ない日本人は、プロの犯罪者にとって成功率の高い「ネギを背負ったカモ」にしか見えていないことを知っておかなければなりません。
人気の無い道路上に人が倒れている、店舗でも無いのに小銭を派手に落としてばら撒くなど、日常生活で経験することは殆どありません。そういう「はっとするようなこと」や「いつもと違う現象」に遭遇したら、犯罪のターゲットになっている予兆だと考えるべきです。そのため、しばらく様子を観察し、「自分自身の安全を確認」しながら行動する用心深さが必要です。
また、初対面なのに「不自然に人懐こく、必要以上に親切」な人は、日本に暮らしていても、めったにお目にかかることがありません。そのような不自然な見知らぬ人が現れたら、犯罪被害の予兆と捉えることが重要です。
海外の犯罪発生率が高い地域に行った際には、「親切な日本人」でいるよりも「警戒心の強い日本人」でいた方が、心理的防衛線を張ることになり、より安全だと言えるでしょう。
[山本 優 記]
※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。
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